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アーティストの感性で地域資源の潜在的な力を引き出す。hotel around TAKAYAMAのアートプロジェクト
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Outline

旅人と地域を紡ぐホテルのアート作品

旅の楽しみのひとつとして、その土地固有の自然や食、伝統文化を体験することが挙げられます。今年7月に開業した「hotel around TAKAYAMA」(岐阜県高山市)は、飛騨高山地域の人、文化を旅人へ繋ぎ、オリジナルな現地体験を提供する回遊拠点型ホテルです。このホテル内のラウンジに飾る、地域の魅力を感じられるアートを制作したいという相談を受けたヒダクマ。アーティストエージェンシーのTokyoDexとコラボレーションし、飛騨の広葉樹を使ったアート作品を、地元の職人たちの協力を得て制作しました。
本プロジェクトにおいて、ヒダクマは素材提供や制作をバックアップをするだけでなく、アーティストを飛騨へ招いての「飛騨camp」を実施し、森林環境に対して取り組むべき課題を共有するプロセスを大事にしました。森へ入り、町を歩き、そして職人たちとのコミュニケーションからインスピレーションを蓄えたアーティストたちは、飛騨の町並み、循環する自然、そしてこの地に集う人々への想いをそれぞれの作品へ投影していきます。
アーティストたちのユニークな視点を通じて、飛騨の地域資源の魅力が改めて引き出されたプロジェクトとなりました。個性あふれる作品が完成するまでの、和気あいあいとしたプロセスの模様もどうぞお楽しみください。

このプロジェクトのアウトプットやプロセスは、Yoshi Travel Filmsによる「hotel around TAKAYAMA」のプロモーション映像にも収められています。ぜひご覧ください。

【プロジェクト概要】

  • 支援内容:アート作品制作
  • 期間:2021年5月〜6月
  • 体制:
    クライアント : 株式会社グリーンズ
    アートワーク製作ディレクション:黒田 晃佑・志田 岳弥(ヒダクマ)
    「飛騨camp」プログラム設計・運営:松本・井上・志田 岳弥(ヒダクマ)
    アート・ディレクション:TokyoDex
    アートワーク:柏原 晋平、Mariya Suzuki、simo
    映像製作:Yoshi Travel Films
    制作協力(順不同):藤井家具製作所、飛騨職人生活
    材料提供(順不同):田中清雄(田中建築)、渡辺覚(ワタナベ建築)、片桐銘木工業株式会社

*上記のほか、ヒダクマ/FabCafe Hidaは、hotel around TAKAYAMAの一部の家具・サイン等の製作支援を行いました。

Outputs

アーティストと木との対話。森での感覚をアートに昇華する

個性的なアーティストたちが、ヒダクマのサポートにより制作した作品をご紹介します。

「桜花流景板図」柏原 晋平

木の経年による滲みや色合いと水墨画の技術が混ざり合い生み出された表現。一枚板の中心にある年輪をホテル、周囲に散る桜を旅人たち、既にある滲みは町やここに住む人として表しました。遠くから見ても素材の力強さ、絵の迫力が伝わる作品です。

<仕様>
素材:ケヤキに風雨自然の滲みと水墨、絵の具で彩色
サイズ:W2,500mm×H1,000mm

<作家コメント>
そこに在るままの自然のカタチ(滲みや造形)と、人が自然と対話し織り成すカタチ(切り出し、描く)という「自然と人の関わり」をメインコンセプトに制作。「ひた向きに飛騨の森と関わる人々の意志や心」を「静かに美しく咲く山桜」のモチーフ・テーマに見立て、さまざまな旅人が行き交うaround(周囲の景色、巡る景色)を繋ぐピースとして、この作品に想いを込めています。

「飛騨の木と」Mariya Suzuki

鉋(カンナ)屑や、古材・端材等を再利用した作品。町並みなどを描いた繊細で情緒のあるドローイングと、小さな木の欠片への愛を感じられる独特のオブジェクトが群として壁面を明るくしています。

<仕様>
素材:鉋屑、木片、古材に、ペン、色鉛筆で彩色
サイズ:W7,700mm×H2,400mm

<作家コメント>
誰かの意図した形を切り抜いたあとに残される「余りもの」たち。それらは意図とは対照的であるがゆえに、それぞれがユニークでクセがあります。目的のある人にとっては邪魔になりえるその個性は、実はとても魅力的で力強く、私たちに挑戦し、私たちの創造力をいっそう高めてくれます。
余りものではないけれど、自由な飛騨の森にはそれと似た美しさと強さを感じます。
私たちに柔軟になることと、共に生きることの大切さを教えてくれます。
手渡された素材を余すことなく使うこと。目的ではなく素材からはじめること。
飛騨で出会った愛すべき余りものたちに、この地で過ごす数日間の私の時間を刻みます。森と空に、町に、食に、そして人に、やさしく包まれる時間を一つひとつ見つめてみる。ありがとうの気持ちを込めた、素材と私のコラボレーションです。

