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広葉樹什器のハブスペースを共創の場に。JNSホールディングス神田オフィスのリニューアルプロジェクト
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Outline

長引くコロナ禍によりリモートワークが定着し、オフィス面積を削減したり、変化する状況や多様な働き方を受容できるようフリーアドレス制を導入する会社が多く見られるようになりました。DXソリューション事業、X-Techサービス事業を展開するJNSホールディングス株式会社(以下JNSグループ)もそのうちの一社です。

東京・神田にあるJNSグループの執務フロアにはグループ会社3社が共存していましたが、仕事内容の変化や状況の変化などからこれまで横断的なつながりを持つことはほとんどありませんでした。このような現状とこれからの働き方を検証した結果、物理的、機能的なリニューアルのみでなく、オフィス空間が社員の帰属意識の醸成を図り、社員が出社したくなるような活発な交流の場へ変化させたいという思いが明確になります。こうして以前札幌オフィスを設計した古市淑乃さん(古市淑乃建築設計事務所)と家具製作ディレクションを担ったヒダクマが再びチームを組み、本社オフィスのリニューアルプロジェクトに取り掛かりました。

新たな共有スペースの設置が物理的に難しいという制約下で空間を設計した古市さんは、「ただデスクを並べるだけのオフィスでは課題解決にならないと考え、ロッカー、収納、コピー機等の設備類に広葉樹を組み合わせ、カウンターや作業場としても機能するハブスペースを作りました」と振り返ります。

表情豊かな広葉樹から成る収納什器群がオフィス中央に集まり、社員同士の日常的なコミュニケーションを誘発する場に。大きさや形状の異なる多様な什器たちは、それぞれ働き方が異なる社員がひとつの空間でいきいきと働く、そんな姿を象徴する存在であってほしいという思いを込めて製作しました。

【プロジェクト概要】

  • 支援内容:
    ・要件整理・企画提案
    ・空間設計・家具什器設計
    ・ 製作ディレクション
    ・ 家具什器プロトタイプ製作
    ・ 製作図作成・3Dモデリング
    ・ 木材選定・調達
    ・ 工程管理
    ・ 加工・製造
    ・ 搬入・設置
  • 期間:2020年8月〜2021年7月
  • 体制:
    ・クライアント:JNSホールディングス株式会社
    ・設計:古市淑乃(古市淑乃建築設計事務所)
    ・家具設計・製作ディレクション:岩岡孝太郎・門井慈子(ヒダクマ)
    ・製作:西野製材所、片桐銘木工業株式会社、田中建築、らくよう工芸、株式会社博展

Outputs

フラットなオフィス空間に明るいインパクトを与える広葉樹什器群

本社オフィスには木目プリントシートが使われたテーブル、扉、ロッカーなどが既に設置されていました。ヒダクマは設計意図としてこれらの色味を尊重し、色味や木目を選択しながら造作家具を製作。

オフィスに元々存在する複合機やウォーターサーバー、消耗備品の居場所を丁寧に設計。

社員たちが会話をしながら作業をしたり、自然とコミュニケーションが生まれるハブスペースとなることを想定した什器。天板として人が作業をするTOPの面は厚さ30mmの無垢材の接ぎ合せで作成し、側面や棚板、R部分の造作は反りが起こりにくく重量の軽い突板ランバー材を使用。

<仕様>
材料:天板/広葉樹無垢材、側面/広葉樹突板(シュリザクラ、ホオノキ、クリ)、シラカバ合板
サイズ:
・外側L字造作/シュリザクラRウォールとクリとシラカバの本棚 2,700mm×3,800mm×H1,200/900mm
・内側造作/シュリザクラRウォールとホオノキのダストボックス隠し 2,100mm×1,300mm×H1,200/1,000mm
仕上げ:不燃塗装仕上げ

シュリザクラのコート掛けとクリベンチ

<仕様>
材料:シュリザクラロータリー突板、SUS金物、座面/広葉樹無垢材、ベンチ側面/クリスライス突板ランダム貼り
仕上げ:不燃塗装仕上げ

個人ロッカー収納テーブルと曲線屋根の本棚

<仕様>
材料:テーブル天板/広葉樹無垢材(シュリザクラ、ホオノキ、クリ)、側面/広葉樹突板
   曲線屋根の本棚/広葉樹突板
仕上げ:不燃塗装仕上げ

フリーアドレス曲線テーブル

長さ6mの緩やかな曲線テーブルは、カーブに沿って座ることで、チームメンバーが揃ってPC画面を見ながら作業したり、ひとりで集中したい時には、視線を気にならない位置を選べます。テーブル中央2箇所の空いたスペースに植栽や電源コードを収納可能。

