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「日本独自の「場」の作り方とは!?」- Smart Craft Studio Hida 2016 チーム 3 レポート

Smart Craft Studio Hida 2016に参加したチームのプロトタイピングをつくるまでのプロセス、葛藤、成果について、ティーチングアシスタントをしていた大庭広明(オオバヒロアキ)さんからのレポートです。

This is a report by Hiroaki Oba, a teaching assistant for Team 3 for the Smart Craft Studio Hida 2016. Here, He talks about the process, issues and outcome during the camp.

 


0,はじめに

こんにちは、大庭と申します。
このたびSmart Craft Studio 2016に参加し、いろいろな貴重な体験をしてきました。

僕はデザインとデジタルファブリケーションについて学んでいますが、この世界各地からいろいろな大学の方があつまるこの機会に、他の大学の学生とくらべて、自分がやっていることはどの程度のものなのか、どうしても確かめたくて参加しました。
今回は僕が一緒に過ごした自分のチームのプロジェクトを紹介します。

1,コンセプト決定とリサーチ

僕が所属したTeam3は、僕を入れて5人のメンバーで、みんな大学はバラバラ、専門分野もバラバラです。だから最初のチームミーティングでは、お互いの自己紹介だけではなく、一番直前に行ったプロジェクトの成果の共有をしました。興味だけでなく、実際に行ってきた活動をお互い見れたことは、このあとのチーム活動には大きなプラスでした。

事実、僕らの興味は大きく2つ、「空間」と「インタラクション」に絞りこまれました。そこで、この飛騨に新しい「インスタレーション」をつくり上げることをひとまずの方向性としました。そのうえで着目したのは、日本独自の「場」の作り方でした。特に「日本庭園」には強い関心を抱きました。

日本には古来から多くの庭園がありますが、そのしつらえは日本独特のもので、共通点も多いです。自然豊かで、木造の建物に溶け込むそういった空間づくりは、今回の飛騨の古民家を舞台にしたプロジェクトによく合っていました。

(京都の龍安寺など)
https://www.google.co.jp/search?q=%E9%BE%8D%E5%AE%89%E5%AF%BA&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwj_oMq-pMPNAhWELpQKHUBlCskQ_AUICSgC&biw=1038&bih=738

そこで「鹿威し」や「飛び石」や「枯山水」など、多くの庭に見られるような事柄を調べつくしました。(同時に僕は「わびさび」や「間」など、日本語でも難しいような言葉を英語で説明することにとても苦労しました。。)

そしてそんな話をした次の日にはプロトタイプを作ってくるBrandon。

 

彼は日本の文化や建築物が大好きで、その行動力が、チームを最後まで引っ張ってくれました。
同時に、レーザーカッターなど、想いをすぐ形にできるツールが揃っているのはFabCafeHidaの大きな強みでした。この期間中、機材で困ることはなかったです。
さて、おおまかな目星は立てたものの、そこからどんな庭を作ったらよいのか?
そんな庭に、どのようなインタラクションがあったらよいのか?

次はその部分を考えていきます。
たとえば、音を組み合わせるのはどうでしょう。「鹿威し」は、竹の奏でる音が特徴的です。木でも同じようなことが出来ないかと考えました。
日本では有名なCMのひとつである「森の木琴」(https://www.youtube.com/watch?v=CW9LTtn32K8)
僕が参考として挙げたのですが、チームみんなが「ああ知ってる!」と口を揃えて言っていたのには驚きました。

インスタレーション作品についても多く調べあげ、特に面白さを感じたのはCornelia Parkerさん
https://www.google.co.jp/search?q=Cornelia+Parker&biw=1038&bih=738&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwj67OfbpcPNAhWIUZQKHdQjDI0Q_AUIBigB

Jacob Hashimotoさん

ZImounさん
http://www.zimoun.net/

など、大量のモジュールを用いたものでした。
そこで、僕らも、大量の木の棒を吊し上げた庭を作ったらどうだろう、と盛り上がります。ひとつひとつに組み木のための溝が掘ってあり、 伝統的な木工技術と庭という空間の調和を図ります。
僕らが普段見る多くの組み木によって作られたものたちは既に「組み上がった」ものなのですが、そこで組み上げる前の「彫り」の部分を見せることに面白みを感じました。

そんな話をした日の夜にこれまた即席のCGを作るBrandon。(本当に見習いたいです。)

 

2,アイデアディベロップメント

なんとなくの方向性が決まった僕らは、実制作に向けた細い調整に入ります。
さっそく飛騨産業さんから、いらなくなった木材を大量に引き取ってきて、いろいろな木材や形の検討をしました。

そして、そんな中でも、注目したのが「桟木」でした。
普段は木を乾燥させるために木と木の間に挟むために使われるものですが、これらはだいたいが経年変化によって、非常に重々しさを感じるいい色合いになっています。これが今回作ろうとしているもののコンセプトや古民家というサイトとよく合うのではないかという話になりました。

(木と木の間に挟まっているのが「桟木」)

そこで田中建築の田中さんにお願いをして、大量に桟木をいただきました(ありがとうございました)。

(プログラムのひとつで行った田中建築の見学は非常に刺激的でした!)

