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  • コラム

世界にひとつだけの道具を作る。
飛騨の広葉樹を使ったオーダーメイドのキッチンツール

『友人のシェフへ、開店のお祝いに特別なパスタ打ち台をプレゼントしたいんだ!』

 

飛騨の森でクマは踊るに、一本の素敵なお電話がありました。

お話を伺うと、イタリアンのお店を出店するご友人が
「こだわりのパスタを打つための板を探しているが、期待に沿うような物がなかなか見つからない。これまではステンレスの台の上でパスタを仕込んでいたが、生地の湿気を適度に吸ってくれる木の台で仕込みをしたら、もっと美味しいパスタが作れるのに。」
と話していたのだそう。

既製品で見つからないなら、いっそ作ってしまおう!
と飛騨の森でクマは踊る(以下:ヒダクマ)に飛騨の広葉樹を使った特別なキッチンツールの製作を依頼してくださったのでした。

まずは欲しい形のイメージから使用する樹種を決めていきます。

お話を進めていくと、たくさんのご要望が出てきました。

□奥行き500mm×長さ1650mm×厚さ30mm
□表面はスムーズ。ただし、塗装はなし。
□樹木の香りはない方が良い
□とにかく、固いこと
□(あまり水はかけないが)水はじきが良く曲がりにくもの
□裏に手かけが欲しい
□パスタを打つ時に、安定感のある重さと厚み
□角は丸める(パスタを打つときに、ハジの丸さを使って伸ばすワザがある)

などなど。

打ち合わせをして、今回ヒダクマでは
ヤマザクラをご提案させていただきました。

ヤマザクラは、程よい硬さと細密な木目をしており、匂いも少なく、また、薄くピンクのかかった色味がとても上品で美しい木です。日本では古くから浮世絵の版画などで馴染みのある木でした。

それだけではなく、幸運なことに去年一番多く採れた材がヤマザクラであったため、今年ヒダクマの蔵にはたくさんのヤマザクラがありました。
ヒダクマでは、秋頃、伐採した飛騨の広葉樹の中で一番多く取れた樹種をその年の『旬の材』と呼んでいます。

同じヤマザクラの材でも色や形が微妙に違います。一本一本表情の違うヤマザクラの個性を見ながら、使用する樹を選んでいきます。

ちなみに、左から二番目が飛騨で『ホエビソザクラ』と呼ばれる珍しいサクラ。
木の中心寄りを『赤太』、外側を『白太』と呼びますが、ホエビソザクラは白太と赤太の違いがはっきりしていて、コントラストがとても美しいです。

つづいて製作へ

今回製作するにあたって一番考慮したのが、木の動きです。

木材は、いわばストロー状の繊維の塊です。
その間を水分が行き交うことで繊維が収縮し、反りと呼ばれる動きが出てきます。

ストローの束の断面が年輪と考えると分かりやすいです。年輪の外側にいくほど繊維の量が増えていくため、年輪の内側か外側かで、反る方向が違います。それだけでなく、根元と枝先でも動きに微妙な違いが現れます。

湿度や気温などの周辺環境が変われば、それに呼応して木の中の水分量も変わっていきます。木材になってからも、木は周囲の環境に馴染もうと動いているんです。

こちら、ヒダクマ在庫でも珍しい立派な杢のクリ材です。特徴的な木の模様を杢(もく/ふ)と呼びます。
下側が木の根元(元)上側が枝先の方(末)です。

反っている様子がよくわかる画像。木は年輪の外側に向かって反ります。画像では上面が年輪の外側(木表:きおもて)下面が年輪の内側(木裏:きうら)です。

建築の世界、特に宮大工の世界では、これら木の特性がさらに重要になってきます。
木の動きを生かし、上手に付き合う方法が伝統として受け継がれていますが、組み木もその伝統技術のうちのひとつです。