<仕様>
材料: テーブル天板/広葉樹無垢材(ミズメ/トチ※1天板1樹種。写真はミズメ)
サイズ:
・ミズメ曲線テーブル 5,880mm×1,800mm×H730mm
・トチ曲線テーブル 4,900mm×1,700mm×H730mm
仕上げ:不燃塗装仕上げ

11F 窓際カウンター

窓越しにスカイツリーや電車、秋葉原の看板など東京都心らしい風景が楽しめる、これまでなかったポジションの席。働き方に緩急がつけられることを期待して設置しました。製作は、博展が担当。

<仕様>
材料:シラカバ合板
仕上げ:不燃塗装仕上げ

11F 集中ブース

真ん中のテーブルは既存のもので、左窓のカウンターと奥の集中ブースを今回新たに設置。

基本設計段階で社員へのWebヒアリングを行い、集中する場所がほしいことから製作。コロナ禍で圧倒的に増えたオンライン会議にも対応できる仕様です。このブースの製作も博展が担当しました。

<仕様>
材料:白樺合板/吸音マット
仕上げ:不燃塗装仕上げ

Process

社員がオフィスに求めるものは?

JNSグループとWeb会議を行い、オフィスに必要な要素を整理。

当初のJNSグループの要望は、オフィス床の削減、リモートワークに適した空間にしたいというものでした。しかし今後の働き方の予測がつかないなか、いくつかの課題も見えてきます。そこでヒダクマと古市さんの製作チームは各部署の担当者へのヒアリングを実施。すると意外にも多かったのが「チームビルディングや社員同士の交流」「モチベーションが上がり、行きたくなるオフィス」を求める声でした。
機能面の整備と社員間の交流を活性化させる目的を同時に果たせるような空間設計を検討した古市さんは、全体のゾーニングや空間のつながり方を模型で提案。ヒダクマは古市さんの設計図面をすぐに3Dモデル化し、リモートで細かい部分についてもすり合わせを行いました。

「プロジェクトに関わる人たちがイメージを共有し、言語化しやすくするためにも、模型は有効である」と考える古市さん。

10Fフロア全体の図面

11Fフロア全体の図面

シュリザクラRウォールとクリとシラカバの本棚の図面(ヒダクマ門井作成)

柄がシンメトリーになるように材料からどの部分を使うかなど細かく割り付けした図面。門井が確認用に作成した。

広葉樹突板のために原木から調達

スライス用にはクリとホオノキの原木を選定。

ロータリー加工用のシュリサクラ原木。機械に入れるには最低でも直径400mm、長さ2,700mm必要で、原木そのものが真っ直ぐでなければならない。

ヒダクマはハブスペースに設置する什器デザインの要となる突板を、飛騨産の原木から製作することからスタートしました。原木の調達はいつも製材でお世話になっている西野製材所へ依頼。西野さんは原木市場へ足を運び、突板の加工に適した樹種として、シュリザクラを選定してくれました。その断面には赤い線が何重にも入っており、ロータリーで剥いていく層によって表情が変わりそうな、読みきれない面白さが詰まっていました。スライス用には昨年飛騨の黒内地区で伐採されたクリとホオノキを選びました。

ロータリー加工とスライス加工による突板の製作

突板用原木を搬入

片桐銘木工業でのスライス加工の風景

片桐銘木工業に持ち込んだシュリザクラは、国内でも希少なロータリー機で桂剥きします。一見簡単に見えても、繊維が流れているため0.25mmの薄さに剥いても真っ直ぐにはならず、一筋縄ではいきません。そんななか、什器小口でブックマッチと呼ばれるシンメトリーな貼り合わせをしたい箇所があったため、貼り込み向きの変更を、またスライスの突板加工ではパターンに見えないランダムな貼り方をお願いしたヒダクマ。経験豊かな職人たちは、難易度の高い要望にも丁寧に応えてくれました。

挽きたてのシュリザクラ

ロータリーでは生木を使うが、乾燥させると色味が変化する

完成した4×8サイズの突板

左右対称に貼り合わせるブックマッチ

スライス突板のランダム貼りイメージ

田中建築工房にて、製作された什器の骨組み

骨組みに突板を貼っていく作業

小口の収め方を検証

出来上がった突板を用いて、古市さんの設計図に沿って家具を製作してくれたのが飛騨の田中建築。古市さんの設計意図を汲み取り、ヒダクマとすり合わせながら細かなディテールや収まりを考えてくれました。突板自体は0.25mmと薄いため、小口方向はヒダクマで検証し、似たような木目の突板で抑えることに。この効果もあり、一つひとつ存在感のあるマッシブな家具に仕上がっていきます。

