産業から溢れる素材を使った空間でサステナビリティを問う「ちきゅうのみちくさ展」
Overview
森の潜在価値を掘り起こした素材で、森を再現する
三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が運営する、環境・社会課題解決をテーマに活動するコミュニティ「GREEN×GLOBE Partners」。その3周年を記念したイベントとして7月に開催された「ちきゅうのみちくさ展」では、サステナビリティについて考えさせてくれる作品や事例が展示されました。
独自の視点を投げかける作品のための展示空間・什器を設計したのは、tamari architectsの寺田英史さん。ヒダクマは製作を担当しました。サステナビリティを問う展覧会什器を計画するため、プロジェクトメンバーは飛騨の森や素材生産の現場を巡るインスピレーションツアーを通じて森林・木材産業をリサーチ。ものづくり産業のサプライチェーンから溢れ、通常は燃料などとして利用される耳材や、そもそもものづくりには活用されない小径木を素材として採用しました。森を起点とした流通、その流路を調整し、林内の木漏れ日、草むらや生き物の気配といった森の風景を再現した空間。展覧会では、森に多様な生き物が息づくように、個性豊かな作品が互いを引き立てあっていました。
Project 未利用材を使ったみちくさの設計
What we did | 製作ディレクション 広葉樹コーディネーション 森の循環ツアー |
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Credits | クライアント:三井住友フィナンシャルグループ、ロフトワーク 設計:寺田英史(tamari architects) 製作ディレクション:門井慈子、藤澤祐里佳、岩岡孝太郎(ヒダクマ) 広葉樹コーディネーション:門井慈子、黒田晃佑(ヒダクマ) 森の循環ツアー:松山由樹、門井慈子、江上史都(ヒダクマ) 製作:ひだザイの加工所、門井慈子、黒田晃佑、岩岡孝太郎(ヒダクマ) 協力:神岡林業協同組合、飛騨市森林組合、白鳥林工協業組合、片桐酩木 竣工写真: 大竹央祐 |
Period | 2023年4月~7月 |
Viewpoint tamari architects 寺田さんの視点
展覧会では循環型社会に対して数値では測れない、モノの見方を変えるような作品を対象にしていました。
ヒダクマとのリサーチを経て最初に手にとったものは、製材時にこぼれる20mm角程度のミミと呼ばれる端材。このミミを並べた柵を自立するように円弧状にし、みちくさできる構成としました。
このマテリアルには工業的な柵とは違う変数がたくさん詰まっています。ミミの表は樹皮がつき未処理、ロウな素材として見えます。裏は製材の原理からまっすぐ切り落とされ、広葉樹の色鮮やかな木肌が見えます。こうした自然や社会の両面性のある資材から、展覧会の場をつくっています。
この柵が作品を飾る壁でもあり、人の動きをうながすような道でもあり、草むらの隙間から見える原体験のような、楽しい構成をヒダクマと目指しました。