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ストランドボードの積層による変幻自在のボリュームと地層的なテクスチャー
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Outline

「リノア北赤羽」は、多彩な共用空間で趣味や得意なことをきっかけに住民同士が交流できるリノベーションマンションです。昨年11月に竣工しました。共用空間を設計したのは、空間設計だけでなく研究開発やまちづくりに取り組む建築設計事務所、ツバメアーキテクツ。このプロジェクトでヒダクマは、1Fのシェア型店舗「つながるま」、11Fの防音機能付き集会室「おとのま」、そして12Fの集会室「あつまるま」の家具を製作しました。

居住空間の家具よりもサイズが大きい共用空間の家具。シェア型店舗の家具の素材には、細かく切削した木を接着剤で成形した木質素材「ストランドボード」を採用しました。薄いストランドボードを積層させて製作した家具は、幅をはじめとした木材の制限を越えたスケールと、地層のような表情を持っています。

集会室に設置された長さ3mのジャイアントテーブルは、広葉樹8種の角材でつくった巨大な円形の木塊を、多軸CNCで3次元的に加工して製作。テーブル中央から外側に向かうにつれ薄くなる形状で、サイズ・設計・加工ともにヒダクマがこれまで製作してきた接ぎ合わせテーブル天板の中で、最も難易度が高い製作となりました。

【プロジェクト概要】

  • 支援内容:木材コーディネーション・家具設計製作・家具製作ディレクション
  • 期間:2019年7月~2020年2月
  • 体制:

 クライアント:株式会社リビタ
 内装設計:ツバメアーキテクツ
 木材コーディネーション・家具設計製作・家具製作ディレクション:岩岡孝太郎・浅岡秀亮(ヒダクマ)
 製作:藤井家具製作所、株式会社アーティストリー、go-products、株式会社エスウッド

Outputs

1Fシェア型店舗「つながるま」

住民がカフェやバーを出店できる「つながるま」の家具は、スギ、ヒノキ、ホオノキのそれぞれ異なる色味を持ったストランドボードを積層してできたコントラストが特徴です。造作棚やローテーブルといったスレンダーな家具から、カウンターや分厚い天板の大テーブルといったマッシブなものまで、ストランドボードを使って様々な家具が製作できることを実証。

塊感のある大テーブルとL字のカウンターは、3色のボードがつくる地層のような表情をより広く見せています。カウンターはL字であっても地層が水平に続くよう、細部までこだわりました。積層により直線的な断面が生まれる一方で、角の面取りを通常よりも大きくしたり、ローテーブルの形に四角形と楕円を合わせた「スーパー楕円」形状を採用したりと、家具自体は柔らかい印象の丸みを帯びた形状に仕上げています。

<仕様>
材料:積層ストランドボード(スギ、ヒノキ、ホオノキ)
サイズ:1,800×1,800×H700(mm)
仕上げ:ポリウレタンコーティング

カフェ ローテーブル、造作棚

ローテーブルの脚にはテーパーを付け、細部の見た目を追求。造作棚のフレームは空間色に合わせたメラミン化粧板を使い、扉にホオノキストランドボードを使用しています。

<仕様(カフェ ローテーブル)>
材料:積層ストランドボード(スギ、ヒノキ、ホオノキ)
サイズ:S/ 800×800×H350、M/ 1,200×800×H350、L/ 1,800×800×H350(mm) 各2台
仕上げ:ポリウレタンコーティング

<仕様(造作棚)>
材料:積層ストランドボード(ホオノキ、メラミン化粧板)
サイズ:10,550×350×H440(mm)
仕上げ:ポリウレタンコーティング

カウンター

<仕様(カウンター1)>
材料:積層ストランドボード(スギ、ヒノキ、ホオノキ)サイズ:2,215×2,940 ×H1,000(mm)
仕上げ:ポリウレタンコーティング

