アートを通して生まれる、やさしさの循環に寄りそう展示什器。久美愛厚生病院「CARE ART PROJECT」
Overview
飛騨の広葉樹と伝統技術でつくる、アートと人をつなぐ什器
岐阜県高山市の久美愛厚生病院が主催する「CARE ART PROJECT」。
院内にアートを取り入れることで、訪れる人と人との心の距離を近づけ、来院者の不安や緊張をやわらげる瞬間を生み出すとともに、来院者やそのご家族と医療スタッフとの間に、自然なコミュニケーションが生まれることを目指した取り組みです。
飛騨地域の出身やゆかりのあるグラフィック・文・写真・イラストレーションを手がける4名のアーティストが参加し、日常の小さな幸せやささやかな変化に目を向けた作品が、病院という空間に自然に溶け込みます。
ヒダクマは、飛騨地域を中心に展示やディスプレイのデザインを行う山際 悠輔さん(kenku)とともに、什器のデザイン・ディレクションおよび製作を担当。グラフィックやイラストレーションを展示するためのフレームや、写真などを置くディスプレイスタンド、ポスターフレームなどを製作しました。
また、「CARE ART PROJECT」が今後も継続していくことを見据え、木造建築で用いられる「込み栓」の構造を取り入れることで、分解・組み立てが容易になり、展示内容に応じた再構成や什器の移動にも柔軟に対応できるようにしました。
材料には飛騨の広葉樹の小径木を使用し、樹皮や耳を残した部分も活かすことで自然のあたたかみを持ちながら、アートに寄り添う展示什器になりました。
Project 病院の中に静かに溶け込みながらアート作品に寄りそう展示什器
| What we did | 什器デザイン・製作ディレクション 製作 |
|---|---|
| Credits | 主催:久美愛厚生病院 企画・トータルディレクション:Kongcong inc. 協力:名古屋大学未来社会創造機構 参加アーティスト:白澤 真生、朝倉 圭一、表 萌々花、野上 グラフィックデザイン:渡部 航介 展示空間構成:山際 悠輔(kenku) 什器製作デザイン/ディレクション:山際 悠輔(kenku)、黒田 晃佑・松本 剛(ヒダクマ) 什器製作:黒田 晃佑(ヒダクマ)、ノナカツールズ 写真:伊藤 宏昭 |
| Period | 什器製作期間 2026年02月-2026年03月 展覧会開催期間 2026年03月18日-2026年04月17日 会場 久美愛厚生病院(院内) |
Viewpoint Kongcong inc. 千原さん、kenku 山際さんの視点
千原 誠(Kongcong inc.):
「CARE ART PROJECT」は、医療空間にアートを取り入れ、患者さんやその家族、医療従事者が抱える緊張や不安を緩和させることを軸に、医療の場を再定義し、病院と地域との新しい関係性を育むことを目指したプロジェクトです。
私たちはアートを、作品を鑑賞するためだけのものではなく、人と人との会話や気づきを生み出すきっかけとして捉えました。そのため展示空間においても、作品だけでなく、それを支える什器や素材そのものが物語の一部になることを大切にしています。
今回使用した飛騨の木は、森で育ち、人の手によって加工され、病院という場へと運ばれました。そして地域で活動するアーティストの表現を支えながら、患者さんやその家族との新たな接点を生み出しています。
また、本プロジェクトは名古屋大学との共同調査を通じて、その効果の検証も行いました。アートが医療空間にもたらす心理的な変化や、ホスピタリティの可視化につながる可能性が示され、地域と病院をつなぐ新たな取り組みとしての価値を確認することができました。
飛騨の森から生まれた木が、地域の文化や人の営みをつなぐ存在となる。その想いをかたちにする上で、Hidakumaの皆さんは欠かせないパートナーでした。
山際 悠輔(kenku):
展示構成にあたっては、病院という場所が持つ「不安」や「緊張」といった心理的特性を考慮し、奇抜な造形表現を避け、環境に馴染むアプローチを基本方針としました。
Hidakumaさんとは大きく3つの要素で協働させて頂きました。
まず、スタッフ、患者さん、面会の方など様々な人が交差するエントランスに設置した展示台。吹き抜けで、展示壁がないので流動的な導線の中で作品を鑑賞できるよう、作品を覗き込むような展示を考えました。
次に、廊下沿いの展示壁面には、イラストの原画とグラフィックの印刷作品を展示しました。公共の場であり医療機関という情報量の多い空間の中で、強すぎない主張を持ちつつも作品の居場所を作ることを意識しました。
最後に、テキスト作品のための資材を提供頂きました。こちらはデザイナーの渡辺さんにもご協力頂き、手に取れる冊子の装丁などになっています。
素材は4種の広葉樹を用い、無塗装で仕上げとしています。これは樹種による微かな色差だけを残し、設置時のさりげない存在感を意識しました。短期間の使用かつ接触を前提としない「展示の什器」の特性に基づいて選択した仕上げでした。
構造は楔(くさび)によるジョイントを採用し、解体と再構築が可能です。搬入出の効率化だけでなく、他会場への巡回や作品の変更に応じた形態の組み換えも再設計出来るようにしました。
既存の風景の中にアートという変化が付与される。この操作が広葉樹を媒介にした展示構成により、違和感なく空間にインストール出来たのではないかと思っています。




















