社員のウェルネスを広げ循環させるダイビル本社オフィスの空間づくり
Introduction
はじめに
2024年6月19日、「オフィスからはじめるウェルビーイング。ダイビル株式会社の事例からオフィスの価値を探究する」と題したトークイベントを開催しました。このイベントでは、オフィスビルのリーディングカンパニー・ダイビルが2023年にオープンした本社オフィスの事例を元に、オフィスづくりのプロセスや現在のオフィスの様子をご紹介しました。
ダイビルがオフィスづくりにおいて目指したことは、オフィスを起点に人・企業・社会がより良い方向へ向かうこと。その目標に向かい、どのようなプロセスでオフィスづくりが進められたのでしょうか?ヒダクマが担当した「ウェルネスエリア」と名付けられた空間づくりにフォーカスし、「好循環」を生み出すための工夫や仕掛け、そして現在のオフィスの様子について本記事ではまとめています。
Writing:飯澤 絹子 Editing:ヒダクマ編集部
ダイビルがオフィスづくりにおいて目指したことは、オフィスを起点に人・企業・社会がより良い方向へ向かうこと。その目標に向かい、どのようなプロセスでオフィスづくりが進められたのでしょうか?ヒダクマが担当した「ウェルネスエリア」と名付けられた空間づくりにフォーカスし、「好循環」を生み出すための工夫や仕掛け、そして現在のオフィスの様子について本記事ではまとめています。
Writing:飯澤 絹子 Editing:ヒダクマ編集部
【イベント概要】
■日時:2024年6月19日(水)
■登壇者:
伊吹 建さん(ダイビル株式会社 大阪営業部 営業課長代理)
寺島 詩織さん(ダイビル株式会社 大阪営業部 営業課 兼 経営企画部 コーポレートコミュニケーション課)
松本 剛(株式会社飛騨の森でクマは踊る 代表取締役COO)
今井 瑞紀(株式会社飛騨の森でクマは踊る 森のCMFデザイナー)
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「あした、もっと行きたくなる」を目指したオフィスづくり
「オフィスビル事業者でありながら自身のオフィスは旧態依然としていることへの危機感が高まり、業務遂行における効率性向上・コミュニケーションの活性化・従業員満足度の向上・次世代ワークプレイスの構築を目的としてプロジェクトチームが発足しました。主要メンバー4名は、当時平均28歳の若手。これまでになかった異例の取り組みでした。」と語るのは、オフィスプロジェクトのサブリーダーを務めたダイビル伊吹さん。
プロジェクトメンバーで、ダイビルの課題や問題点、ありたい姿を整理し、リニューアル方針を策定。その方針を軸に、PMの選定、部署横断のワークショップを開催し、オフィスの全体コンセプトを策定しました。
さらにレイアウト・デザインコンセプトは、創業の地である大阪・中之島をテーマとした、「水の回廊・大阪」に決まりました。これは会社のありたい姿で掲げる”街創り”の推進も意識したコンセプト。「大阪の都市にとって、文化や経済の発展の中心であった河川の風景。水路を人々が活発に行き交い、水辺では豊かなコミュニケーションが行われる居心地の良いその景色を、新しいダイビル本社の空間に落とし込む。」のもと、事務所全体を大阪の都市と捉えました。
事務所全体のレイアウトの中には、「森」をテーマとしたウェルネスエリア【Forest】と名付けた空間も。効率的・効果的に仕事を進めるためにも、仕事の合間にリフレッシュし、そして仕事に戻るという循環が必要と考え、自然を感じられる空間を目指しました。また各種イベントの開催も可能となる、他の執務空間とは異なった使い方をする場所でもあるこのウェルネスエリア。ダイビルは、このエリアを一緒につくるパートナーとして、森を起点にした空間づくりに取り組むヒダクマに依頼しました。
「ウェルネス」と「循環」を体現する空間を目指して
ウェルネスエリアのテーマとしてヒダクマが提案したのは「森の入り口と出口」。
