細さ・曲がり・割れをユニークポイントに変換。溶けた石鹸のような美しいRで極上の触り心地を生んだ「CIC Tokyo」の有機的なオフィスのためのオリジナルテーブル
Overview
個人と個人が偶発的に出会うセレンディピティ
新時代の働き方の進化が期待される空間
アメリカを拠点に世界8箇所にイノベーションセンターを展開する「CIC」(ケンブリッジ・イノベーション・センター)のアジア初の拠点として、「CIC Tokyo」が昨年秋に東京・虎ノ門ヒルズ内にオープンしました。国籍やジェンダーのギャップを超えたイノベーターやスタートアップが集まる、オフィスかつイノベーションハブとして機能する場所です。細胞のような個室が連結するユニークな内装設計をCICと共同で手がけたのは建築家・小堀哲夫さん。従来のオフィスのように格子グリッドで均一的に分割するのではなく、大さも形もさまざまな163の個室から成る、ひとつの街のような空間をデザインしました。
本プロジェクトでヒダクマは、それぞれ異なる多角形状の部屋に合わせた3つのテーブルをデザイン・製作しました。CICが求めたのは、ユニークで美しいデザインでありながら機能性の高いテーブル。製作期間中はコロナ禍の真っ只中でもあり、海外にいるクライアントと直接図面やモックアップを用いての確認作業ができませんでしたが、ヒダクマは3Dデータを駆使し、双方でデザインを共有しながら、このプロジェクトを統括しました。
テレワークが推奨され、フィジカルに人々が集うオフィス空間の役割が改めて見直されているウィズコロナ時代。そんな今だからこそ、個人と個人が偶発的に出会うセレンディピティ、そして新時代の働き方の進化が期待される空間にフィットしたプロダクトです。
Project ヒダクマのノウハウを生かして考案されたテーブルデザイン
What we did | 家具設計製作 家具製作ディレクション 木材コーディネーション |
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Credits | クライアント:CIC Tokyo 建築監修・内装設計:CIC、小堀哲夫建築設計事務所 木材コーディネーション・家具設計・製作・家具製作ディレクション:浅岡 秀亮(ヒダクマ) 製作 : 株式会社木と暮らしの制作所、有限会社EC.kits |
Period | 2019年8月〜2020年9月 |
Viewpoint 木と暮らしの制作所 阿部 貢三さんの視点
浅岡さんとの打ち合わせで一番印象に残っているのはテーブル面の形状『石鹸R』。18年の木工経験の中でもこれは初めてでした。「触れる部分が痛くならないRを表現するとこうなった」、テーブル全体の形状もモニターから全員の顔が見えるようにデザイン設計されています。GAIA STYEを元に設計をされたテーブルなど、内容を聞いたあとワクワクしたのを覚えてます。それと同時に木と暮らしの制作所として持っている個々の能力や経験も含め全てを出し切れば良いなと思いました。
普段から国産広葉樹材を使用している事もあり、意識したことは『設計をされたデザイン、寸法の中でどれだけ木を魅せれるか』。
木取りでは一枚一枚の表情、木目の流れや反り、割れの位置、それらをまず把握しました。たぶん眺めてる時間の方が長かったですね。その後の加工は社員みんなで手分けをして進めたのですが『その木の良さを最大限に引き出すこと』そこは共有していたと思います。
真鍮脚は企画デザインの松原の担当で「板の動き、設置場所の状況に対応するには、それを真鍮でどう加工するのか」それら踏まえて設計をしてくれました。
仕上がった天板を見て『意味のあるデザイン』に『木の魅力』を詰め込めた手応えと、きっと使用してくれる人たちの感性にも触れることのできるテーブルたちになったんじゃないかと思います。