垣根を越えた活動の拠点、鉄の屋根のハッピーテラス

Overview
広がる活動を支える、小さな森と鉄の屋根
共栄鋼材株式会社の社員、パーシモンヒルズ・アーキテクツ、そしてヒダクマのチームは、共栄鋼材の働く環境をより良くするために定期的なワークショップを実施し、さまざまなアイデアを生み出しています。その一つで、事務所1階の通用口からつながる屋外空間を新たな活動拠点とするアイデアが実現。リニューアルした1階の通用口「ハッピーエントランス」と同時並行で行われたプロジェクトです。
室内での活動を外に広げるため、中と外とのつながりを意識し、小さな森のように家具や植栽が調和した状態を目指しました。そんな空間を作るべく、同社のプロジェクトメンバーは飛騨の森を訪れ、土場や製材所でものづくりのプロセスを学び、使用する木材の選定を行いました。
大きなチャレンジポイントとなったのは、鉄を用いた屋根製作。共栄鋼材は母材となる鉄を加工し、メーカーへ材料を供給する鉄の川中事業者ですが、「鉄のクリエイティブカンパニー」を目指し、自社の材料を使った新たなものづくりに挑戦しています。働く環境づくりに作り手として社員が関わることで、社内の連携はもちろん、パートナー企業との今までにないコミュニケーションを創出し、チームの形が更新されました。この屋外の活動拠点には「ハッピーテラス」の愛称がつき、社内の人や訪れた人に親しまれる居場所となっています。
Project 素材を活かし、風景の一部に
What we did | プロデュース 製作ディレクション |
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Credits | クライアント:共栄鋼材株式会社 設計:柿木佑介、西尾昂紀(パーシモンヒルズ・アーキテクツ) ワークショップ企画・運営:岩岡孝太郎、門井慈子、今井瑞紀(ヒダクマ) プロデュース:岩岡孝太郎、門井慈子(ヒダクマ) 製作ディレクション:江上史都、門井慈子(ヒダクマ) 構造設計:円酒構造設計 製作:田中建築、板垣建設株式会社、丸昭産業株式会社、有限会社渡辺メッキ、山旺理研株式会社、飛騨職人生活、西野製材所、柳木材、小倉鉄工株式会社、共栄鋼材株式会社 植栽計画・施工: T'sガーデンスクエア 竣工写真:長谷川健太 |
Period | 2023年11月~2024年08月 |
Viewpoint パーシモンヒルズ・アーキテクツ西尾さんの視点

プロジェクトが連鎖し続けているチーム共栄の第3弾プロジェクトにあたる今回の最大の挑戦だったのは、共栄鋼材さんが在庫で持っている14tのコイルで屋根をつくること。幅の制約があるため大きな鉄板を溶接でつないで屋根をつくるなどはできない。自然と細かい部材が集まって屋根をつくる構法になり、レーザー加工やメッキ仕上げも共栄鋼材さんが関わりのある業者をつないでいくことで完成した。通常の建築をつくるプロセスは、設計者が設計したものに対し、各専門の業者が集まってものをつくるが、今回は目の前にある材料と、身の回りにある技術がある種、用意された中で設計が進んだ。目の前に広がる資源(コイル)をどのように活かすか知恵を絞ってものをつくるプロセスは、新しく山を切り開くような開放感があり、産業の中に埋もれた未開拓の資源に改めて可能性を見出していくものであった。