<仕様(カウンター2)>
材料:積層ストランドボード(スギ、ヒノキ、ホオノキ)
サイズ:2,865×3,060×H1,000(mm)
仕上げ:ポリウレタンコーティング

11Fの防音機能付き集会室「おとのま」

テーブル

防音機能を備えた集会室「おとのま」は、雑音を遮って集中して作業に取り組みたいときや、周囲への騒音を気にせず楽器演奏などをしたいときに利用できるスペースです。「おとのま」のテーブルは、杉の柱材だけで製作。ソリッドな見た目で、作業台のような安定感のある構造を採用しました。

<仕様>
材料:スギ
サイズ:2,000×810×H720(mm)
仕上げ:天然オイル

12F集会室「あつまるま」

ジャイアントテーブル

今回のプロジェクトで最も挑戦的な設計の、12F集会室「あつまるま」のジャイアントテーブル。一見薄く見えますが、天板の中心部は厚さ90mmで、外縁部ほど薄い巨大な円盤のような形状をとっています。天板は8種類の広葉樹の角材からできており、樹種ごとの風合いが楽しめ、森を想起するような混ぜ合わせのパターンを追求しました。

<仕様>
材料:広葉樹無垢材(ナラ、クリ、ケヤキ、カバ、トチ、サクラ、セン、クルミ)
サイズ:3,000×3,000×H700(mm)
仕上げ:天然オイル

Process

環境に配慮した素材を、精密に積み重ね、つなげる

本プロジェクトで素材として採用した「ストランドボード」は、岐阜県各務原市にあるエスウッド社が開発した技術です。中でもホオノキのストランドボードは、オリーブ色をしたホオノキの心材部分と、淡い色の辺材部分が混ざり合い、そのテクスチャーは大理石のよう。「ストランドボード」は、家具用材にならない小径木を切削して混ぜ合わせ、木そのものとは異なる風合いの木質素材を生み出すという点で、森の循環に配慮した素材といえるでしょう。

積層家具をつくるにあたり、まず3種のボードが織りなすコントラストを検討しました。エスウッド社の工場にてある程度積層させたボードを幾度も並べ替え、積層順序を模索。最終的に、一つひとつのパーツに振った番号順に圧着し、求めていた地層的なコントラストを実現しました。

「つながるま」の大テーブルは、結果的に天板が推定100kgを超えるほどの重量に。その重みに耐えうる鉄製の脚を製作し、床に敷かれているインターロッキングに合致する寸法で取り付けています。

ローテーブルの天板には、内部に構造材を入れるフラッシュ構造を採用。この方法により、動かす頻度の高いローテーブルの軽量化と、材料の削減を両立しました。また、「スーパー楕円」は本プロジェクトのために考案した形で、四角形と円形の間をとった程よい曲線を目指したものです。

カフェカウンターは、テーブル天板とは異なる縦方向でボード積み重ね、地層的な表情をより際立たせました。こちらも内部にコアとなる板を組み、その上に番号付きのストランドボードを一つひとつ積層。分割して製作したものを、つなぎ目が限りなく目立たないように現場で組み立てました。精密な設計と製作により、L字の部分も含めた全ての面で3色のボードがつくる層が連なっています。

3次元的に設計・製作したヒダクマはぎ合わせ天板の集大成

これまでヒダクマは、家具用材には適さないとされている小径木でつくるテーブル天板として、数種類の樹種を接ぎ合わせた「まぜまぜ広葉樹天板」を何度か製作してきました。12F「あつまるま」のジャイアントテーブルは、まさにその集大成。スケール、難易度ともにこれまでで最も困難な天板製作となりました。

中心部の90mmから外に向かって薄くなる天板の大きさは長さ3mと巨大なため、5分割したものを現場で組み立てる方針で設計を開始。分割方法の考案から接合方法に至るまで、すべてを3次元的に設計しました。接合方法は、特に木目方向が同じになって接合部が不自然にならない方法をとっています。

