お寺で木を眺めて見えた、多様な人々をつなぐ木への愛着
Introduction
はじめに
木と関係する仕事をしていると、“これは!”と目を奪われる瞬間があります。そんな木を、“眺木(ちょうぼく)”と名付けてみました。読んで字の如く、眺めていたくなる、見どころのある木です。眺木のいいところは、木に詳しい人もそうでない人も楽しめて、ものづくりに使われないような木にも一見の価値が見出せる点です。眺木の魅力を地域内外の方に発信すべく、ヒダクマは飛騨市広葉樹活用コンシェルジュの及川幹さんとの協働で展示を企画しました。
11月6日(土)から飛騨古川の円光寺で開催している「眺木展」では、木への愛着を持った方々が選んだ眺木を展示しています。7日(日)には、木に対して十人十色のまなざし向ける出展者の方々が集い「眺木展解説ツアー」を開催。個性豊かな木をみんなで囲みながら出展者の解説に耳を傾けました。
「面白いね」
そんな言葉がたくさん聞こえました。また、眺木展を通じて見えたのは、木との関わりの多様さ、つまり異なることである一方で、職業や立場が異なる出展者や参加者の方々が、木への親しみや興味といった共通項でつながっているということでした。この記事では、眺木並みにユニークな出展者の方々の生の声とともに、眺木展のポイントと解説ツアーの様子を紹介します。
Writing:志田岳弥
11月6日(土)から飛騨古川の円光寺で開催している「眺木展」では、木への愛着を持った方々が選んだ眺木を展示しています。7日(日)には、木に対して十人十色のまなざし向ける出展者の方々が集い「眺木展解説ツアー」を開催。個性豊かな木をみんなで囲みながら出展者の解説に耳を傾けました。
「面白いね」
そんな言葉がたくさん聞こえました。また、眺木展を通じて見えたのは、木との関わりの多様さ、つまり異なることである一方で、職業や立場が異なる出展者や参加者の方々が、木への親しみや興味といった共通項でつながっているということでした。この記事では、眺木並みにユニークな出展者の方々の生の声とともに、眺木展のポイントと解説ツアーの様子を紹介します。
Writing:志田岳弥
「眺木展」概要
■開催期間:
2021年11月6日(土)〜14日(日)/10:00~16:00
■会場:
円光寺の本堂縁側(飛騨市古川町殿町11−11)
■企画・運営:
広葉樹活用コンシェルジュ 及川幹(https://hidatsumu.com/desk/)
飛騨の森でクマは踊る 志田岳弥(本記事執筆者)、黒田晃佑(図録・ポスター・什器デザイン担当)
■協力(展示物提供・順不同):
円光寺、柳木材、西野製材所、飛騨職人生活/calm’s cafe、奥井木工舎、武田製材、横沢広朗氏、安江悠真氏、山口穂高氏(岐阜県生活技術研究所)、金田幸夫氏(金木戸屋)、田中一也氏(田中建築)、白石達史氏(M&Company)、松原千明氏(木と暮らしの制作所)
地域で親しまれるお寺で、眺木展が開幕
眺木展の会場は、飛騨古川のお寺「円光寺」の本堂縁側。今では縁結びの風習として認知されるようになった「三寺参り」で詣でる3つのお寺のひとつです。お寺の脇を流れる瀬戸川からの風が通り、一日を通じて変わる光の入り方が木の表情も変化させます。
眺木展の会場はA~Cまでのエリアに分かれています。エリアAは企画サイドで選んだ、森の生態に迫る眺木を展示。エリアB~Cには、16人の方からお借りした眺木を展示しています。このレイアウトやポスターデザインなど、製作物のディレクションを担当したのは、ヒダクマの木のクリエイティブディレクター 黒田晃佑。
眺木展のポイントは、ユニークな木が集まっているというだけではなく、木と人の関係が垣間見えるところ。木工職人が知っている木の魅力、和菓子屋さんの目線、木で染め物をする人が出会った眺木など、木との関わりは千差万別です。
エリアA:眺木って、何をどう眺めたらいいの?
