アクリルと木が響き合う、名古屋樹脂工業の交流スペース

Overview
共創によってアップデートされる「素材」への認識
名古屋樹脂工業株式会社は、社員同士のコミュニケーションを促進し、創造性を自由に発揮できる場をつくることを目指し、小牧事業所内に「ラボ」「ラウンジ」「食堂」という3つの交流スペースを一体的に構想。ヒダクマとのワークショップを通じて、シームレスなゾーニングと、それに呼応する空間づくりに取り組みました。
2023年春から約1年にわたり、自由な造形が可能なアクリルと多様で有機的な形状の広葉樹という異素材のかけ合わせを試みるプロトタイピングを行いました。翌年には、nata studioと協働し、実際に空間を使用する社員の皆さんと対話を重ねながら、交流スペースの設計を進めました。
完成した空間には、縁をC型に加工し、光の反射によって輝きを生むアクリル天板に、皮を剥いたブナとカエデの曲がり木を脚として組み合わせた象徴的なテーブルをはじめ、アクリルを成形した座面にミズメなど白系広葉樹のフレームを合わせた透明ソファ、アクリルと木を交互に配したロングカウンターなど、アクリルと広葉樹が響き合う什器が並びます。これらの什器製作では同社の樹脂加工の高度な技術が活かされており、空間の中で美しいアクリルの存在が際立っています。
曲がり木の自然な形状をそのまま活かしたベンチは、当初計画されていませんでしたが、ヒダクマが企画した合宿で飛騨に訪れた社員の方が、原木が集積する中間土場で偶然出会った木を見て「空間に使おう」と考えたアイデアから誕生したものです。このように、森や素材と向き合い共創したからこそ得られた発見や変化が空間に宿っているように感じます。
この交流スペースは、普段は食堂や休憩の場として活用されるとともに、社内外の交流や共同ワーク、イベントなど、多様な活動に開かれた場として機能していく予定です。
Project 対話を積み重ねて追求した異素材の融合
What we did | ワークショップ企画・運営 プロデュース 製作ディレクション |
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Credits | クライアント:名古屋樹脂工業株式会社 ワークショップ企画・運営:岩岡 孝太郎、門井 慈子、江上 史都、鈴鹿 裕子(ヒダクマ) ワークショップイラスト制作:OK PAPERS プロデュース:岩岡 孝太郎、門井 慈子、江上 史都(ヒダクマ) 設計:nata studio 製作ディレクション:岩岡 孝太郎、門井 慈子、江上 史都(ヒダクマ) 製作(木部分):ひだザイの加工所、飛騨職人生活 製作(アクリル部分):名古屋樹脂工業株式会社 木材提供:柳木材 写真提供(上から1-6):名古屋樹脂工業株式会社 |
Period | 2024年06月-2024年11月 |
Viewpoint nata studio 長岡さん+武部さんの視点

名古屋樹脂の製造工場を案内して頂いた時、硬くて四角いアクリルが自由な造形へと変身するダイナミックな風景に驚いた。それと同時に、ヒダクマの舞台である飛騨の広葉樹の森を歩いた時の、あのワクワク感を思い出した 。
本プロジェクトでは、「素材」が私たちに与える創造力やワクワク感を、新しい形で空間化することを目指した。アクリルと広葉樹を組み合わせて、不思議な存在感が生まれるように工夫し、「素材」に対する認識がアップデートされるように設計した。
設計は、ワークショップの中で何度も対話を重ねて進められた。チームメンバーの皆が、異種素材の結合に対して何度も閃きと悩みを繰り返した。そうした、場づくりと空間づくりが並走したことによって、今回の空間が実現したと振り返っている。