川崎市の保育園にある小さな森のような園庭遊具
Overview
樹皮を残したままの細く曲がった木を活用
2021年4月、神奈川県川崎市のとある保育園に増築された園庭。そこには、広葉樹の原木を柱にした遊具によじ登る園児たちの姿がありました。彼らの目線になって遊具を見ると、樹皮をそのまま残したいくつもの原木の柱が、まるで森の木々のようです。
遊具を含め園庭を設計したのは東京と秋田に拠点を置く工藤浩平建築設計事務所。原木は同事務所が独自に飛騨で調達したものです。ヒダクマは、その調達をサポートしました。
“遊具は、建築よりは小さくて家具よりも大きい。その間をヒダクマと考えてみたいということで、飛騨の広葉樹の原木を使った、小さな森のような遊具を設計しました”(工藤浩平氏)
調達した原木は、本来はキノコの菌床やパルプの原料向けにチップとして加工される小径木。直線的な図面には落とし込めない凹凸や湾曲を持った原木は、施工者との事前のコミュニケーションや、現場での細かな調整により床材と接合し、遊具を構築しました。
Project まちなかにある森の風景
What we did | 木材調達 |
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Credits | クライアント:工藤浩平建築設計事務所 設計:工藤 浩平、川上 華恵(工藤浩平建築設計事務所) 構造監修:円酒構造設計 施工:住建トレーディング東京支店 木材調達:飛騨の森でクマは踊る(広葉樹)、シェルター(針葉樹) 協力:柳木材、奥飛騨開発 竣工写真:楠瀬 友将 写真提供:工藤浩平建築設計事務所 |
Period | 2020年10月〜2021年4月 |
Viewpoint 工藤 浩平さんの視点
都市の中に、子供のための居場所をつくるという楽しさと難しさを学んだ。実際に街にある公園で何気なくある遊具にも、ワクワクと一緒にハラハラする危険は潜んでいることに気づかされた。守る側の視点はもちろん大事であるけれど、子供たちが本来持っている想像力や運動能力の成長を止める遊具にはしたくない。そのとき、そのままの原木を使い、五感を使って遊具に触れる体験を考えた。そして、原木である自然のもつ不自由さを乗り越えるために、ガイドブックを作成し、オペレーションで補うことにした。保育士側の視点、保護者側の視点、子供からの視点、街からの視点、どの視点にもピントをあてても、子供のための居場所を完璧にすることは難しい。ただ、自然そのものを扱ったこの遊具は、安全に遊ぶために用意された一義的で人工的な遊具にはない豊かさを持っている。この遊具を使いながら、森を育てるように、みんなで育てていけるようなおおらかさをもった園庭であってくれたらと思っている。