角材をはぎ合わせて製作した天板は、まだ全体の厚みが90mmの状態です。5分割しているとはいえ、合計3mを超える超重厚な天板。それを多軸CNCを保有するアーティストリー社に運び込み、緩やかなテーパー加工を施しました。天板の裏面は複雑な構造をしており、その加工にもCNCを利用しています。

現場では、飛騨の職人を含めた5人で天板を接合。裏からボルトを入れて各パーツをつないで組み立て、総重量400kgはあろうかというジャイアントテーブルが完成しました。

このプロジェクトは、ストランドボードを積層させたり、巨大なテーブル天板の厚みに変化を加えたりと、これまでヒダクマが関わった製作になかった試みを数多く含んでいます。それらを実現するためにたくさんの方々と創意工夫を凝らしたことで、飛騨の森から生まれたスケールの大きな家具がリノア北赤羽の交流スペースに生まれました。

Members

千葉 元生 | Motoo Chiba
ツバメアーキテクツ 共同代表
1986年千葉県生まれ。2012年東京工業大学大学大学院修士課程修了。2013年に山道拓人、西川日満里とともにツバメアーキテクツを設立。空間の設計をする「DESIGN」と、空間が成立する前の枠組みや完成後の使い方・展開を思考し、研究リサーチを行う「LAB」の二部門を掲げて活動を行なう。二部門を循環させるようにプロジェクトに取り組むことで、「今、ここに、どんな空間をつくるべきなのか」その前提から考え、更新していくように設計活動を行っている。
http://tbma.jp/

長田 剛和 |  Takayoshi Osada
株式会社エスウッド 代表取締役
1980年、千葉県生まれ。豊橋技術科学大学大学院修士課程修了後、中国上海に渡り、戸建住宅メーカーにて、建築設計および構造設計を経験。2008年、株式会社エスウッドに入社後は研究開発部に配属。国産ストランドボードの不燃化技術および、いぐさ、竹、もみがら等の未利用植物資源のボード化の開発に携わる。2016年、代表取締役に就任。岐阜という地域特性を活かした森林資源の価値創出を製品コンセプトに、新しい素材開発によりいっそう意欲的に取り組んでいる。 http://s-wood.jp/

岩岡 孝太郎|Kotaro Iwaoka
ヒダクマ代表取締役社長 / CEO
1984年東京生まれ。千葉大学卒業後、建築設計事務所に入社し個人住宅や集合住宅の設計を担当。その後、慶應義塾大学大学院に進学しデジタルものづくりの研究制作に従事。2011年、クリエイティブな制作環境とカフェをひとつにする“FabCafe”構想を持って株式会社ロフトワークに入社。2012年、東京渋谷にオープンしたデジタルものづくりカフェFabCafeのディレクターとして企画・運営する。2015年、岐阜県飛騨市にて官民共同企業である株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)の立ち上げに参画し、2016年FabCafe Hidaをオープン、森林資源を起点とした新たなプロジェクトに挑戦する。2018年4月同取締役副社長、翌年より現職。

浅岡 秀亮 |Hideaki Asaoka
森のイノベーター
岐阜県飛騨市出身。名古屋芸術大学卒業後、家具メーカーやインテリアデザイン事務所で家具製作・デザインを経験。2016年にヒダクマに参加し、プロダクト開発や設計、制作、施工など幅広く担当。木に対する幅広い知識や、職人への深いリスペクトを持ち、木に新しい価値を付与すべく日々奮闘中。

Member's Voice

リノア北赤羽は約150戸の社員寮だった建物を、分譲マンションへとリノベーションしたプロジェクトです。ツバメアーキテクツではその共用部のデザインを担当しました。この共用部はパブリックとプライベートを隔てる中間的な領域というよりも、住民にとっては家の拡張として使える場所であり、地域の人にとってはふらっと訪れられる街の一部のような場所にしたいと思いました。そのために様々な工夫を凝らしましたが、特に家具は、家の中にはないようなみんなで使える大きな家具にしたいと思いました。と同時に、触れやすく、手垢が残るような柔らかい物にもしたいと思いました。今回つくったそれぞれの家具は、小さな木材を様々な方法で集合させることで、独特な表情、形を生み出しています。森からおりてきた木々がこの場所で再び集まって、人びとの活動をサポートしてくれている、そんなイメージです。ストランドボードの使い方はじめ、様々な木の組み合わせ方に無限の可能性を感じたプロジェックトでした。