「環る」simo

ものを作る過程で生まれる端材とsimoさんの流れるようなドローイングが交わり、爽やかな印象を受けます。飛騨の自然や町からインスピレーションを受けた作品は、近くで見ると素材の荒々しく複雑な表情を感じることができます。

<仕様>
素材:端材、コブ等にアクリル絵の具で彩色
サイズ:
・客室 W3,100mm×H1,400mm
・ラウンジ北 W4,700mm×H2,400mm
・ラウンジ南 W3,000mm×H2,400mm

<作家コメント>
切り出したアウトラインの緩やかな形状や、僕が描いた抽象部分の大半は「水」のイメージです。
飛騨建築の軒に見られる「雲」と呼ばれる紋様に感銘を受け、加えて「端材を生かす」というところから、「循環」をテーマに制作しました。
木や森を育てる水が雨→川→海→雲と常に循環し全ての場面で他を生かして無駄がないように、人間の営みによって出てきた端材にも、同じく本来無駄な部分などなかったはずです。
説教臭く「もったいないから自然を大事にしろ!」と言いたいわけではなく、「捨てられている部分もこんなに格好いいんだよ」という新しい視点を持てるような作品になってくれたら幸いです。

Process

作品づくりのスタートは、飛騨を五感で感じること

飛騨高山の町を散策

ヒダクマがいつもお世話になっている大工・田中さんの工房を訪問

ヒダクマ松本の案内で森歩き。ホオノキの葉に虫を発見?

森で見つけた地衣類の魅力を語るMariyaさん

「hotel around TAKAYAMA」のコンセプトはその地域に根ざす文化や人を意味する「GOOD LOCAL」に出会うこと。ヒダクマとTokyoDexチームもこれにのっとり、まずは高山周辺の町並みを散策。そして忘れてはならない、森や地域の魅力的な方々のもとへ訪れました。広葉樹について、また森林の持続可能性について、実際に体験してもらうことで理解を深めます。

ロジックではなく感覚的にアーティストに寄り添い、制作をサポート

インプットツアーを終え、作品のイメージについて話し合う。

TokyoDexのローゼンさん(右)は飛騨campの主旨に賛同し、飛騨での作品制作の方向性を積極的に牽引してくれた。

FabCafe Hidaにて、それぞれが感じたインスピレーションを元に、作品のコンセプトを導き出すためのディスカッションを実施。また、実際の素材に触れながら、具体的なイメージを固めていきました。
Mariyaさんは「まずは素材ありきで、それを自分のテイストでどう作品にしていくかを考えるプロセスが自分にぴったり合っていたし、楽しかった」と語ってくれました。
晋平さんは木材の滲みに着目し、自身の水墨画とのミックスを提案。Mariyaさんは薄い鉋屑との出会いからこれを絵の基底材として使えるのではないかと思いつきます。simoさんは端材の数々にドローイングしていき、立体オブジェクトを試しに作り上げていきました。
こうして飛騨キャンプを終えた後も、オンライン上で耐久性や設置方法等細かく打ち合わせし、それぞれ作品のイメージを固めていきました。

2度目の飛騨訪問、滞在制作

FabCafeの中庭にて、滞在制作中のsimoさんとMariyaさん

再び飛騨を訪れたアーティストたちは、それぞれのつくりたいものを都度形にしていく即興演奏のような作業で制作を進めます。

制作中の様子を見に来てくれたhotel around TAKAYAMAの日比野さん

ホテルにアートを。

最終段階の微調整を行うsimoさん

レイアウトを決めて協力し合い設置

精巧な作業を得意とする藤井家具製作所の藤井さんが一部設置を担当

7月26日には、メディア向け内覧会が開催された。写真は、TokyoDexのローゼンさんの発表の様子。

ヒダクマからは岩岡が登壇した。

こうしたプロセスを経て、飛騨地域の資源、文化、潜在的魅力が反映され、さらに環境にも配慮した作品が完成しました。これらのアート作品は、ホテルを訪れるお客様にきっと新しい気づきをもたらすことでしょう。
ヒダクマにとっても、今回初めて協働したアーティストたちの視点を取り入れることで、地域資源の隠れた魅力を再定義、再発見することができた、実りあるプロジェクトとなりました。

Members

Daniel Harris Rosen
Creative Director | CEO
TokyoDex
日本のアート業界において25年以上のキャリアを持つクリエイティブ・ディレクター。ハワイ大学で美術を専攻後、2010年多摩美術大学大学院美術研究科を卒業、博士号を修得。大学院在学中より輪派絵師団のメンバーとしてアーティスト活動を行う傍、NHK、YouTube、MINI、マクドナルド・ジャパンなどのコマーシャル企画を手がける。同時に自身の現代アート制作にも励み、ホノルル美術館やアートフェア台北での展示などグローバルに活動を展開。 2012年、アート・エイジェンシーTokyoDex設立。現在は東京を拠点に活動を行い、企業のビジョンをアートに昇華させるプロジェクトや、ドイツ大使館、Denso、EY Japan、Sapporo Beerなどといった幅広い組織へ向けたコンテンツ提案を通して、アートが持つ可能性を広げている。
https://www.tokyodex.com/

