飛騨の森とヤマダヤのこれから。アパレルブランド「Aga」「Vin」の什器製作
Overview
ふたつのデザイン・アプローチで森を受け止める
アパレルの企画から販売までを手掛けるヤマダヤは、創業130年を超える老舗企業です。飛騨市神岡町にあるという同社の社有林活用について相談を受けたのは、2023年に開催された飛騨市広葉樹まちづくりツアーでのことでした。社のサステナビリティ推進を担う未来創造室が進めるプロジェクトのひとつである社有林の活用。その第一歩としてアパレルブランド「Aga」そして「Vin」の什器製作が始まりました。
森から木を伐り出し、ものづくりに活かすには、林業と連携した入念な計画が不可欠です。そのため、まずは同じく飛騨市産広葉樹を使うことで、将来の社有林活用の手段や目的を限定せず、より持続可能で広がりのある取り組みにしようと考えました。什器のデザインを手掛けたのは、これまでも森の生かし方を一緒に考え実践してきた古市淑乃建築設計事務所の古市淑乃さんです。
ヒダクマと古市さんは、それぞれのコンセプトを持ったふたつのブランドに対し、素材も製作アプローチも異なる什器をデザイン・提案。「Aga」の什器は、デザイン・製作過程でAR技術を活用しながらも、その最終仕上げは素材そのものの形を生かしたライブ感のある手仕事によるものです。「Vin」の什器では、将来の社有林活用という取り組みが持つ時間軸の長さや、森の木々そのものの不均一性を考慮して、広葉樹を広く受け止められる素材「ランダムストランドボード」を特注。服飾の什器に求められる滑らかさや店舗什器としてのメンテナンス性にも配慮したデザインとなっています。
産業の垣根を越えた取り組みは、どのように自然と人とのサステナブルな関係をつくっていくのか。この2つの什器製作から、その未来が少しずつ具体化してきました。
Project その森らしさでブランドを象徴する
What we did | 木材コーディネーション 製作ディレクション |
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Credits | クライアント:株式会社ヤマダヤ デザイン:古市淑乃建築設計事務所 製作ディレクション:今井瑞紀、江上史都(ヒダクマ) 製作:田中建築、ノナカ木工所 協力:エスウッド(ランダムストランドボード製作) |
Period | 2023年10月〜2024年3月 |
Viewpoint 株式会社ヤマダヤ 上西勇毅さんの視点
実際に飛騨を訪問して素材の魅力を知り、企画を進める中でプロダクトの背景としての魅力も体感する事が出来ました。環境、地域とのつながり、当社のブランドと様々な角度からのアプローチが組みこまれたデザインは、ショップの演出という面でも新しい表情を作ることが出来たと考えています。その為、今回の取り組みは規模は小さくとも当社が取り組むSDGsプロジェクトにとって大切な一歩になりました。今回当社が体感し、発信できた価値は一部に過ぎませんが今後も少しずつでも取り組みを続けていく事で社会的な課題を多く抱えるアパレル産業の未来を紡いでいきたいと思います。