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  • 木の商品開発
腕利きの職人さんに製作を断られたイス。FabCafeのマシンを駆使して不可能と言われた加工に挑む。

こんにちは、ヒダクマ 蔵長の浅岡です。
ヒダクマでは、建築家やデザイナー向けに家具や什器の製作や試作を承っています。中でも、実際に飛騨に来てFabCafeに滞在し、自らの手を動かしながら家具を作る、そんなユニークな事例もあります。

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今回ご紹介するのは、建築家・桑原茂さんと一緒に製作した「SLANT -頼り合って支えるスツール-」。多様な広葉樹が生息する飛騨の森で、それぞれの樹木がお互い支え合って森を作っているというんだという、ストーリーが込められています。FabCafeのデジタルファブリケーションマシンと、木工機械を駆使して作られたこのスツール。その裏側を赤裸々にご紹介します。

まずは桑原さんのプロフィールから。

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桑原 茂・くわはら しげる

一級建築士:第312653号
明治大学兼任講師・東京都市大学非常勤講師
1971 東京生まれ
1994 東京都市大学工学部 建築学科卒業
1996 南カリフォルニア建築大学大学院
1997 コロンビア大学大学院建築都市修景学部 卒業
1997-98 Greg Lynn Form(米国)
1998-00 SHoP(米国)
2005 一級建築士事務所 桑原茂建築設計事務所 設立

「広葉樹のまちづくりシンポジウム」で、ヒダクマと建築家たちがコラボレーションした家具を発表。

 

2017年4月、飛騨市が主催するシンポジウムで、ヒダクマは小径広葉樹木を活用したユニークな家具を発表しました。4組の建築家・デザイナーを飛騨に招いて家具をデザインしてもらい、それぞれ異なる飛騨の職人に製作を依頼しました。

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桑原さんがデザインしたものは、3種類の木が斜めに折り曲がったようなスタッキング・スツール。脚が斜めに折れ曲がることで、一定方向の荷重に強くなります。3本の脚が斜めに支え合うことで、さらに強い強度が出せるというこのスツール。
ところが、他のデザイナー達の制作物が順調にするんでいる中、このスツールだけは最後まで作り手が決まりませんでした。

  • 三次元的な斜めカットが非常に難しい。
  • 複雑な治具づくりが必要で、時間がかかりすぎて割に合わない。
  • 製作に1週間はかかる
  • 強度が出せるかわからないので、試作や試験をする期間がもっと必要。

などの理由で、腕のある職人さんに製作を断られてしまいました。気がついたらシンポジウムは3日後…。しかも製作に1週間かかるというのなら、なんという絶望的状況なのでしょうか・・・。

建築家自らが飛騨に来て製作

逆境の中、最終的に桑原さん自身がFabCafeの工房でこの家具を一緒につくることを決意。ところが製作当日、桑原さんから電話が。

「風邪引いちゃいました・・・。」

本人曰く、遠足の前日に風邪を引く小学生みたく、興奮して眠れなくて風邪を引いてしまったとのこと。。1日のアディショナルタイム(?)を経て、次の日には回復して作業開始。

複雑な斜めカットをする為の治具を、レーザーカッターで作る。

「治具(じぐ)」とは、何かを作る上でその補助となる道具のこと。例えば、テーブルソーは本来木を真っ直ぐにカットするようにしか設計されていません。つまり斜めにカットすることはできないのです。ところが、斜めにカットできる定規を作ってテーブルソーに装着すれば、ここで初めて斜めカットが可能となるのです。

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職人さんから製作を断られた最大の理由は、この治具づくりがとても難しいということ。この三次元的な斜めカットをする為の治具をつくるのに、相当な時間がかかるだろうとのことでした。
桑原さんはもともとデザインを3Dデータに起こしていました。そこで、描いた図面の線を利用して、レーザーカット用のデータに変換。ベニアをレーザーでカットすることで、あっという間に治具が出来上がりました。

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レーザーカッターでつくった斜めカット用治具。数5種類以上にも及ぶ斜めカットが必要だったわけです。なるほど、これをいちいち手で作ろうと思ったら大変ですよね。ここで職人さんに断られた理由が分かりました。。

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このように定規に当てて使うことで、正確な斜めカットが可能となります。

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カットをしたら後は組み立てるだけ。組立もやや手こずりましたが、無事に完成!(この時、すでにシンポジウムまで後8時間。)

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木目がちゃんと繋がりました。(ホッ)これで折れ曲がっているよな繋がりが生まれます。

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様々な角度の絶妙な繋がり。

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異なる3樹種のコントラスト。

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スタッキングもできちゃいます!


職人さんに懸念されたように、一見強度的に危なそうな気がしますが、座ってみるとまったくその心配はありません。斜めに伸びた脚が互いに寄り添って支えるという構造をとっている為、どの方向からの耐荷重にも強いのです。コンセプトがそのまま構造として活かされています。

デジタルファブリケーションで変わる、ものづくりの新たな可能性。

 

桑原さんは、早くからものづくりにデジタルのエッセンスを取り入れていた先駆者です。このスツールも、3Dモデリングソフトのライノセラスの機能を活用してデザインされました。
折り紙のように折れた美しい脚は、3Dをやっている人でないと思いつかない造形といえます。そんな桑原さんのデザイン、デジタルマシンと木工機械を両方備えているヒダクマととても相性が良く、結果的に1週間かかると言われたことを2日で実現させることができました。

テクノロジーを駆使したデジタルファブリケーションと、伝統的でフィジカルな手仕事。それぞれに良いところもあれば悪いところもある。しかし、そんなデジタルとアナログを行き来し、それぞれの良さを引き出すことで、今までにはなかった新しいアイデアや、困難だった加工ができるようになる。ものづくりの形が変わろうとしている今、私達が作ったこの「飛騨の広葉樹が支え合うスツール」は、その好事例となったのではないでしょうか。そんな手応えを感じた2日間でした。

広葉樹のまちづくりシンポジウム。その他、ヒダクマがデザイナーと発表したものはコチラ。

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KINOKO / ツバメアーキテクツ /  製作:HIDA COLLECTION


一升瓶サイドテーブル / 鈴木工藝社 /  製作:ヒダクマ

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まぜまぜ広葉樹将棋 / Idea Scketch  / 製作:飛騨職人生活

 

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なんと桑原さんのスツールはメディアに紹介もされました。

 

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2日間に及ぶ製作で生まれた絆、「チーム浅原」。(シメはやっぱり高山ラーメンですよね。)
製作前は緊張して眠れなかったという桑原さん。今度は完成した興奮で眠れなかったそうです。睡眠不足のまま、飛騨を後にします。(ちなみに私はがっつり爆睡)

なお、このスツールはまだ完成ではありません。実際に作ってみてることで初めて分かったことや知識、使用者のレビューなど。たくさんのフィードバックを反映して、さらにブラッシュアップしたスツールを製作・商品化予定です。乞うご期待ください!

 

建築家やデザイナーの方(もちろんそうでない方も)、桑原さんのように飛騨に滞在して、私達と一緒に家具つくってみませんか?
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