柏原 晋平|Shinpei Kashihara
アーティスト
1978年東京生まれ。高校卒業後、舞台美術やデザイン会社など、様々な仕事に従事しながら絵画、水墨画を独学で習得する。2002年頃より本格的に作家活動を開始し、画壇や派閥に属さず画家・デザイナーとして数々の仕事を手掛ける。水墨画を軸にアクリルガッシュ、ペンキ等を使った絵画作品の制作からミュージシャンとのライブパフォーマンス、テキスタイル図案、ロゴデザイン、アートディレクションに至るまでその表現媒体は多岐にわたる。西洋と東洋の画材や技法、感覚を混在させた独創的なタッチで異彩を放つその作品は各方面で高い評価を受けている。
京都・本能寺 塔頭 龍雲院への襖絵奉納をはじめ、中村獅童×初音ミクの共演でも話題となった超歌舞伎「今昔饗宴千本桜」、早乙女太一「影絵」、堂本剛ソロプロジェクト「ENDRECHERI」MVなど、様々な著名人への作画提供や企業とのコラボレーションなど多岐にわたり制作している実力派アーティスト。
https://www.kashiharashinpei.com/index.html

Photo by Hiro Nakanishi

Mariya Suzuki
アーティスト
奈良生まれ。カリフォルニア州ロングビーチでイラストレーションを学び、現在は東京をベースに活動中。本や雑誌、広告やウェブなど、幅広くイラストを提供している。東京を中心に、各地でオフィスや商業施設の壁画も多く手がける。日常の中のあらゆるものを見て描くことを得意とし、まちを歩きながら心に響く形やストーリーを感じるものをとらえることが好き。
http://www.mariyasketch.com/

simo
ペインター、壁画家
1988年大分生まれ、大阪在住。
アーティストユニットWHOLE9, SIMIZ・PAMO, KAOMANGAIに所属。ユニット、個人で国内外に壁画を制作。
主に自然の中の物質やそれらを含む風景の色や形、光の反射、屈折などに焦点を当て、そこから得たインスピレーションを画面上で交錯させ抽象的に繋ぎ止める。スタイルに固執せず、その時その時に興味を惹かれる物や事象を気持ち良く描く実験を繰り返している。
whole9.jp

黒田 晃佑|Kousuke Kuroda
ヒダクマ 木のクリエイティブディレクター
大阪府出身。大学で建築と木工を学んでいるうちに、光の現象に興味を持ちフィンランドへ暮らしと共にある家具や照明のデザインを学ぶために留学。そののち、木という素材の扱いを家具に限定せず考え森と関わっていくヒダクマに興味を持ち2019年から参加。人と素材、デジタルとアナログなど事象と事象のバランスを調整したり、繋ぐことで新しいものや価値を創る事を目指す。日常や生活を大切にしていて、散歩や音楽を探したりが趣味。

Member’s Voice

通常、TokyoDexがクライアントの作品をキュレーションする場合、コンセプトが先に立ち、素材はその後考えます。今回のプロジェクトは、それを覆す貴重な機会となりました。森のハイキングから始まり、素材をより深く理解し、そのプロセスからインスピレーションを得る。飛騨高山への深い感謝の気持ちから生まれた、素晴らしい作品を制作することが出来ました。Mariyaが言っていた「自分の作品は自分だけのものではなく、自分と木とのコラボレーションである」という言葉が、とても気に入っています。
また、ヒダクマとの新たな友情、特に黒田晃佑氏の努力と指導があったからこそ、限界を超えた新しい作品を生み出すことが出来ました。hotel around TAKAYAMAに展示されている作品は、私たちの旅の力強いエネルギーを感じさせる特別なものだと思います。

Daniel Harris Rosen
Creative Director | CEO
TokyoDex

直感でものをつくっていくことと、ロジックでものをつくっていくこと。ロジックは理解を進める役に立つだろうし、直感は共感を引き寄せるものなのかも知れないなと、感性豊かなみなさんと一緒にプロジェクトの時間を過ごす中で気付きました。
今回のコラボレーションの中では、「どんな所からやってきた素材なのか」、「誰が/誰とつくっていくのか」をポイントに置いています。
そうしたプロセスを経て出来た作品の意味を遡って理解することよりも、意味を遡る過程で生まれる対話や、分からないから働かせる想像力が地域との繋がりを生み、人を惹きつけるきっかけになると良いなと思います。

黒田 晃佑|Kousuke Kuroda
ヒダクマ 木のクリエイティブディレクター

ホテル概要

“GOOD LOCAL”と出会う旅の拠点

ホテル名:hotel around TAKAYAMA(ホテルアラウンドタカヤマ)
所在地:岐⾩県高山市花岡町1丁目42-7
TEL: 0577-36-2811
開業日:2021年7月30日(⾦)
建物概要:地上8階
客室:152室(全室禁煙)
施設:ラグジュアリーフロアー(専⽤ラウンジ付)/温泉⼤浴場(貸切風呂併設)/直営レストラン
Webサイト:http://hotel-around.com

 

文:石塚 理奈
写真(OutputsのすべてとProcessの一部):Yoshi Travel Films

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