オープンコラボレーションを促進するロフトワークオフィス
素材としての「木」の魅力。叶えたい形を柔軟に実現
2018年に実施された株式会社ロフトワークのオフィスリニューアルプロジェクトでは、空間設計を古市淑乃さんが、什器製作ディレクションをヒダクマが担いました。フロアごとにさまざまな目的と機能を持つ渋谷オフィスのうち、8、9階の執務エリアがリニューアルされました。
本プロジェクトでもっとも大事にしたのは、「オフィスの機能性」という視点での空間づくり。常に何十という数のプロジェクトが進行するロフトワークとして、いかに進行中のプロジェクトをスムーズに進められるかは大事なポイント。オフィスを利用するメンバーがどんな行動を取ると成果が出やすくなるか?いかに楽しく働くことができるか?
こうしたUI、UXを考えながら空間の機能を決定し、諏訪さんと古市さん、ヒダクマの三者間で綿密に連携しながらプロジェクトが進められました。
一例として、各ワークテーブルに高低差をつけて、短時間で気楽に相談したいときは高いテーブルを、じっくりと作業に取り組みたいときは低いテーブルを、といった具合に、仕事内容に応じて場所を選べるような設計に。
既製品ではなく、自由に「木」でカスタムメイドされた家具たち
「ものを作り出す素材って色々あるけど、木ってすごく柔軟で機能的。」と語る諏訪さん。木は加工がしやすく、望む形に仕上げやすい。ロフトワークの空間にフィットした機能を実現させる上で、木という材質でカスタムメイドした製品が最も適していると考え、木を活かしたオフィスリニューアルに取り組みました。
ヒダクマは、諏訪さんのイメージや古市さんの設計をもとに、木の樹種の提案・調達から、ディテールの設計、モックアップの製作、製作パートナーとの共同製作、現場搬入・設置までを一貫して担当。
象徴的かつ実験的な「曲線テーブル」は、丸みに沿ってチームメンバーが座り、一緒にPC画面を見ながら作業できるよう設計しました。曲線の形状を活かし、ひとりで集中したい時は隣の人と少しずれた、視線が気にならない位置を選ぶことが可能。サクラ、トチ、ブナやクリなど、それぞれのテーブルで異なる広葉樹を組み合わせることで、ユニークな表情を醸し出します。
スタンディングでPC作業がしやすい「窓際カウンター」。天板手前が5度下に傾いており、身長の高低差があっても、PCを置く位置により誰でも使いやすい設計に。また傾斜があるため、あまり物を置かなくなるであろうという隠れた意図も。この下のスペースを活かし、フリーアドレス化により必要となった私物を保管できるロッカーを設置しました。
「ガラストップテーブル」天板にはガラスとサクラ無垢材を、脚はクリアアクリルと角材を組み合わせました。異素材と組木の技法が織りなす、ユニークなテーブルです。
心地よい人の流れや活発なコミュニケーションを醸成する、ロフトワークにふさわしい空間が完成しました。
製品情報
曲線テーブル
執務エリアに配置された、象徴的かつ実験的なテーブル。曲線の丸みに沿ってチームメンバーが座り、一緒にPC画面を見ながら作業できるよう設計。曲線の形状を活かし、ひとりで集中したい時は隣の人と少しずれた位置や視線が気にならない位置を選ぶことが出来ます。さらに、今後の人員増加も予測し、詰めれば多くの社員が座れる様な、柔軟な仕様に。
中天板には電源タップが組み込まれています。それぞれのテーブルで異なる広葉樹を組み合わせることで、ユニークな表情に仕上りました。
材料: まぜまぜ広葉樹 (A)サクラ、ブナ、トチ/(B)トチ、ホオ/(C)ケヤキ、クリ
サイズ:(A)W4580×D28320×H720/(B)W4355×D2150×H900/(C)W4160×D2100×H900
脚仕様:スチールシルバーメラ焼き塗装
仕上げ:浸透性ガラス塗装
その他仕様:(中天板)カラーMD
窓際カウンター
天板手前が5度下に傾いていることで、スタンディングでPC作業がしやすい仕様に。身長の高低差があっても、5度の傾斜であれば、PCを置く位置によって誰でも使いやすくなるよう工夫しました。さらに傾斜があるため、あまり物を置かなくなるであろうという意図が隠されています。この下のスペースを活かし、フリーアドレス化により必要となった私物を保管できるロッカーを設置しました。