同時に、僕らは「生け花」の文化に大きな影響を受けました。特に「一輪挿し」のスタイルは、僕らが作っているインスタレーションにうまく入れ込むことが出来るのではないかと。
https://www.google.co.jp/search?q=%E4%B8%80%E8%BC%AA%E6%8C%BF%E3%81%97&espv=2&biw=1436&bih=738&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwja442FtsPNAhUGk5QKHVMSAkUQ_AUIBigB

そこで、嬉しいことに、FabCafeHidaの森口さんのご厚意で、茶道と生け花の教室が開かれることに。初めての体験には、みんな興味津々でした。

本格的に身につけたところで、僕らはあらためてモジュールの形を考えます。
そこで、組み木の彫りの部分に、ピッタリとハマる3Dプリントパーツを作り、そこに同時に生花を差し、さらにはそこにLEDを仕込んで、それが光ることで花が綺麗に照らされるモジュールを考えました。

古い木材に、3Dプリントされたパーツを付けることで、これまでなかった新しい無かった見方をしてもらうことを狙います。また組み木の部分をワイヤフレーム状にすることで、それが作られる際の手順をわかりやすく開示できると考えています。

それをFabCafeHidaの中にたくさん吊るし、人間の行為に応じて、それらが段階的に光っていく、そんなインスタレーションを作ることになりました。

 

3,実制作

具体的な要件が決まって、あとは制作を進めていくだけです。Billyは、組み木の部分をひたすら彫ってくれました。圧倒的なクオリティにただただ感動でした。

Brandonは、3Dプリントのジョイントの部分を作ってくれました。最終的に3Dプリンタでは間に合わず、大多数はレーザーカッターでの制作となりましたが、臨機応変に無事作り上げてくれました。

 

Stella,Modiと僕が担当したのはエンジニアリング全般で、具体的にはLEDとそれを光らせるトリガーとなるセンサや通信を整えることでした。

課題となったのは、接触を認知する仕組みが甘いことでした。木の棒に触れた瞬間を静電容量の変化で測っていましたが、今回は非常に長いワイヤーを取り付けるため、途中のハンダ付けやワイヤーが曲がる部分、ワイヤー同士の接触など様々な要因が混ざり合って、センシングの安定化を妨げていました。通電トラブルによるハンダ付けのやり直し、ワイヤーの整理など多くの工夫を施しました。
また、大量のLEDの制御にも多くの時間を要しました。ひとつひとつのLEDをON/OFFのみではなく、段階的に明るくしていくために、配線やコードは最後まで試行錯誤でした。周りの方にも言われましたが、「吊り物」と「大量のモジュール」には今後注意したいです。

最後に作り上げた木の棒と大量の配線を、吊り下げていきます。

そうして出来たのが”ikebana chandelier”です。

木の棒のうちの1本に触ると、触った棒と、その周りの棒が次々と光り出し、一本一本の花がそれはそれは綺麗に輝きだします。

そして、この棒たちは、ひとりでは全てを輝かせることが出来ません。2人や3人で触ると、さらに多くの棒が輝きだします。

カフェに訪れてきてくれた家族や友達同士で、自然とコミュニケーションが生まれるような環境になればと思っています。

(真下から眺める景色は壮観です!)

 

4,振り返って

こうして僕らのプロジェクトは無事に終わりました。いま振り返ると、チームの中での適度な緊張感や協力関係があったことや、発想からプロトタイピングの速さなどが、僕らがこの大きなインスタレーションを完成させる大きな鍵になったと思います。

飛騨で学んだことをうまく活用し、日本の文化を取り込んで作品をつくることが出来たのは、チーム全員にとって大きな経験になりました。多くを教えてくださった先生方にも感謝です。

僕自身このワークを通して、うまいグループでのプロジェクトの進め方や技術面での多くの気付きを得るだけでなく、なによりものづくりの楽しさを改めて思い出すいいきっかけになりました。
忘れかけていた想いを胸に、またイチから頑張ろうと思います。

最後に僕たちのチームが作ったビデオをご覧ください。

Installation