誰もが立ち寄れる地域の居場所へ、渋谷区役所新橋出張所 空間リニューアルプロジェクト

Overview
親しみを持ってもらえるようひとつ一つに名前のある家具
渋谷区役所 新橋出張所は、従来の窓口機能を廃止し、地域の誰もが気軽に立ち寄れる新たな交流の場「しんばしコミュニティスペース」としてリニューアルされました。区民のコミュニティ活動の拠点であると同時に、連携自治体による催しなどにも活用される、多目的な休憩・交流スペースとして設計されています。
本プロジェクトでは、面白法人カヤック(松本 亮平、井野 貴亮、大桐 佳奈)、ArchTank(林 恭正+横尾 周)とのチームで空間づくりを手掛け、ヒダクマは造作家具什器制作を担当しました。
リニューアルのコンセプトは「ロングパーティー」。ヨーロッパの共食文化に着想を得て、「囲むことでつながりが生まれる」ことを目指し、屋内外で使用できる「ロングパーゴラテーブル」を中心に空間を構成しています。
家具・什器にはそれぞれニックネームがつけられ、名前を呼び合うような感覚で、親しみをもって使えるよう工夫されています。たとえば、座る高さを選べる「ダンダンベンチ」、畳んで小上がりにもなる「バッタンベンチ」、移動可能な「ロング掲示板」や「受付台」、そしてテーブル同士をつなぐ「契りジョイント – S / B / Y」など。いずれも多目的かつ可変性の高いストリートファニチャーとして設計されています。
この空間づくりは、これまで何度も飛騨の森に足を運び、飛騨の森や広葉樹の可能性に理解と関心を寄せてくださった面白法人カヤック、ArchTankとの協働だからこそ実現できた、実験的かつ公共性の高い取り組みです。
不特定多数の人が利用する空間であることをふまえ、「動かす」「触れる」といった行動が生まれる箇所には、飛騨の森でその時々に出会う樹皮付きの木材などを現地で即興的に選び、持ち手部分などに取り入れています。これにより触感や見た目のアクセントとしてだけでなく、思わず触れたくなるような「自分で動かす」「みんなで囲む」といった行動を自然と促しています。
さらに、時間帯や人数、活動内容に応じて自由にレイアウトを変更できる可動・可変の仕組みも導入し、地域の多様な交流のあり方に柔軟に対応する空間を実現しました。
Project
思わず触れたくなる、可動・可変する什器
What we did | 造作家具什器 企画・設計・制作 |
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Credits | 全体プロデュース:松本 亮平、井野 貴亮 プロジェクトマネジメント:松本 亮平 クリエイティブディレクション:松本 亮平 内装設計:ArchTank(林 恭正 + 横尾 周) 内装工事:佐藤工業所 造作家具什器制作:岩岡 孝太郎、門井 慈子、黒田 晃佑、江上 史都(ヒダクマ) 金物造作:内藤工業、小倉鉄工、阿久津工業 家具什器制作:go products、飛騨職人生活、ノナカ木工所 サイングラフィックデザイン:大桐 佳奈 空間写真撮影:kuwata film(添田 康平) |
Period | 2024年3月-2025年5月 |
Viewpoint 面白法人カヤック 松本さんの視点

プロジェクトディレクター
今回のプロジェクトを進めるにあたり、「ストリート的、実験的な思考」と「共創の姿勢」を持ち、共に走り抜けてくれるチームはどこだろう?と考えた時、真っ先に頭に浮かんだのがヒダクマチームでした。
個性あふれる飛騨古川の広葉樹の木材を使用し、それらの木が本来持つ美しさや風合いを活かしながら、ひとつひとつ遊び心たっぷりに仕上げていただいたストリートファニチャーたちは、市民の暮らしにあたたかさと彩りを添えてくれると確信しています。
新しい渋谷区 新橋出張所「しんばしコミュニティスペース」は、もはや画一的な空間ではなく、多様なニーズに応える柔軟な場となりました。日々「ああでもない、こうでもない」と試しながら、ご近所さん同士や利用者の皆さんで、心地よく使えるスタイルを見つけていってほしい —— そんな想いをプロジェクトチーム皆で込めることができました。
ここで時間を過ごした子どもたち、ワーカーの方々、パパやママ、おじいちゃんおばあちゃんの中から、いつか新しい “クリエイター (つくる人) ” が生まれるかもしれませんね。