豊かな森と農産物との繋がりを表現した、飛騨産直市「そやな」
Overview
野菜や果物、特産品がより輝き、地域に愛される空間の創出
「飛騨産直市 そやな」(上町農産物直売施設)は、“飛騨いち舞台”をコンセプトに、自然との共生、森と水と全ての恵みの親和性を重視し、生産者や買い物に訪れる人にとっての魅力ある舞台となるような直売所を目指して、2022年7月に開業しました。道の駅アルプ飛騨古川内に移転した新しい空間に、今地域内外から多くの人が訪れ、賑わいを見せています。
この内装・什器設計プロジェクトに、建築家の澤秀俊さん(澤秀俊設計環境/SAWADEE)とともにヒダクマは携わりました。お客様に喜んでもらえるお店づくりをしようと、プロジェクトの初めの段階から、販売のスペシャリストである同店のトマト店長(牧ヶ野芳雄さん)にも関わってもらい、その意見が空間づくりに活かされています。
多様性に富んだ飛騨の広葉樹の「森」から湧き出た「水」が、小川や地下水となって野菜や果樹類、米といった「恵み」をもたらします。こうした自然の繋がりを来店する人が体感できるよう、広葉樹の森から作られた自然の恵みを想起させるような内装空間を追求しました。
18種類もの樹種を使用した可動式の野菜棚、樹皮や突板、ストランドボードを活用したモザイク調壁面パネルや陳列棚などの各什器には、飛騨市産広葉樹のあらゆる活用方法を実践。季節や催し物に応じて自由にレイアウトを変更したり、子どもから大人、車椅子の方までお買い物を楽しめるようデザインの細部まで拘りました。
Project 農産物の源である森を感じられる空間に、シーズンに応じて商品の見せ方をアレンジできる可動性のある什器を製作
What we did | 木材コーディネーション・什器設計製作ディレクション |
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Credits | クライアント:飛騨市 内装・什器設計:澤秀俊設計環境/SAWADEE 内装・什器製作ディレクション:岩岡 孝太郎・浅岡 秀亮・黒田 晃佑(ヒダクマ) 内装施工:田中建築 内装・什器製作:飛騨産業、飛騨無垢屋、小倉鉄工、杉下工房、飛騨職人生活、山口木工所、ノナカ木工所 突板加工:片桐銘木工業 竣工写真:長谷川 健太 |
Period | 2021年9月~2022年6月 |
Viewpoint 澤秀俊設計環境/SAWADEE 澤秀俊さんの視点
澤秀俊設計環境 / SAWADEE 代表
NPO法人 活エネルギーアカデミー 事務局
「なんだこのとてつもない個性は…!」
2021年11月のよく晴れた朝、ヒダクマの皆さんと訪れた飛騨市北部池ケ原の森。立ち止まって森の光景をじーっと観察していました。すると漠然としか見ていなかった時には気付かなかった枝幹の不思議な曲線、樹皮のテクスチャー、葉の色やその大小などといった“森のディテール”が、解像度を上げることによって強烈なまでに目に飛び込んで来ました。バラバラで複雑な要素が渾然一体となり絶妙なバランスで調和している、そんな森の多様さを今回そやなの内装什器に持ち込みたいと直感した時から、机上で煮詰まっていた案に光が差し込み、止まっていたペンを持つ手が動き始めた気がします。
学生さんやヒダクマの皆さんと一緒に行った樹皮剥きワークショップなど、製作プロセス含め大変楽しい仕事でした。