木の特性を考慮した上で、いよいよ木の色味や木目を見ながら接着していきます。 

ここが一番面白くも悩んでしまう工程です。全体のバランスを見ながら似た色の材を選んで並べていきます。

今回は年輪のまっすぐな部分(柾目:まさめ)に近い材をなるべく使い、木表木裏、元と末を交互に並べて配置しました。木の動く力の方向を分散させて反りを緩和することで、ただ並べて接着するよりも反りが出にくくなります。

普段ヒダクマでは、贅沢なので製材の幅は均等ではなく、取れるめいっぱいの幅で製材しています。
今回は意識して同じ丸太から取れた板材を使用したため、板の幅も色味もほとんど均等に収まりました。
白太と赤太のバランスも良く、統一感のある仕上がりです。


木と上手につきあうために。

もう一つ、木と上手に付き合うために、手かけも工夫を施しました。

机などでは「反りどめ」と呼ばれる、繊維と直交した向きに取り付けた部材で木の動きを抑えることが多いのですが、今回は反りどめをつけることができないため、板の両端に相欠(アイカキ)を付けた端嵌め(ハシバメ)加工を施すことで、ある程度の反りを抑えています。

接ぎ手を中央に集中させ、穴の方を若干大きく加工。粘り気のある接着剤を使用することで、木が多少動いても対応できる仕口にしています。

下側から支えるようにかぶさっているのが相欠部分です。

製材、加工、接着、養生まで完了したら、最後に角を均一に丸くし、木肌が滑らかになるまで研磨をして今回のパスタ打ち台は完成です。

角が丸くなるだけで、印象が大きく違って見えます。その細かな印象も選んで作れるのがオーダーメイドの良さのひとつですね。

樹(木)という素材は、関われば関わるほど奥深いものだなと常々感じます。
ヒダクマスタッフも日々勉強しながら向き合っていますが、毎日発見の連続です。
今後はそんな木の魅力や知識についても、少しづつメルマガで発信していこうと考えています。

 

納品後、シェフからコメントとお写真をいただきました。

●届いた第一印象は『すごいの来ちゃった!』
●厨房に置いてみると、最初からしっくりと納まった。店内のテーブルやイス、カウンターは木で統一しており、このパスタ打ち台と色味も近いためすぐに馴染みました。
●重厚感があって丁寧に作られているのを感じるので、気が引き締まって良い緊張感で仕込みができます。
●オープンキッチンのため、客席からもこのパスタ打ち台が見えるが、全然違和感がない。スタッフからも「お店の雰囲気にあっていて良い」と好評。
●知り合いのシェフに見せたところ、うらやましいと言われた。

全長1650mmの広々サイズなのでパスタの仕込みも快適。

製作させていただいた側から見ても、こんなに素敵に使ってくださっていることがわかり、心から嬉しくなりました。

シェフのお店の情報はこちら 。
店の内装にも木がふんだんに使われていて、すごく素敵なんです!
素材にこだわりのある、美味しいイタリアンをいただけるお店です。

 

ヒダクマの得意分野

『欲しいものを探して買う』ではなく、『欲しいものを作る』という選択は、とてもクリエイティブな発想です。

今回はオーダーメイドということでスタッフが製作させていただきましたが、飛騨に来てくだされば、ヒダクマのスタッフと一緒に『自分で欲しいものを作る』ことができます。

ある程度プランの決まった滞在製作も、予約を受け付けております。
『欲しいから作る』はものづくりの原点であり、ヒダクマの得意分野です。

飛騨古川でお待ちしております。

ヒダクマでは、飛騨という地域に来ていただくことも大切な事業のひとつと考えております。

森に囲まれた飛騨で、飛騨の広葉樹を使って自分の欲しいものを製作する。欲しいものが手に入るだけでなく、体を動かすことで心も体も健康になる。さらに、飛騨の広葉樹を活用できることで、飛騨の森も地域も健康になる。

これって、もの凄くワクワクする買い物だと思いませんか?

まずはカフェにふらっと遊びに来ていただくだけでも大歓迎です。
飛騨古川は人柄も町並みも素敵な場所ですから、観光も楽しみつつ、気軽に寄って頂けたら嬉しいです。

お問い合わせはこちらまで。
皆さまのお越しを、スタッフ一同お待ちしております!