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「地元の方々と外国人観光客の間でのコミュニケーションを生み出したい」- Smart Craft Studio Hida 2016 チーム 5 レポート

Smart Craft Studio Hida 2016に参加したチーム4のプロトタイピングをつくるまでのプロセス、葛藤、成果について、ティーチングアシスタントをしていた佐野和哉(さのかずや)さんからのレポートです。

This is a report by Kazuya Sano, a teaching assistant for Team 5 for the Smart Craft Studio Hida 2016. Here, He talks about the process, issues and outcome during the camp.

 


私はTeam 5のTA、およびメンバーとして、今回のSmart Craft Studioに参加しました。チームのメンバーは、University of Tronto(UT)から3人、台湾の国立交通大学(NCTU)から1人と私の5人でした。私以外の4人は建築を専攻しており、私はデジタルファブリケーションを専攻しています。

 

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開始から数日後に、FabCafe TaipeiのTimからこのStudioについてのプレゼンテーション、そして教員の方々からそれぞれ取り組んでいることに関するプレゼンテーションがありました。最後にプレゼンテーションしたKyleから、アイデアを生むためのディスカッションの手法として、それぞれの興味がある領域について模造紙に書き出し、それぞれの関係性や共通点を探る方法をご紹介頂きました。

 

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それに沿ってチームメンバーで実際にやってみると、それぞれが普段気にかけていることから、今回のStudioで学んだことで興味をもったことまで、お互いかなり異なった興味を持っていることがわかりました。例えば、コンテキストを突き詰めたアートが好き、脆さを持った建築物が好き、アニメや近未来な物語が好き、曲げ木の技術がすごいと思った、など…。その中から見いだせる共通点を探っていきましたが、なかなか全員が腑に落ちる共通点を見出すことは難しく、あまり議論が進みませんでした。

その後、教員の方々のアドバイスを元に、自分たちが日頃課題に感じているものや、こんなものを作りたい、といったアイデアを出し合いました。その中で出てきたのは「地元の方々と外国人観光客の間でのコミュニケーションを生み出したい」というもの。飛騨古川のまちの中で、言葉の通じない人同士がどうすればコミュニケーションを取ることができるのか、そのきっかけを作ることができるのかについて議論を重ねました。

 

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ここでも教員のVivianとの雑談で「そういえば、夜に明かりの少ないところで、(古川にときどきある)蓋がない側溝に落ちそうになった」という話をきっかけに、「側溝のスペースを、コミュニケーションのために有効活用できるのではないか?」というアイデアが生まれます。

 

その中で、まちの歴史に詳しい観光協会の鮎飛さんにお話をお伺いする機会がありました。鮎飛さんによると、古川のまちを流れる側溝の水は、400年ほどまえに生活や農業のために整備された、まちの中を流れる人口の川「瀬戸川」から出たり入ったりして、まちの中を巡っているのだそう。かつては住民たちが側溝の水で洗濯をしたり、米を洗ったりさえしていたそうで驚きました。いまでも側溝から水を汲み上げ、家の前の花壇に水をやったり、道路に撒いたりしている人を滞在中にも見かけました。海外の側溝は蓋を開けるのもはばかられるほど汚いものが当たり前だそうで、海外の教員の方々や学生たちは特に驚いていました。

 

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また、まちを歩く中で、古川のまちにあまり座って休憩するスペースがないことにも気づき、側溝に置くことのできるような椅子をつくることを考えました。そして夜暗くなり、側溝が分かりにくい場所も多いことから、LEDをつけて夜に人が近寄ると光るようにすることを考えました。そしてどうせ光るなら、その電力は何らかの方法で賄えないだろうか、という発想から、下に流れる側溝の水流を使った水力発電を試みることにしました。

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一度椅子のプロトタイプをつくり、その見栄えを試してみました。夜の間光る椅子はかなり見栄えがよく、試しに白い紙で覆ってみるとランタンのようにも見えました。しかしこれが単体で置いてあってもちょっと座りにくい…ということで、椅子の横にテーブルも作ることにしました。そしてどうせ作るなら、ということで、組木を利用して制作しました。水力発電は市販の手回し発電機を改造し、3Dプリンターとレーザーカッターを使って制作しました。

 

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最終的に、側溝にぴったりはまるサイズの組木で構成された、近づくと光るテーブルと椅子、そしてほんの少しだけ電気を生み出す水力発電を制作することができました。組木によるデザインはシンプルながら思った以上に美しく、上品に仕上がりました。側溝に置いてみると、歴史ある町並みの中でも違和感のないかたちで、暗いところで光る姿もうるさすぎず、夜は側溝の水面に反射する明かりも楽しめる、素敵なテーブルと椅子になりました。

もし可能であれば、もうひとつ同じ椅子をつくり、すべての電力を水力発電で賄うことができれば良かったなと思います。また構想として、もう何セットか別のテーブル・椅子が通りの何箇所かにあり、1つの椅子に座ると通りにある別のテーブル・椅子が連動して光り、それによって体験者の移動やコミュニケーションを引き起こす、というアイデアもありました。

 

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チーム5人、議論が煮詰まることも多くありながら、アイデアを出し合い、議論し、制作し、最後にチームとしてひとつの形にまとめることができました。建築がバックグラウンドの人が多かったからか、ソフトウェアやデジタルファブリケーションでよく用いられる「ラピッドプロトタイピング」のような方法、言わば「作りながら・作ってから考える」という方法に慣れていない人が多かったため、実際に作り始めるまでは時間がかかりましたが、メンバーそれぞれができることを協力して進めていくことで、最終的にいい作品を作ることができました。とても良いチームだったと思います。

 

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Smart Craft Studioは、普段学校で学んでいるだけでは出会えない海外の学生と多く出会うことができ、そしてめったにすることのない英語でのディスカッションやプレゼンテーションの機会を得ることができました。とても大変でしたが、実際にやってみると日本語でのディスカッションと共通する部分は多くあり、また海外の学生が考えていることも、思っていたほど日本の学生と大きく違うわけではない、ということも実感することができました。きっと日本語でこの制作を行っていたとしても、同じくらい難しかっただろうと感じました。また海外の同世代の学生と毎晩のように酒を酌み交わす機会も、同じくらい滅多に得られない重要な機会だったと感じています。これまで私にとって海外の学生というのは、全く得体の知れない、違う世界の存在でしたが、海外の学生も自分たちと同じように悩み、そして楽しみながら暮らしているということを知ることができたのは、私にの今後にとって非常に大きな糧になるものだろうと確信しています。
このような貴重な体験ができる機会を頂き、本当にありがとうございました。Smart Craft Studio運営に携わった教員の皆様、ロフトワークの皆様、ヒダクマ・FabCafe Hidaの皆様、飛騨の皆様、講義をしてくださった先生方、一緒に頑張った学生・TAのみなさま、そして関係するすべての方々にお礼申し上げます。