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Hida’s walnut cube speaker

木目の美しさ、心を癒す木の香り、なめらかなさわり心地。木と球体が紡ぎ出す音のかたちは耳に優しい。

飛騨の広葉樹の中でも色味と木目の美しいクルミを使ったスピーカー。木が紡ぎ出す音質と球体設計が織りなすハイクオリティサウンド。クルミは飛騨の森から、球体デザインはサウンドクリエイターのYosi Horikawaによって、美しいフォルムは老舗家具メーカーOak Villageの職人の手により実現しました。目から耳から手から心地良さを体験できます。

COLLABORATION

サウンドクリエイターYosi Horikawa

家具メーカーOak Village

サウンドクリエイター Yosi Horikawa x 飛騨の家具メーカー Oak Village

(c) Yosi Horikawa

2011年、スペイン、マドリード。重厚な空気感を感じながらその伝統的建造物に響き渡る鳴りやまない拍手と、打ち続ける心臓の鼓動を感じていた。その感覚を今でも覚えている。

ーこんにちは、FabCafe Hidaのあっこです。ここではYosi Horikawaとの出会いと、彼と飛騨の家具メーカーとのコラボレーションで生まれた広葉樹のスピーカーができるまでのお話をします。

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Yosi Horikawaは、楽音を出来る限り使わず日常にある音や環境音を録音し、それを組み立てる楽曲作りを行うサウンドクリエイター。キャリアとして元々は建築分野で、音響の設計をしながら音楽は趣味で作っていたが、MySpaceで自分の作品を共有したところ、1週間でフランスノレーベル”Eklektic Records”からリリースの声がかかったことから音楽キャリアがスタート。音に対する興味は音楽を取り巻く環境への興味からスタートしたという。Soundscape、音の風景、日常に溢れている音を使って空間をデザインする。「音楽は空間を支配する。ひとたび流れ出せば拒絶できない。建築だけでは作り得ない空間さえも作ってしまう」という。自然の音を集音する時には素材感を大切にしているという。Yosi Horikawaにとって音楽を作るということは、自分の追体験をリスナーにしてもらうことだという。自分の取り巻く環境そのものをつくり、それを通じて人の想像を掻き立てたいと話す。

(c) Red Bull Music Academy

世界中の何千もの応募から何百倍という狭き門をくぐり抜け、たった60名の才能のひとりとして2011年マドリードで行われたひと月におよぶ世界を旅する音楽学校、Red Bull Music Academy (以下RBMA) の生徒として選ばれたYosi Horikawa。日々、世界中の著名な音楽家から講義を受け、スタジオに篭り選ばれた若いタレントたちとクリエイティビティを刺激し合い音を紡ぎ出す。夜には街中のあらゆる場所で行われるイベントのステージに立ちその成果を披露する。才能の宝庫であるこの学校で一際その才能を光らせていたのがYosi Horikawaだった。

 

(c) Red Bull Music Academy

Yosi HorikawaのRBMA Madridにて同じく参加者のDorian Conceptと制作する様子。Yosi Horikawaコメントメディア記事参照

RBMA最終日にはひとりひとりがクリエイションの成果を発表するが、Yosi Horikawaのパフォーマンスには会場総立ちのリアクション。この時私は、「こんな才能が日本にもいたんだ」と感動すると同時に熱く燃えるエネルギーを自分の中に感じていた。「この才能を世界に広げたい!Yosi Horikawaの持つクリエイティビティがここにいるような世界にまだ花開かせていない多くの才能と反応し合ったらもっとたくさんのワクワクする音楽が生まれるのではないか?国境を超えてジャンルを超えて、そして音楽という枠を超えて。」

マドリードのRBMAの後、彼には世界中のフェスティバルからたくさんのオファーが届いた。しかしそれは遠い海の向こうで起こっていること。海外と違いすぎる音楽文化を持つ日本では彼の名前を知る人はアンダーグランドの世界でも稀有という現実があった。しかし、多くの世界的フェスでパフォーマンスをする毎に、その圧倒的な個性により、彼の名前はじわじわと逆輸入的に日本でも知られるようになっていった。建築のバックグラウンドを持ち空間のサウンド設計をするYosi Horikawaは立体的な音を創り出す。それは、音楽業界のピアーたちにも衝撃を与えていた。レッドブルの主催により、屋久島でサウンドレコーディングをする彼の様子をドキュメンタリーにし、デザインの祭典 Any Tokyoで公開披露したり、建築家の隈研吾氏に声を掛けられ、光州デザインビエンナーレにおいて隈氏のインスタレーションのサウンドデザインを担当、最近では隈研吾建築都市設計事務所との協働で石川県小松市の小松精練の建築、fa-boの展示室のサウンドデザインを担当したり、日本科学未来館におけるiPS細胞関連の常設展示でのサウンド全般を担当するなどアートや建築の世界でも名前が知られるようになっていった。

屋久島の森で集音する様子
(c) Red Bull Music Academy

Taico Club 2015のRed Bull Music Academyステージでのパフォーマンスの様子
(c) Red Bull Music Academy

