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飛騨の木を使ったものづくりを考えるワークショップ Vol.3『スピーカーって何?音の原理を知ろう』

スピーカーの原型づくり

2月6日(土)、飛騨の木を使ったものづくりを考えるワークショップ シリーズ 第3弾、『スピーカーって何?音の原理を知ろう』を開催しました。ゲストに、岐阜県大垣にある情報科学芸術大学院大学(IAMAS)で音響学とインタラクションデザインを専門とする城一裕さんを迎え、講義とデモと体験を行いました。

日常的に接することの多い音や音楽ですが、聴く環境によってもサウンドシステムによっても心境によっても変わってきますよね。スピーカーに関していえば、構成している素材やかたち、構造など色々な外部環境や条件によって変わります。

では、そもそもスピーカーってなんなのか?そんな疑問から今回のワークショップはスタートしました。
まずはスピーカーの構造原理を知ることからスタートです。「一般的なスピーカーには真ん中にユニットといわれるものがあって,その周りをエンクロージャという箱で取り囲むという仕組みになっています。そのユニットを細かく見てみると、音が出るところはコーンと、その下(裏)にある磁石とコイルとに分けることが出来ます。アンプ(要は拡声器のようなもの)から入ってくる音声信号(電気)がコイルに流れると磁界の変化(N極とS極とが入れ替わる)が生まれて、その変化で磁石が振動して、その振動がコーンで増幅されて音として聴こえるというのがスピーカーの原理。」シンプルです。

 

次に音=空気の振動数=周波数の話に。人間の感知する領域は20Hzから20,000Hzまでで、人間の声は大体100〜4,000Hzくらいと言われています。ベースやドラムなどの低い音は20−100Hz。これはベースアンプやサブウーハーなどで補わないと感知しづらい音の領域です。ちなみにピアノやギターなどの楽器のチューニングをする場合,ドレミファソラシドのラ音を440Hzに合わせたりします。これは弦が一秒間に440回振動するということで、1オクターブ高くなると倍の880Hz、低くなると220Hzなのだそう。

 

次に、その原理をIAMASでの実践をつかって説明するデモへ。
まずは、紙に貼り付けた銅製のコイルに磁石の入ったフェルトの寿司を近づけます。コイルはアンプとつながっていてアンプは音源が入っているiphoneにつながっています。これは1年生の大島拓郎さんの作品です。

このスピーカを磁石とコイルとに分解するという手法は、アメリカの作家Jess Rowlandさんの研究(注:Jess Rowland, Flexible Audio Speakers for Composition and Art Practice, Leonardo Music Journal No. 23, MIT press, pp.33-36, 2013.)を参考にしているそう。

 

耳を近づけてみると・・・

微かな音が聴こえてきます。

 

さらに紙の下に紙コップを置いてみると、音がよりクリアーに聴こえます。これは紙コップがスピーカーでいうところのエンクロージャーの役目を果たしています。

 

次に試したのはもっと直接的な方法。強力な磁石を耳につけてコイルを巻いたものを耳に近づけた瞬間に音が聴こえ、プライベートな音体験を得られます。これはイヤホンと似ているもののの原理的にはもっと単純です。これはIAMAS研究生のjohnsmithさんの作品です。

 

そしていよいよ実際にスピーカーの原型をつくってみます。

飛騨にゆかりのある色々な素材を選びます。木を加工する時に出るカンナ屑、飛騨名産の朴葉、飛騨市河合村でつくられる山中和紙、そして桜、栗、欅、栃、朴、手棒梨などの広葉樹とヒノキを薄く切った木。

広葉樹の様々な樹種

 

コイルはクラフトロボというカッティングプロッタで銅箔テープを切れば簡単につくれます

 

このチームはカンナ屑を選びました。コイルを貼り付けて、黒のケーブルをコイルの端っこに接着。赤のケーブルは半田ごてを使ってコイルの真ん中につなぎます。

実際にアンプにつなぎ音を聴いてみます。「あ、聴こえる聴こえる!」

 

このチームは朴葉で。なんだかかわいらしい。

 

このチームもカンナ屑ですが、形を貝のように。

 

平たいままのカンナ屑よりもホーン型になっているほうが音がより鮮明に大きく聴こえます

 

つくったこれらのスピーカーの原型を、雑音のない静かな蔵に移動して聴いてみましょう!

 

朴葉1枚をつなげた時の音と、両サイドにつなげた時では音のボリュームはかなり変わります。そして素材でも。カンナ屑や朴葉よりも分厚い木材の板をつなげた時は、より安定した骨太な音が聴こえてきました。もしかすると、葉っぱは葉脈の違い、木は木目の違いによっても音の伝わり方が違い、音に微細な変化が生じるかもしれません。

この後は、参加者それぞれに以下のようなご意見をいただきました。
・葉っぱを通じて音が聴けたのは意外だった
・思ったより良い音が出るものだと感心した
・道具を揃えてまた自分でつくってみたい
・ひとつひとつの音は音量がないが、森とかに行ってみんなで作ったスピーカーを全部いっぺんに鳴らして聴いてみたい
・形状とか素材の違いによって音が変わるのは面白かった
・みんなでスピーカーをつくってみたい
・面白い商品ができそう
・大人でも勉強になる内容だった
・スピーカーキットがあったらいい
・こんな自然の原型スピーカーがお店でのインテリアとしてあったらいいな
・小学校に出前授業をしてほしい

今後つくりたものとしては、
・ベッドサイドに置く葉脈スピーカー
・誰かにプレゼントしたいという小包サイズの小さなものをつくりたい
などがありました。

今回のワークショップでは、音を出す原理や構造を知り、スピーカーの原型を実際につくり、素材毎に変わる音の性質や聴覚で感知するボリュームの違いを知りました。今回つくったものは、マーケットに出ているスピーカーとは当然ながら品質は大きく違なりますが、自分の耳に心地よい音を出す素材を探し出してその構造をつくればオリジナルのスピーカーをいつでもどこでもつくれてしまいます。例え森の中にキャンプに行った時でも。もし自分の好みの素材を発見したら、今度はその素材に合う音楽を探してみるとか、逆アプローチで、ある音を聴きたいので、その音を忠実に表現する素材を探し出すという楽しみ方もあるでしょう。原点を知ったことで色々な楽しみ方、アプローチの仕方を学べた有意義な時間となりました。この音シリーズワークショップは継続的に会を重ね、最終的には今回の”元祖スピーカー”よりもう少し発展した”先進スピーカー”なるものを完成させるまでにしていきたいと思っています。どうぞお楽しみに!