都市の記憶と自然が融合したFabCafe Osakaの空間

Overview
森の多様性、曖昧性を内包した、感性や情緒に響く場
FabCafe Osakaが2025年04月29日、大阪の天満・南森町エリアにグランドオープンしました。FabCafeとしては世界13拠点目、国内では6拠点目です。ヒダクマは、この空間において象徴的なセンターテーブルと、ベンチの製作ディレクションを担当。空間デザインを手がけた井上真彦氏(Marginalio Inc.)と、ロフトワークのプロデューサー小島和人(ハモ)氏、クリエイティブディレクター太田佳孝氏をはじめとするFabCafe Osaka準備室のメンバーとともに、FabCafe Osakaが志向する「L’Informe(アンフォルム)」の思想(=形に縛られない美しさの探求)を体現する空間づくりに取り組みました。
元は自動車整備工場だった空間の真ん中に残っていた深さ1.8mの作業ピット。この穴を活かし、センターテーブルはデザインされました。井上さんが描いたイメージに合わせてヒダクマが神岡林業と笠原木材で調達・選定した、高さ3mの細くて曲がりのある多様な樹種の枝は全て3Dスキャンをしてデジタルデータ化、大きな天板を支えるための最適な向きと角度を構造計算しています。天板の樹種には、水都大阪にちなんで水面のきらめきのような木目を持つ、カエデやミズメを採用。この難しい製作には、現代の飛騨の匠・田中建築が関わり、飛騨の工房で1分の1の作業ピットの模型を製作し、ジョイントの加工や仮組みを行った後、現場での施工も飛騨から駆けつけ担当しました。
ベンチの木は井上さんが飛騨に赴き選定したもの。原木の木肌や、製材工程で生まれるノコ目をあえて残すなど、自然の造形を活かしたデザインが特徴です。製作した什器からは、上流から下流までの各地点で見られる木のテクスチャの違いや変化を見ることができます。
これからFabCafe Osakaで育まれていく、固定化されず変化を続けるアンフォルムなコミュニティに相応しい空間が誕生しました。
Project 都市にインストールされた森のエッセンス
What we did | インプットツアー企画・運営 木材コーディネーション(センターテーブル、ベンチ) 製作ディレクション(センターテーブル、ベンチ) |
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Credits | クライアント:FabCafe Osaka プロデュース:小島 和人(FabCafe Osaka/Loftwork Inc.) プロジェクトマネジメント:太田 佳孝(Loftwork Inc.) 設計:井上 真彦(Marginalio Inc.) 製作ディレクション(センターテーブル・ベンチ):岩岡 孝太郎・門井 慈子・今井 瑞紀・黒田 晃佑・江上史都(ヒダクマ) 構造アドバイス(センターテーブル・ベンチ):円酒構造設計 製作(センターテーブル・ベンチ):田中建築 木材提供(センターテーブル・ベンチ):神岡林業、笠原木材、カネモク 金物制作:内藤工業、CHROMES 竣工写真:大竹 央祐 |
Period | 2024年10月-2025年04月 |
Viewpoint Marginalio Inc.井上さんの視点

飛騨の森を歩き、ヒダクマの方々とFabCafe Osakaのコンセプト「L’Informe(アンフォルム)」について議論したことが、アイディアの発端になりました。広葉樹林は、光の求め方や成長速度の異なった多様な樹種の集まりであり、それぞれが複雑に関係しながら共存していると聞き、その動的な状態に惹かれました。また、伐採の際には作業の都合で成長途中の細い木も一緒に切らざるを得ないという話も印象的でした。そうした背景から、多種の小径木が支える大テーブルというアイディアが生まれています。これからも、素材としての木だけでなく、森が内包する曖昧さを空間として活かすあり方を考えていきたいと思います。