Yosi Horikawaの才能は今後も進化し続けるし、それは音楽の枠だけに収まらない根源的なものだ。

私自身はレッドブルを辞め、飛騨という地に移住をしたが、ヒダクマが世界とつながる可能性をおおいに持っているし、実験を繰り返して創造をしていくハブだからこそ、それを体現しているYosi Horikawaという才能がぴったりだと思った。飛騨の森でクマがYosi Horikawaの音で踊るというのも面白い。

”ヒダクマ秋祭り2015”というフェスティバルを機会に、飛騨の森で音を採集しライブパフォーマンスをしてほしいと声をかけた。

わたしは飛騨に移ってからというもの、木と音の関係性をよく考えるようになっていた。というのも、東京に住んでいた頃、あるカフェを訪問し素晴らしい音体験をしたのだ。そのカフェは全フロアーが美しい桐でできていた。タンノイというスピーカーから流れる音がなんとも居心地がよく、とても贅沢な気分を味わえたのだ。それはその桐のフロアーとの相性ではないのか?東京にできたレッドブルスタジオも隈研吾建築事務所の設計で、ふんだんに木使いをしているおかげで最高の音環境を創り出していた。

そういうわけで、飛騨の広葉樹をつかって音と木の深い関係性を探ってみたいと思っていた私は、時間的制約の中、「広葉樹を使ってスピーカーをつくり、樹種でどう違うか聴き比べをしてみないか」と駄目元で相談をしてみたところ、即座に「やりましょう!」のひと声。そもそも彼もその発想を持っていたようだ。なぜならYosi Horikawaは、自分が創った音を人々の耳に届ける最後のアウトプットまで自分でケアしたいという思いから、音を届ける重要な媒介であるスピーカーも自ら創りだしていた。あのGilles Petersonもそのクオリティを知ったあとすぐに欲しいと反応したそうだ。

今回のスピーカーのアイデアの元になったのは、木が音に与える影響について深く知りたいという好奇心から。広葉樹は何十万種類存在するというけれど、種類が違えばつくり出す音も違うのだろうか?

Yosi Horikawaの楽器やスピーカーづくりを通しての木や音に対する知見から、「音の違いをはっきりと認識しやすくするために、最も硬い材と最も柔らかい材で較べてみよう。」ということになった。

はじめはデジタルファブリケーションを利用してYosi Horikawa 自らが加工もする方向性で検討したが、ヒダクマが現在所有しているレーザーカッターではスピーカーに適切な厚みである15mmの材は加工できない。そのため、CNCやNCルーターを持つパートナー探しに奔走することになり、複数の可能性を探ったわけだが、なかなか前向きな返事をいただけず、時だけが刻一刻と過ぎていった。

そんな中、年に1回行われる飛騨の家具メーカーによる家具の祭典、飛騨家具フェスティバルを訪問した際、40年以上の歴史を持つ家具メーカー Oak Villageの取締役副社長 佐々木一弘氏と出会った。木についてだけでなく音響についての深い知識も有する佐々木さんであれば可能性があるかもしれないとご相談をしたところ、時間的予算的制限にも関わらず、即座に前向きなお返事をいただいた。その行動力と調整の早さで、Yosiさんのデザイン案や要望を短期間で実現してくれることになるのだ。

硬くて重く、良い音を出す材としてケヤキが良いという佐々木さんのアドバイスを受け、硬い木としてはケヤキを、そして比較用として柔らかいクルミ材を、日本でも有数の広葉樹扱い量を有する西野製材所で購入することにした。

クルミ材

ケヤキ材

クルミとケヤキの一枚板をOak Villageに送り、ひと月を切る短期間で(通常なら最低でも3ヶ月は必要なのだ)、熟練した職人の手により、たくさんの工程を経て、Yosi Horikawaのデザインどおりの美しい球体型をしたスピーカーとして完成した。そのプロセスは以下写真とキャプションにてご覧いただきたい。

左 クルミ材、右 ケヤキ材

墨付けの様子

加工中

プレス中

ルータービットという刃物

NCルーターでプログラムどおりに削る

木の塊を削る

削る削る

削り上がった様子。手前がクルミ、奥がケヤキ

球体の表面と内側の様子

バンドソーで切り抜く

旋盤を使い表面を均す

定規でアールを測りながら均す

球体になりかけの様子

ボウルガウジで削る様子

ペーパー磨きの様子

クルミの磨き後

かんなで削る

手で確かめる
(c) Oak Village

美しい球体ができあがりました(クルミ材)。クルミの木目と色はとても美しくインテリアに最適。

完成。左がケヤキ、右がクルミ

そして、Yosi Horikawaの緻密なサウンドデザインにより音の精度を上げ、パーフェクトなスピーカーとして完成した。

2015年12月5日、200人ほどの来場者を迎えたロフトワークのクリスマスパーティーにて、この2種類のスピーカーの音の聴き比べセッションと、Yosi Horiawaが過去に飛騨の森で採集しミックスしてつくった音楽ライブパフォーマンスを行ったところ、「このスピーカー欲しい」という声多数で、想像以上の反応をいただけたお披露目となった。