木は色や木目、節などさまざまな見た目の特徴を持っています。それを木の表情と情緒的に呼んだりするのは、人が木に対して抱く親近感の現れでしょうか。そんなことを考えながら、森で木が生きた証としての個性を及川さんがそれぞれ解説。これから目にする強烈な個性を持った眺木も、エリアAで培った目と知識でより一層味わい深くなるはずです。
エリアB:眺木愛好家が優しくレクチャー
お寺の正面に当たるエリアBには、円光寺の和尚さんの眺木や、この企画の発端にもなった眺木愛好家 横沢広朗さんの眺木などが並びます。横沢さんは平易な言葉で眺木を紹介し、最後に「これが(眺木の)正解ではないので」とひと言。たくさんの参加者が「眺木いいかも」と思った瞬間でした(たぶん)。
「運命の赤いライン」と名付けられた眺木を提供してくれたのは、三重県で最もユニークな製材所「武田製材」の武田誠さん。奥さんの監督・撮影によるビデオメッセージで解説ツアーに参加してくださいました。製材をする人しか目にできないシーンが、この眺木以外にもたくさんあることを想像させます。
この企画展で唯一、動く眺木を出展したのは岐阜県生活技術研究所の山口穂高 主任研究員。虎斑(とらふ)と呼ばれる、光の当たり方でキラリと光る模様の仕組みを解説してくれました。
エリアB:長い時間、木が経験した出来事を眺める
縁側の角を曲がって、解説ツアーもいよいよ終盤に。山椒魚にも小さな洞窟にも見えるコブを選んだヒダクマ代表の松本は、井伏鱒二の短編小説になぞらえた眺木エピソードを披露。文字数の制限上、図録に盛り込めなかった話が、観覧者の笑いを誘いました。
型にはまらないものづくりを実践する飛騨職人生活の堅田恒季さんの眺木。タイトルは「葉巻型UFO」です。確かに、スタートレックに出てきそうなそのフォルム。しかしこの眺木はビジュアルとは裏腹に、企画の核心を突いてくるメッセージが込められています。
実は自分の眺木が展示に値するかどうか不安だったという、木こり見習いの安江悠真さん。控えめながらも、木との出会いも偶然の産物であることを教えてくれました。
解説ツアーの最後、会場の最奥部に堂々と鎮座する杉の板を目の前に参加者は何を思ったでしょうか。非常に目が詰まった年輪。いくつかの節が目を惹き、板の両端には虫食いが見られます。長い年月の間、この杉にいろんな出来事が起こった、その歴史が刻まれた板です。単なるいい材ではないこの杉の板を、飛騨で広葉樹を専門に製材する西野製材所の西野真徳さんが解説してくれました。
ありがたいことに、本当にさまざまな人に眺木展をご観覧いただきました。展示を見に来た人だけでなく、円光寺さんをお参りついでに立ち寄って下さった方からも感想をいただきました。
「お寺の雰囲気と良く合っていた。木の個性が面白かった」(地元・主婦の方)
「思いのほか、楽しかった」(岐阜県・会社員の方)
「普段何気なく眺めていた木目にも色々な理由や楽しみ方があることを知れました」(岐阜県・会社員の方)
「木をじっくり眺めるという機会があまりなかったので、じっくり眺めることで見えてくる面白さを感じることができた」(岐阜県・デザイナーの方)
「自分も仕事をしていて気に入った木を取っておいているので、他の人のコレクションも見れて楽しかったです」(愛知県・会社員の方)
ご参加くださったみなさま、ありがとうございました。「眺木展」は11月14日(日)までの開催です。みなさま、ぜひお気軽に足をお運びください。
「眺木展(ちょうぼくてん)」
日時:11月6日(土)〜14日(日)10:00~16:00
場所:円光寺本堂縁側(飛騨市古川町殿町11−11)
観覧無料
【特別企画】ナイト眺木展
日時:11月13日(日)17:00~20:00
場所:円光寺本堂縁側(飛騨市古川町殿町11−11)
観覧無料
【関連企画】
ユニークな木を1g1円で販売するWOOD MARKET「蔵出し広葉樹」
日時:11月13日(土)10:00~17:00
場所:FabCafe Hida(飛騨市古川町弐之町6−17)