多様なボリュームがひとつの空間に集合

4tトラックに目一杯に積み東京へ搬入

設置でも田中建築が飛騨から出張し大活躍

現場でカンナがけする田中さん

今回のプロジェクトでは飛騨産の原木から製作した突板を多用し、小口は木目のつながりを美しく見せるなど、ディテールにも注力しました。色や質感の異なる既存家具とも互いに引き立たせ合える関係性を目指した結果、全体として調和のとれた新しいオフィス空間となりました。

文:石塚 理奈
竣工写真:三嶋 一路

Members

古市 淑乃|Yoshino Furuichi
古市淑乃建築設計事務所 一級建築士
1985年三重県生まれ。名古屋市立大学大学院修了。吉村靖孝建築設計事務所、成瀬・猪熊建築設計事務所を経て、2015年古市淑乃建築設計事務所設立。企業における共創スペースの設計など、運営を含めた幅広い視点から空間を作ることを実践している。2018年より京都造形芸術大学非常勤講師。
www.ysnfric.com

岩岡 孝太郎|Kotaro Iwaoka
ヒダクマ代表取締役社長 / CEO
1984年東京生まれ。千葉大学卒業後、建築設計事務所で勤務。その後、慶應義塾大学大学院(SFC)修士課程修了。2011年、“FabCafe”構想を持って株式会社ロフトワークに入社。2012年、FabCafeをオープン、ディレクターとして企画・運営する。2015年、株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)の立ち上げに参画し、2016年FabCafe Hidaをオープン、2019年より現職。

門井 慈子|Chikako Kadoi
株式会社飛騨の森でクマは踊る
森のクリエイティブディレクター
東京藝術大学 美術研究科先端芸術表現専攻修了。空間デザイン会社にてイベント装飾や店舗内装の空間デザイン・コミュニケーション設計を複数経験。人と森の関係性という、時間軸の長いコミュニケーションやそこに生じるコミュニティ創り・価値創造に心を惹かれ、2020年「クマが喜んで踊り出すくらい豊かな森」を目指すヒダクマに入社。クマと一緒に踊るのが夢。

Member’s Voice

オンライン上でのコミュニケーションがどれだけ発達しようとも、オフラインの価値が無くなることはないと、皆が実感を持って感じ始めているのではないでしょうか。
オフィスには人が必要であり、人を惹きつけ、迎え入れるオフィス空間が必要となります。また、場所に囚われなくなった社員たちの帰属意識を高める上では、オフィスは、企業理念を体感し、共有できる空間であることもさらに重要となっていくと考えています。
既存の既製品家具の間に、またはそれらを覆うようにぽこぽこと出現した大小の広葉樹のヴォリュームは、それぞれが独自の木目と色、質感と形を持ち、フラットなオフィス空間に居心地の良い濃淡を生み出していました。さまざまな場所で自由に働く社員たちが帰ってきたときに一息つけるような、宿木のような存在となってくれることを願っています。

古市 淑乃|Yoshino Furuichi
古市淑乃建築設計事務所 一級建築士

森やそこから流れる川に入ると、根っからの曲がり木や、大岩が必ずあります。
それらは目印になり帰り道を思い出させてくれたり、座って食事を取れる休憩場所となったり、小動物にとっては隠れ家になったりしています。一定の環境でないからこそ、その周辺には多様な植物やら菌類やら動物が共存しています。
今回製作した家具はシンプルである分、その直線の内側にある木目の有機的な生き物感が引き立った表しになっています。また、一つひとつのスケールが大きく、川の流れを動かす岩のように入り口と執務デスクの間にドンドコと佇んでいます。
その時々の居心地の良さを探りながら、さまざまな使い方やコミュニケーションが生まれることを楽しみにしています。

門井 慈子|Chikako Kadoi
株式会社飛騨の森でクマは踊る
森のクリエイティブディレクター

会社概要

JNSホールディングス株式会社
ソリューション・コンテンツ・デバイスの3事業を併せ持つユニークなICT企業として、一つひとつの事業拡大を追求するとともに、これらを総合したシナジーで新たな事業を創出し、来る5G時代に向けて、Iot、AIを核にさらなる進化を目指している。
https://www.jns.inc/

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