当日披露した飛騨の森の音はこちらから https://soundcloud.com/yosi-horikawa/wandering

今回のスピーカーは、信じられないほど短い期間で、通常ラインの調整をし熟練の技を持つ職人さんを指名し、丁寧に仕上げていただいたOak Villageさんのご協力、そして、深い知識の下最適な木材を調整してくださった西野製材さん、そもそものYosi Horikawaの斬新なアイデアとデザイン、音設計能力がなければ実現できなかったこと。

刻一刻と期限が迫る中、常にヒヤヒヤしながらもワクワクとした工程。焦りの中にもあったそのワクワク感が、完成までの駆動力になったに違いない。ひとつの作品の完成イメージを想像しながら、そこに向かうひとりひとりのエネルギーが違いに伝播し合いながら周りを巻き込み、そしてその思いが集積し、ひとつの素敵な作品として産み出されたのだ。

ーヒダクマは、今後もまだまだ広がる飛騨の広葉樹活用の可能性を探り様々なクリエイターや伝統の技術を有する職人との掛け合わせで、実験を繰り返していきます。

最後にYosi Horikawaからのコメントを!
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「飛騨の木材を使って音に関する何か面白いものを作りませんか」
と連絡を頂いたのが2015年の6月末でした。
お話を頂いて直ぐに思いついたのはスピーカーでした。
自分は音楽を作りますが、最近はその再生装置まで極力責任を持ちたいとの思いで
個人的にスピーカーを作るようになっていましたが、この機会に何か特別なものが
作れたら、との思いがすぐに湧いて来ました。
しかも、お題が「普段材木としては使いにくい広葉樹」とありましたので
ますます、いわゆる大量生産されるようなプロダクトとはひと味違う、
飛騨という土地に根付いた一点もの、しかも凝ったもの、
というようなイメージが湧きました。

そこで具体的に考えたのが球体スピーカーでした。
球体は内部で平行面が発生しない為に吸音材が最小限で済む点や外部の音の広がりなど、
スピーカーにとって形状として理想に近く、さらに接着も少なくて済む点など、
今回の木材を活かすというテーマにはぴったりでした。
ただ、自分の手で自分の持っている機材のみで球体を削り出すというのはどうしても不可能で
これまでも実現出来なかったアイディアでした。

これまで実現出来なかったそして凄く憧れていた球体のスピーカーを具現化させて下さったのは
Oak Villageさんでした。
特にOak Villageの佐々木さんはオーディオの世界にも精通された方で、
過去にオーディオメーカーとのコラボレーションでイヤホンの筐体を木材で製作されたこともあり、
木材と音の関係に非常に詳しい方でした。
佐々木さんとの打ち合わせの後、材種も決まり、良い材も飛騨で用意して貰えることも解り、
製作についてもNCルーターを使用した完璧な精度、さらに職人さんの手作業による仕上げ、など
僕にとっては、全てが完璧でした。

スピーカーの筐体が届き、梱包されていた箱を開けた時の感動は今でも覚えています。
ここから後は僕の音響調整作業でしたが、調整をすればするほどはっきりと音の違いとなって
反応して来る、その素性の良さにはさらに感動させられました。

今回、いろいろな方のサポートがあってこそ実現出来たもの作りでしたが、
最初に掲げた理想から、ほとんど内容を変更せずに実現まで漕ぎ着けられましたが、
その道のりは決して平坦ではなかったことと思います。

Yosi Horikawaプロフィール

環境音や日常音などを録音・編集し楽曲を構築するサウンド・クリエイター。2009年にフランス Eklektik Records からEP “Touch” でデビュー。2011年 Red Bull Music Academy、2012年にSónar Barcelona に参加。同年6月、EP”Wandering”をリリース、Time Out Tokyo誌においてその年のベストアルバムに選出される。2013年6月、初アルバム『Vapor』をイギリスFirst Word Records よりリリース、世界ツアーを行う。Dimensions や Tauron Nowa Musyka 等の大型フェスティバルや Boiler Room を含む12ヵ国19都市での演奏を行う。音楽誌「XLR8R」の2013年注目すべきアーティストに選ばれるなど世界から注目を浴びる。The Japan Times 誌や様々な媒体においてアルバム『Vapor』が Best album of 2013 に選出される。2014年にはLAの LOW END THEORY、MUTEK、そして世界最大級のフェスティバル Glastonbury festival に参加。また自身の音楽制作過程を追ったドキュメンタリームービー”Layered Memories”が完成。2015年にはGilles Petersonの主宰するフェスティバルWorldwide Festivalに参加。その他、FM J-WAVEでの番組”Gratitude”のテーマ曲制作やデザインイベントANY TOKYOでのサウンドデザイン、また光州デザインビエンナーレにおいて建築家隈研吾の作品でのサウンドデザイン、CM音楽、また日本科学未来館における iPS細胞関連の常設展示でのサウンド全般を担当。最近では隈研吾建築都市設計事務所との協働で、石川県小松市の小松精練の建築、fa-boの展示室のサ ウンドデザインを担当するなど、多方面で活動中。