千葉 元生 | Motoo Chiba
ツバメアーキテクツ 共同代表

「リノア北赤羽」では、住民がシェア・交流できる「つながるま」の家具・什器でストランドボードを使用いただきました。ヒノキ・スギの間伐材を活用したストランドボードに加え、ヒダクマとコラボで生まれたホオノキストランドボードの特徴を活かした、これまでにない新しい使われ方を実現しました。ヒダクマがこれまで培ってきたデザイン力が、国産ストランドボードの良さをよりいっそう引き立たせてくれています。

国産ストランドボードは、個性の異なる小さな木質チップを集め、つなぎ、ぎゅっと1枚の板にかためた素材です。リノア北赤羽に住まう人々が、さまざまな思いをもって、この「つながるま」に集まり、つながり、そして喜びや楽しさを感じあえる空間になっていく。そこを一番に願っています。

こうした取り組みが、針葉樹、広葉樹の枠組みを超え、岐阜の森を元気に、多様なものにし、地域と地域をつなぎ、また設計、家具、加工、素材といったすべてのステークホルダーを真に繋げてくれるものになると信じています。

長田 剛和 |  Takayoshi Osada
株式会社エスウッド 代表取締役

ランダムストランドボード(RSB)は柔らかな素材です。いや、正確には元の木の硬さがそのまま残るので固いのですが、とても柔らかな「印象」を与えてくれる素材です。

ホオノキのように、辺材(丸太の周辺部)が白っぽく、芯材(丸太の中心部)の色が濃い木は、辺材のみもしくは芯材のみを集めて統一感を出すか、あるいはコントラストを活かして配置をコントロールするかという意図をいつも働かせます。エスウッド社とのコラボで生まれた飛騨のホオノキRSBは、それらが混ざり合い圧縮されて出来上がる自然でありながらも、自然の中では存在しなかった不思議な模様が魅力的な、広葉樹素材の新しい選択肢です。

この時点では「面」として見せることを想定していましたが、ツバメアーキテクツはあえて「断面」を見せる積層の手法を提案しました。これも新しい選択肢の発明です。素材としての広葉樹を改変し、編集する一連のプロセスはまさにクリエイティブでした。

リノア北赤羽のカフェは、店舗としての機能を超えて、住民はもちろん地域の人達にも開かれたコミュニティの場となることが期待されています。RSBによる大きな木ならぬ「大きくて柔らかな木」の存在が、さまざまな人の活動を受け入れ、コミュニティの中心として共に育っていくことを願っています。

岩岡 孝太郎|Kotaro Iwaoka
ヒダクマ代表取締役社長 / CEO

ストランドボード積層づくりから、ジャイアントテーブルの3次元加工テーブルまで、難易度の高い仕様が多かった…というか、今までのプロジェクトの中でも鬼のような難しさでした。このプロジェクトを一言で表すなら「でかい、重い、難しい」。とにかく手を動かして、考え抜いた末 「この方法とあの工場のあの技術を組み合わせて◯◯さんの△△したらできるんじゃないか」とたくさんの人のバトンを受け継ぐように完成しました。結果として、ひとつの工場や地域では完結できないプロジェクトになりました。気がつけば、出来上がったものは誰にも真似できないような高いクオリティに仕上がり、またひとつレベルアップできたのではないかと思います。

浅岡 秀亮 |Hideaki Asaoka
森のイノベーター

文:志田岳弥
写真(竣工写真のみ):長谷川健太

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