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曲がり木、薪用材、小径木の個性をそのままに。船場がデザイン監修した交流型学生レジデンス1F共用部プロジェクト
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住宅事業ユニット 関西住宅事業本部 開発部 賃貸事業企画グループ
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執行役員 エシカルデザイン本部長 兼 ゼロウェイスト推進室長
一級建築士
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Introduction
はじめに
ヒダクマは、3月1日に開業した交流型学生レジデンス「キャンパスヴィレッジ大阪近大前」の1F共用部向けに家具を製作しました。同物件は東急不動産株式会社が開発したもので、1F共用部のデザイン監修は株式会社船場が担当。持続可能な循環の仕組みで、様々な社会課題の解決を目指すデザイン「エシカルデザイン」が共用部に実装されています。
このプロジェクトでヒダクマは、大きくふたつのテーマを持っていました。ひとつは、プロジェクト関係者が一体となり、森からものづくりをはじめること。ユニークな家具に使った材料は、東急不動産、船場、ヒダクマの3社が、飛騨の森や丸太が集まる土場(どば)を訪れながら選んだものです。各訪問地では、木と対話を重ねながらデザインや設計を再検討。プロジェクト関係者と森や地域との関わり合いの中で、ものづくりが進んでいきました。
もうひとつのテーマは、テクノロジーを駆使し、木の多様な魅力を引き出すこと。家具の中でも一際目を引くのは、トチの三又部分を脚として使用したビッグテーブルです。スキャン技術や3Dデータを使った設計手法により、木が持つ固有形状をそのまま家具に反映させました。そのほか、パラメトリック・デザイン・ツールを使ったアートウォールには、各樹種が持つ木目や色味の違いが現れています。
このプロジェクトでヒダクマは、大きくふたつのテーマを持っていました。ひとつは、プロジェクト関係者が一体となり、森からものづくりをはじめること。ユニークな家具に使った材料は、東急不動産、船場、ヒダクマの3社が、飛騨の森や丸太が集まる土場(どば)を訪れながら選んだものです。各訪問地では、木と対話を重ねながらデザインや設計を再検討。プロジェクト関係者と森や地域との関わり合いの中で、ものづくりが進んでいきました。
もうひとつのテーマは、テクノロジーを駆使し、木の多様な魅力を引き出すこと。家具の中でも一際目を引くのは、トチの三又部分を脚として使用したビッグテーブルです。スキャン技術や3Dデータを使った設計手法により、木が持つ固有形状をそのまま家具に反映させました。そのほか、パラメトリック・デザイン・ツールを使ったアートウォールには、各樹種が持つ木目や色味の違いが現れています。
【プロジェクト概要】
- 支援内容:
- 製作・製作ディレクション・木材コーディネーション・木材調達
- 期間:2021年10月〜2022年2月
- 体制:
- クライアント:株式会社船場、東急不動産株式会社
- 製作ディレクション、木材コーディネーション、家具ディテール設計:岩岡 孝太郎、浅岡 秀亮(ヒダクマ)
- 製作:木と暮らしの制作所、飛騨職人生活、野中木工所、柳木材、片桐銘木工業、セイアローズ、浅岡 秀亮(ヒダクマ)
- 木材調達:松本 剛、志田 岳弥(ヒダクマ)
- 協力:飛騨市森林組合、柳木材、西野製材所
Outputs
生き生きした素材や情景をそのままに
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共木(ともぎ)のビッグテーブル
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同じ原木(丸太)から製材した板同士を共木(ともぎ)と呼びます。エントランスのビッグテーブルは、オニグルミの共木を真鍮で継いだもの。製作を担当した「木と暮らしの制作所」のオリジナルデザインのテーブル「GAIA STYLE」とヒダクマがコラボレーションしたテーブルです。板の接線には、木本来の外縁が持つ湾曲がそのまま現れます。
<仕様>
材料:オニグルミ
仕上げ:浸透性ウレタン塗装仕上げ
トチの三又円形テーブル
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テーブル天板には強化ガラスを使用。樹皮が剥かれ露わになった白い肌やシワ、みっつの小口に刻まれた年輪、三又のトチが持つ存在感を最大限に引き立てるデザインです。とりわけ三又の中心部付近には、人間の可動部のシワにも似た繊維の波が現れています。
<仕様>
材料:トチ
仕上げ:割れ防⽌材+防カビ塗装仕上げ
製材所の桟積みローテーブル
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製材された原木は、各段に桟木(さんぎ)と呼ばれる木を据えて、風通しを確保して乾燥させます。桟積み(さんづみ)とは、そうして板材を積み上げること。その様子を再現したのが、製材所の桟積みローテーブルです。
<仕様>
材料:ブナ、クリ、カバ、ホオノキ、カツラ、針葉樹無垢材(脚)
仕上げ:浸透性ウレタン塗装仕上げ
サクラの丸太ローテーブル
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柳木材の土場で発見した、薪用として流通するはずだったシュリザクラの大きな塊。それをそのまま使用したローテーブルには、いくつもの芯が合わさった年輪や、その過程で木部の内側に巻き込まれた樹皮など、一般的な家具用材には決して見られない木の歴史が刻まれています。
<仕様>
材料:広葉樹曲がり⽊(シュリザクラ)
仕上げ:割れ防⽌材+防カビ塗装仕上げ
ボロノイパターンのアートウォール