材料:まぜまぜ広葉樹(クリ、サクラ、カバ、トチ、ブナ、ケヤキ、ホオ)
台数:2台
サイズ:W25000×D650×H1050(1台)
脚仕様:シナランバーコア
仕上げ:浸透性ガラス塗装
その他仕様:(小口)真鍮フラットバー
給水ワゴン
ウォーターサーバーが内部に組み込まれた可動式ワゴン。社員のお菓子やお土産をシェアできる、ちょっとしたリフレッシュスペースです。
材料:まぜまぜ広葉樹(A)サクラ、ブナ、トチ/(B)フラッシュ+リノリウム貼り
台数:2台
サイズ:(A)W1250×D990×H900/(B)W1300×D1360×H900
脚仕様:ポリフラッシュ
仕上げ:(A)浸透性ガラス塗装
その他仕様:可動棚付き
昇降テーブル天板
既存のテーブルを生かして天板のみを変えました。天板の形状を変えることで、フロアの形に沿った並べ方が出来きるような仕様に。
材料:フラッシュ+リノリウム貼り
台数:2台
サイズ:(1)W2200×D900 /(2)W1150×D680
リメイクテーブル
7 種の樹種をフローリング状にし、それを斜め貼りにすることで独自の表情が表れたテーブルです。
材料:まぜまぜ広葉樹(クリ、サクラ、カバ、トチ、ブナ、ケヤキ、ホオ)
台数:2台
サイズ:(大)W3300×D1400×H900/(小)W2200×D1500×H730
脚仕様:既製品使用
仕上げ:浸透性ガラス塗装
その他仕様:(小口)真鍮フラットバー
造作棚
サクラの木のフレームに布を張った大きな引き戸がオフィスに自然と馴染み、木のあたたかみを感じるデザイン。戸の中の棚にはコストや製作時間をカットするために既製のスチールラックを採用した「半オーダメイド、半既製品」の収納スペース。
材料:(建具)サクラ/(建具生地)コーデュラナイロン
台数:2台
サイズ:W4180×D555×H2440
脚仕様:敷居、鴨居 /(フレーム)カラーMDF
仕上げ:浸透性ガラス塗装
その他仕様:(内部棚)既製品使用
マガジンラック
オフィス内の柱に造作。雑誌を置くだけでなく、一部がiPadスタンドになっており、充電ができるよう配線しました。
材料:サクラ
台数:2台
サイズ:W700×D100×H1920
仕上げ:天然オイル
その他仕様:(一部)iPodラック
本棚とブックエンド
マガジンラックと繋げて、スムーズな動線になるよう工夫しました。「既製品ではつまらない」というひと言から生まれたブックエンドは、本の背表紙の曲率を実測して加工し、並べた本と自然と馴染むようデザインしました。
材料:サクラ
台数:3台
サイズ: W700×D300×H1920
脚仕様:既製品ブラケット
仕上げ:天然オイル
その他仕様:(ブックエンド)サクラ、ブナ、トチ
宅配受けカウンター
宅配物を一時的に置いて置くためのカウンターで、動線を邪魔しないよう、半円形のデザインに。さらに、隣の点検口に容易にアクセスできるよう、折りたたみ式になっています。
材料:メラミン化粧板 フラッシュ
サイズ:W1500×D600×H900
脚仕様:既製品ブラケット
ガラストップテーブル
天板にはガラス天板とサクラ無垢材を、脚はクリアアクリルと角材を組み合わせました。異素材と伝統技術が織り成す、ユニークなテーブルです。
材料:(天板)サクラ(耳残し)+強化ガラス
台数:2台
サイズ:W1480×D1170×H710
脚仕様: サクラ+クリアアクリル
仕上げ:浸透性ガラス塗装
ベンチ
壁の曲線形状に沿ったベンチ。ちょっと奥まった場所で仕事したい、体調が悪い時に少し横になって休みたい、といった様々なニーズに合わせて利用できるスペースです。
材料:まぜまぜ広葉樹(サクラ、ブナ、トチ)
台数:2台
サイズ:W25850×D450×H430
脚仕様:スチール シルバーメラ焼き塗装
仕上げ:浸透性ガラス塗装
文:石塚 理奈
写真:長谷川 健太
編集:ヒダクマ編集部