森の所有者と活用者を結ぶ「つくば市森林バンク制度構築」

Overview
荒れ放題の森林。所有者だけでなく、みんなで活用して維持管理する
登山やドライブを気軽に楽しめる筑波山。茨城県つくば市には、この人気観光地だけでなく、広い平地部にも大小様々な森林が点在しています。その一部が荒れ放題になっている状況は全国各地の自治体と変わりません。景観の悪化や不法投棄の増加、枝や雑草の越境により市民生活に悪影響を及ぼしています。
所有者だけでなく、みんなで楽しく使うことで森林を維持管理する――。そんな発想で誕生したのが「つくば市森林バンク制度」です。市が仲介役となって所有者と活用したい人を結び、森林が人々の活動と交流の場となり、その保全にもつなげることを目指します。
ヒダクマは岐阜県飛騨市を拠点に、地域の雑木林に新しい価値を発見し続けてきました。官民連携で事業を進めてきた経験や全国の森や木やまちづくりに関わる人のネットワークがあります。
つくば市森林バンク制度の構築作業では、制度設計のためのフィールドリサーチやワークショップを実施。森林所有者と関係事業者へのヒアリングも行い、地域の研究教育機関、環境NPO、森林組合、造園事業者などと一緒に制度案を作成しました。
コモンズである森林には多くの市民が関わることも重要です。都市部で緑のコミュニティを運営する実践者もアドバイザーとして招聘。制度構築前に市民向けの説明会・意見交換会も開催し、市民の声を制度と運用に反映しました。
飛騨の山からつくばの平地に出たヒダクマ。2025年4月の制度開始後も森林活用・整備促進に資するイベントや交流会を企画・運営し、この制度が自走する基盤作りに取り組んでいます。
■関連リンク
・つくば市森林バンク制度
https://www.city.tsukuba.lg.jp/shinrinbank/index.html
・Dear Tree Project|つくば市森林バンクMAP
https://www.deartree.org/tsukuba-forest-bank-map
Project
What we did | フィールドリサーチ 森林活用ワークショップ企画運営 制度設計支援 |
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Credits | クライアント:つくば市 プロデュース:松本剛(ヒダクマ) フィールドリサーチ・ワークショップ設計・制度設計ディレクション:松本剛、松山由樹(ヒダクマ) 協力:特定非営利活動法人つくば環境フォーラム、つくばね森林組合、HARDWOOD株式会社、三島由樹(株式会社フォルク代表取締役/一般社団法人シモキタ園藝部共同代表理事/一般社団法人ソーシャルグリーンデザイン協会理事)、DearTree Project、森林総合研究所、筑波大学 写真12-15(TOP画像を除く):Yo Tanaka(FUNC LLC) |
Period | 2024年7月-2025年3月 |
Viewpoint つくば市 後藤佑太さんの視点

森林に関する苦情が寄せられるたびに現地に赴き、所有者の方と話し合って来ました。「どうしようもない。下草を刈る人手もお金もないんだ」と怒られてしまうこともあります。でも、そういう経験は私たちの財産だと気づきました。苦情が出がちな森林については手に取るように知っているし、その所有者の性格も把握しているからです。森林バンク制度では、「いい竹が生えているのはあのへん」「杉やヒノキを使いたいならこの森」「あの所有者さんは優しいので頼みやすい」といった知識をもとに、所有者と利用希望者を引き合わせています。ある森は市民に活用されることでキレイになりました。以前は怒っていた所有者さんが今ではニコニコしながら交流会に来てくれています。