提案を聞いたダイビルの寺島さんは「良質な水や木材活用における自然に配慮した資源循環、集中して仕事をした後ウェルネスエリアでリフレッシュしてから執務空間に戻る働き方の循環など、様々な絡め方ができる可能性を感じた」と語ります。
ヒダクマの今井は「ウェルネスエリアを考える上で、働く場所のウェルネスを考えることから始めた」と話しています。予防医学研究者である石川善樹さんの書籍*から、「ウェルネスとはWell-Doing(仕事に直結する活動を、よく”やる”こと)とWell-Being(仕事に直結しないが、身体や心の状態がよく”ある”ようにすること)のバランスが取れていること」と学びました。
*書籍「フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略」(石川 善樹著、NewsPicksパブリッシング、2020年)
そこでフロア全体をDoingとBeingにエリア分け。
仕事に直結するDoingのエリアは広くとられていたため、ウェルネスエリアの過ごし方をBeingの場として、フロア全体でのウェルネスのバランスを整えることを提案しました。
もうひとつ、ウェルネスエリアで重点をおいたのは、ダイビルが目指す「環境に配慮した持続可能な循環」と「都市と地域の経済循環」を表現するプレゼンテーションエリアとして機能すること。森(川上)から川下までの風景を再現することで、「ウェルネス」と「循環」を体感できる空間を目指しました。
伝え手であるプロジェクトメンバーと森で共通言語を育み、形にする
ヒダクマは、プロジェクトメンバーが森から川下の風景を再現した空間でウェルネスと循環を体感すると同時に、ウェルネスについて語れるようになることが大事だと考え、「ウェルネスを体感し、そして言語化。次へ伝えるためのウェルネスツアー」として、飛騨で2日間のツアーを実施しました。
1日目は広葉樹の森や集材所・製材所、広葉樹を使ってできた空間を見学し、森の木が家具になるまでのプロセスを体感しました。ダイビルの寺島さんは、印象に残ったこととして「ナラ枯れ」について語りました。
「木材に関わる皆さんから「ナラ枯れ」というキーワードを沢山聞きました。ナラの木は家具に向いているけれども単一だと育つのが難しく、虫の被害を受けてしまう。そこで、多様な木々と一緒に育てていく必要があること。実際に森に入ってそれを視覚的に体感することができた。」と、体験を通して森についての理解を深めました。
2日目は「ウェルネスエリアでどのように過ごしてほしいかを伝えられるようになってほしい」という思いから、森を五感で感じるアクティビティを実施。また「森の中でお気に入りの空間を探すようにウェルネスエリアを使用してほしい」との思いから、製作を行う職人さんの工房で、プロジェクトメンバーがテーブル天板の樹種の並び順を決め、場に愛着を感じてもらうことも行いました。
合宿の最後には、参加メンバーでウェルネスエリアにキャッチコピーをつけるワークショップも実施。「キャッチコピーをつける」という行為を通して、ウェルネスエリアについて、どんな言葉で伝えられるのかを考えてもらうために実施しました。
オフィスが完成した現在。今までにはなかった循環の形
新オフィスの利用が始まってみると、ランチ時間の利用が多いウェルネスエリア。誰かがここでご飯を食べていると、そこにまた別の誰かが参加する形で一緒に時間を過ごしている姿が見られているそう。リラックスして過ごしたり、社内イベントや自主イベントが開催され、リニューアル前だと見られなかった光景が見られているようです。
ここ最近では「オフィスを変えたい」と話す企業の方が多く、お客さまにダイビルオフィスができるまでのプロセスを共有し、サポートするような機会もあるとのこと。「このプロジェクトを通じて、別の企業へ良いパスが出せた事例の一つと感じている」と話すダイビル伊吹さん。オフィスを起点とした好循環がもうすでにはじまっています。