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平面上に配置した点を起点に一定のルールで引かれた線が、独特な多角形の集合を作り出すボロノイ図。パラメトリック・デザイン・ツール「Grasshopper(グラスホッパー)」で生成した同じ形がふたつとない400ピース以上の多角形を、ホオノキやカバ、クリといった7種の広葉樹の突板で製作し、森の多彩さを表現しました。
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<仕様>
材料:広葉樹突板(ホオノキ、シュリザクラ、カバ、クリ、ケヤキ、セン)、クリ無垢材(両サイド⼩⼝)、ランバーコア(下地)
仕上げ:天然オイル
曲がり木の輪切りディスプレイ
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曲がり木を輪切りにし、壁面ディスプレイに。小口にはチェーンソーのカット痕をそのまま残し、生の素材感を強調。ここにも、樹種で異なる小口の表情が現れています。
<仕様>
素材:広葉樹曲がり⽊(ホオノキ、ミズメ、ヤマザクラ、トチ、リョウブ)
仕上げ:割れ防⽌材
Process
森合わせのプロジェクトの始まり
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「合自然性の原則」という林業用語があります。木材生産では森林という生物社会の理(ことわり)を尊重しなければならない、とする原則です。家具製作に際し、プロジェクト関係者が飛騨の森、製材所や土場を実際に訪れて材料を選んだことは、この原則が林業という産業を超えて共有され、自然環境に無理強いしないものづくりが始まったということを意味していました。
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「あの三又、そのまま使えそうですね」
もともと木が枝分かれしたY字の二又部分を脚にしたデザインは、森で三又デザインに発展。二次元的な板材からは想像できないほど、すべてが三次元で揺れ動く森ではそんなアイデアがいたるところで生まれました。
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丸太のローテーブルに使用したシュリザクラは、一枚板を製材するために長さを調節した際に切り落とした部分でした。薪として流通するはずだった材です。長い年月をかけて成長した木が、長く使われる家具になる。時間的・経済的により価値が見出されたシュリザクラの丸太ローテーブルも、素材生産の現場でしか起こり得ない偶然の出会いから生まれました。
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木に寄り添う、やさしいテクノロジー
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飛騨市森林組合によって、無事に森から伐り出された三又のトチ。替えの効かない、このユニークな形状の材料を家具にするために、ヒダクマ浅岡はまず木を3Dスキャン。そのデータを元に、設計や強度の検証を重ねました。
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ひっくり返すにも一苦労で、一度カットしたら元に戻せない実物も、3Dデータであれば動かすことも加工することも自由自在。家具製作には用いられることがなかった曲がり木や枝別れした木に、テクノロジーが寄り添うことで、今までにない価値が生まれます。
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ボロノイパターンのアートウォールは、パラメトリック・デザイン・ツール「グラスホッパー」でデザイン。グラスホッパーはモデリングソフト「Rhinoceros(ライノセラス)」のプラグインで、膨大な量のシミュレーションができるため、人では思いも付かないようなアイデアを形にしたり、拡大させることができます。
今回グラスホッパーでは、ランダムな多角形を自動生成して幾何学なパターンをつくるプログラムをつくり、そのデータを元にレーザーカッターを活用しながら各ピースを製作。ある程度ピースを連結させ、現場でアートウォールが完成しました。
「キャンパスヴィレッジ大阪近大前」は、様々な学生が生活し、交流する場所です。飛騨の森から生まれた個性豊かな家具が、入居者それぞれの形で親しまれ、人と森との関係が育まれていくことを願っています。
Menber's Voice
5年間、マンション開発という一種のものづくりに携わってきましたが、今回のプロジェクトほど温かな人の想いが込められた「ストーリーのあるものづくり」を経験したのは初めてでした。飛騨の森について学ぶところから家具作りが始まり、森に関わる人の想いに触れたり、これだ!と思う木との偶然の出会いがあったり等・・このプロジェクト、このメンバーだからこそ実現できた唯一無二の取組みであったと思います。「ストーリーのあるものづくりをしたい!」という私の想いも叶えられたプロジェクトとなりました。
これらの家具がユーザーのもとへと渡り、家具に込められた想いも共に、後世へ引き継がれてゆくことを願っています。
松本 祐季|Yuki Matsumoto
森は、「木材」ではない。
はじめてヒダクマさんのHPを見た時、この言葉に大きな衝撃を受けたことを覚えています。松本さんとヒダクマさんを訪れ、森が抱える問題、林業の活性化が森を守ることに繋がること、そして広葉樹の持つ魅力など、たくさんのことを教えてもらいました。このプロジェクトを通じて皆でひとつの価値観を共有し、新しいモノづくりの在り方を模索できたことが何より楽しかったです。およばずながら、私自身も社会の課題に向き合えるデザイナーでありたいと思います。
神戸 暁|Akira Kanbe
森は創造の原点。森に入って、木や野草、生き物の痕跡などを感じつつ、植物が出した酸素で深呼吸をする。すると今まで悩んでいたことがどうでもよくなり、さらにどんどん新しいアイデアが湧いてくる。困ったときは森にいけば万事解決だ。
浅岡 秀亮|Hideaki Asaoka