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Column

木の産地の未来をみんなで考える。「目立」にフォーカスした現地見学ツアー

Introduction はじめに

広葉樹の施業、製材・乾燥、そして活用までを実践者から学ぶ講座シリーズの「広葉樹まちづくり学校」。その特別編として「目立(めたて)」にフォーカスした現地見学ツアーを2025年12月に開催しました。製材所で日々使われる帯鋸。その切れ味と調子を左右する「目立」は、木を活かす現場を根底から支える重要な仕事です。しかし、その存在は産地の外ではほとんど知られていません。今回のツアーでは飛騨地域で残り一軒となった目立屋「宇野鋸加工所」と飛騨地域の6つの製材所を訪問し、最後は宇野さんが営む居酒屋での交流会の様子をお届けします。

Writing:ヒダクマ 堀之内 

飛騨の目立屋「宇野鋸加工所」

宇野鋸加工所・宇野淳一さん

今回のツアーの中心となったのは、「宇野鋸加工所」の宇野淳一さん。
飛騨古川で美味しいホルモンが味わえる店「居酒屋・長八」を営む宇野さんですが、昼の顔は製材所の帯鋸を専門に扱う目立屋です。

目立屋とは、帯鋸という生き物のようにしなやかに曲がる長い刃物を研ぎ、その調子を整えていく専門職のこと。居酒屋でお客さんと向き合い、会話を重ねるように、宇野さんは製材所とも密にコミュニケーションを取りながら、鋸の状態を見極めていきます。
それは、技術と関係性の両方が求められる仕事です。

日本各地にある多様な木の産地は、こうした製材所と目立屋との信頼関係によって支えられてきました。しかし飛騨地域では、目立屋は今や宇野鋸加工所一軒を残すのみとなっています。

産地の裏側にある「木と刃物の文化」に触れるために

この状況を受け、やまかわ製材舎の及川さんとヒダクマの松本が一緒に企画したのが、今回の見学ツアーです。まずは、産地の裏側で営まれてきた木と刃物の文化に触れてもらうこと。個性豊かな製材所と目立屋、そして多様な自然素材との関係性の一端を、実際に現場を巡りながら体感してもらうことを目的としました。そして夜は、宇野さんが営む「居酒屋長八」で参加者全員が集う時間を設けました。

及川 幹|Motoki Oikawa
株式会社やまかわ製材舎 代表取締役
静岡県島田市出身/大阪大学文化人類学専攻卒。針葉樹の量産製材工場に携わったのち、2020年より飛騨市地域おこし協力隊/広葉樹コンシェルジュに着任。短期乾燥PJの運用や地域内の遊休製材所の再稼働PJを経て、2024年4月に㈱やまかわ製材舎を設立。木の文化の落ち穂を拾うという企業理念を掲げ、自然と社会を接続するハブ装置としての製材所のあり方を模索している。眺木展実行委員会代表/目立会議(仮)メンバー。

多様な自然を活かす製材所と目立屋見学ツアー

ツアーでは半日で、高山市にある「高山木の里団地」と飛騨市内にある計6つの製材所と、宇野鋸加工所を巡りました。

丸弘木材

雪が降る中、まずは高山市で主に建材向けの針葉樹を製材する丸弘木材へ
訪問先の製材所の皆さんには普段は説明しない帯鋸と目立についてお話しいただきました。

カネモク

高山市で主に広葉樹を製材するカネモク

逢坂建材

高山市で主に建材向けの針葉樹を製材する逢坂建材

飛騨高山森林組合

高山市で主に針葉樹を製材する飛騨高山森林組合へ

宇野鋸加工所へ

今回の見学場所のメインとなる宇野鋸加工所では、宇野さんから目立の仕事についてお話を伺い、跡継ぎとして修業中の息子・宇野雅俊さんも参加してくださいました。参加者にとって目立技術の奥深さだけでなく、その継承の難しさにも触れる時間となりました。

宇野さんは10数台の機械を使い分け、それぞれの製材所に合った研ぎをしていきます
帯鋸=bandsawといわれるやわらかい鋸は、輪になっている柔らかい鋸で、まるで生き物のよう。鋸の腰を見てあげるのも、目立屋の大事な仕事。
息子の雅俊さんからも刃物についてご紹介していただきました。
機械化が進んでおり、研ぎ自体は自動化されています。宇野さんは音を聞き分けながら、砥石の粗さや強さの調節をしているそうです。

飛騨古川の製材所へ

ツアーの後半では、飛騨古川の製材所へ。広葉樹を専門とする「西野製材所」と、飛騨に新たにできた製材所で、今回のツアーの発起人である及川さんの「やまかわ製材舎」を訪れました。

西野製材所

飛騨市で主に家具用の広葉樹を製材する西野製材所

やまかわ製材舎

飛騨市で新しく稼働し始めた広葉樹を製材するやまかわ製材舎では普段と同じように宇野さんが帯鋸の回収と配達にいらしゃったのを見学させていただきました。

夜は「居酒屋長八」で語り合う

夜は、宇野さんが経営する飛騨古川駅近くのホルモン居酒屋「居酒屋長八」にて懇親会を開催しました。
当日は、全国から木工機械メーカーの役員、造林研究者、民間フォレスター、林業従事者、学生など、老若男女10名の方にご参加いただきました。
夜遅くまで、製材所や目立について、それぞれの地域の森や木の未来について語り合い、大いに盛り上がりました。

ツアーを終えて

本ツアーに参加してくださった林材ライター・赤堀楠雄さんによる「目立ての重要性を知ってほしいーー製材業の将来に関わる課題と認識を」(『木材情報』2025年12月号)でご紹介いただきました。少しでも多くの方に木の産地の現状、製材や目立のことを知っていただけたらうれしいです。

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
目立や製材の仕事にご興味のある方がいらっしゃいましたら、飛騨の事業者の皆さんとおつなぎしますので、ぜひヒダクマまでご連絡ください。

広葉樹まちづくり学校は今年も開催予定

「広葉樹のまちづくり学校」とは、飛騨市が推進する広葉樹活用を軸とした持続可能なまちづくりに挑戦する人材を育成するための、実践型のスクールです。
飛騨地域および全国から集まる実践者が、互いに実践知を学び合い、連携できる関係性を築くことを目的としています。

2020年から飛騨市主催で実施してきた本学校には、これまでに約100名の地域内外の林業・木材事業者、山主、木工職人、建築家、異業種の企業担当者、自治体職員、学生などが参加してきました。
そこで得た学びやネットワークは、それぞれの現場や活動に活かされています。
2024年からは、飛騨市広葉樹活用コンソーシアムとヒダクマが共催し、地域の実践者とともに本学校を継続的に運営しています。

本年度も、広葉樹林の施業や製材・乾燥をテーマにした実践講座を予定しています。
開催日程が決まり次第、ヒダクマWebサイトやSNSにてお知らせいたします。
今年も皆さんのご参加を、心よりお待ちしております。

■ 広葉樹のまちづくり学校2025「広葉樹の森の基礎講座」のレポートはこちら:
https://hidakuma.com/column/20250607-0608_hida-hardwood-school/

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