都市に響く木の音色。広葉樹でつくる「鏡開き」
Overview
めでたい時をつくるための広葉樹
祝い事の際に振舞われる樽酒の蓋を、「よいしょ、よいしょ、よいしょー!」の掛け声とともに叩く「鏡開き」。その祝いの儀式を広葉樹の特徴を生かしてリデザインしました。ツバメアーキテクツとヒダクマで手掛けたこの鏡開きは、多様な樹種でつくられた様々なサイズの蓋を、木槌を使って開くというもの。樹種ごとの音色が響き、中はお酒ではなく、集まる人びとの手に渡り縁を繋ぐ契りで満ちています。
蓋の樹種はその木固有の「木ことば」でセレクト。カエデ、大切な思い出。ブナ、繁栄。カバ、誕生。サクラ、真実の愛。老若男女に親しんでもらえるよう様々なサイズを製作しました。木槌には枝が持つ曲がりやコブ、樹皮の柔らかさが握り心地として活きるようなものを選定。大小3種類を製作しました。
3月21日に開催された「Parkになろう −結婚式は未来の新しいパブリックに−」展では、国内外の様々な来訪者が思い思いに木槌を振り下ろし、「パカンッ」と歯切れの良い木の音とともに歓声が上がりました。ヒダクマ社内が「ブナ、ブナ、ブナズッキュン!」の掛け声で盛り上がっていたのはここだけの話。
Project 木に触れ、祝いのひとときをつくる
What we did | 設計・製作ディレクション 広葉樹コーディネーション |
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Credits | クライアント:ツバメアーキテクツ 設計・製作ディレクション:岩岡孝太郎、門井慈子(ヒダクマ) 広葉樹コーディネーション:門井慈子(ヒダクマ) 製作:飛騨職人生活、門井慈子・今井瑞紀(ヒダクマ) 協力:柳木材 |
Period | 2023年1月~3月 |
Viewpoint ツバメアーキテクツ 山道拓人さんの視点
ツバメアーキテクツ
儀式によって瞬間的に立ち上がる場がある。地鎮祭、結婚式のケーキ入刀、などは宗教を超えて、比較的カジュアルに行われるもので、一度は目の当たりにした経験があるのではないだろうか。
これがあることによって、多忙を極める関係者同士が、どうにかタイミングを合わせて集まろうとする効力を確かにもつ。我々は「鏡開き」の持つ、少々大袈裟で滑稽な振る舞いや、音の響きに着目して、都市に居場所を立ち上げる方法として、リデザインすることを考えた。
樹種によって異なる音を都市に響かせ、開会式や結婚式に使ってもいいし、遊具のようなものとして位置付けてもいい。中身はお酒ではなく、ノベルティをイメージし、広葉樹で契り(継ぎ手)を作ったりもしている。
今回は、プロトタイプ的に作ったが、叩き割る人や、それを眺める人が、自然に歓声をあげ、人が人を呼ぶ様を見ているともう少し実験を続けてみようと考えている。