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  • 木の商品開発
逆境を乗り越え、最新IT家電と結ばれた無垢の木の話。

天然の木はひとつひとつ違う表情をもち、やさしい質感とぬくもりがある素材。しかし、一方で、曲がったり反ったりという欠点もあります。家電製品のパーツとして、電子部品やプラスチックと組み合わされ、温度や湿度の変化がある環境で使われる-そんな木にとって逆境の環境を乗り越えて、製品化された事例をご紹介します。

「木を使った商品をつくりたいけど、どうしたらいいかわからない!」という方に読んでいただきたい記事です。

「水を使う家電に無垢の木」のチャレンジ

25758088111_8220072753_zこの写真は、板に開いている穴や溝の部分に特別な塗料をしみこませているところです。この不思議な形をした板は飛騨のブナの木でできていて、日本初のIoT水耕栽培器「foop」の側板として使われます。

完成した商品は、こんな感じになります。01スマート菜園「foop」は、スマートフォンを使って家庭で水耕栽培ができるIoT端末。
詳しくはこちら。 スマート菜園、はじまる – foop

私たちヒダクマが開発と製造のお手伝いをさせていただいたこのfoopの側板のことを、木を使うことになった経緯からご紹介します。

デルタ電子さんでは、商品の開発にあたり、初回のプロトタイプができた段階で、一般女性20名とのアイデアソンをおこないました。foopwsアイデアソンでは、「あたたかみのある木の素材を使った方がいい」という意見が多く出たため、「無垢の木で側板をつくることができないか?」とヒダクマにご相談をいただいたのです。
開発の詳しい経緯はこちらをお読みください。
オープンコラボレーション型のプロダクト開発 デルタ電子の新しい試みを支援

テーブルなどの家具の材料としては一般的な「無垢(むく)の木」。しかし、家電製品に使われることはほとんどありません。
「無垢の木」とは、木そのものをそのまま使っているということ。そんなのは当たり前だ!と思われるかもしれませんが、世の中には木のように見えて実際には木そのものではないものが多くあります。例えばベニア板やパーティクルボード等の「木質素材」と呼ばれるもの。木材を分解して接着剤等で成型して再構成したこれらの材料は、加工しやすく、反ったり割れたりしないという大きなメリットがありますが、無垢の木の良さである天然の風合いは失われてしまいます。
一方、「無垢の木」は天然素材がゆえに、材料の調達が不安定で不確実、加工しづらく、反ったり割れたり形状が安定しない等のデメリットがあり、一般的に精密で均一な商品を大量に作る必要がある家電製品とは相性がよくありません。

さらに、「水耕栽培キット」に使うということは、無垢の木が苦手な水を使う環境に置かれるということ。そして、空気の通る通気孔を開けることから、その穴の木口(断面)から湿気が木の中に入って、反りが発生するリスクも大きくなり、腐蝕・カビの発生も懸念されます。

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「この商品に天然の木を使えたら素敵だね!」
そんな素朴な気持ちも、実際に検討を進めていくと、製造の手間やコスト、材料調達や販売後のクレームリスクなど様々な課題が見えてくると、しぼんでいってしまいます。
それでも、「飛騨の無垢の木を多くの方に都市の暮らしの中で使ってほしい」という私たちヒダクマの想いと、デルタ電子さんのfoopの開発プロジェクトの根底にある、「新しい価値の提案」と「チャレンジ精神」が合致し、無垢の木を使うことに挑戦することになりました。

飛騨のブナ材

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木にもいろいろな種類がありますが、材料はブナの木にしました。肌目が密で、淡くピンクがかった乳白色をしており、ナチュラルで優しい印象の木材です。
また、広葉樹が多くある飛騨市の中でも特に資源量の多い、つまり丁寧に使えば持続可能に活用していくことが可能な木であることもわかっています。

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ちなみに、ブナの木は森の声明を支える役割を担っていることから「森の女王」と呼ばれることもあります。

foopの側板は、通常の家具の材料に必要なものに比べると、厚さが比較的薄く、複数枚の板を接いで使うのでそれほど幅も必要としないため、通常は使い道が少なく価値が低いとされる細い木も利用することができます。
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ただし、天然木を材料として使うためには、時間がかかります。木材が加工した後で反ったり曲がったりしないように、ゆっくりと自然乾燥させます。通常は半年から1年かけて、foop専用に薄く製材した板については3か月~半年かけて乾燥させて、それから、人工乾燥で数週間、半年以上かけてようやく使える材料になります。増産などの突発的なオーダーに対応するためには、飛騨の森から供給可能な範囲で、先回りしてある程度在庫を確保しておく必要もありました。
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精密に加工し、温度変化や湿度に負けない塗装を施す

foopの側板の独特の形状を、美しく、プラスチックや金具などの他の素材と合うように製密に加工するため、NC(数値制御)マシンでの高度で丁寧な加工に定評がある工房に加工をお願いし、精度の高い旋削加工、溝加工、穴あけ加工をおこないました。

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後で手仕上げがしづらい通気孔や溝穴は、一方向からだけ削ると発生する毛羽立ちが起こるのを防止するため、逆方向から二度削っていただくなど、細かい工夫を重ねて綺麗に仕上げています。

それから、対候性、耐汚染性、耐熱性に優れた特別に調合した塗料で塗装します。湿気が通る穴部分に塗料をしっかり浸透させる必要があるため、ひとつひとつ手作業で浸けて防水加工をします。
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しっかりと塗料が染み込んでから一晩乾燥させて、再度表面にスプレーガンで別の防水塗料をまんべんなくしっかりとかけていきます。
そして更に一晩乾燥させて完成です。

作り手と売り手と使い手の「ちょうど良い」ところを目指して

板の厚み、通気孔の数、裏面の反り止め金具の有無、通気口と溝穴部分の研磨と塗装の方法、溝穴の幅、全体の塗装方法・・・。

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無垢の木の特性とそれを加工する作り手さんたちの事情。メーカーさん、デザイナーさんの商品に対するこだわり。使い手のためのデザインと品質を保ちながらも、販売価格を抑えるため手間とコストをいかに下げるか、何度も試作と協議を重ねました。

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無垢の木の良さ、その反面の課題について知っていただくために、デルタ電子の開発の責任者や担当者の方々に飛騨に脚を運んでいただき、実際に材料や製造工程をみていただきました。

「もう無垢じゃなくて合板でつくればいいんじゃないか。そもそもプラスチックでもいいんじゃないか。」という言葉を飲み込みながら、時にはこぼしながら。使い手であるお客さんに木の温かみと気持ちよさを届けるために、作り手と売り手の「ちょうど良い」ところを目指して、飛騨地域のさまざまな方にご協力をいただいて、家電製品に木を使うことを実現したのです。

出来上がった側板をなでていると、その手触りの良さに「無垢の木で良かった!」と思えます。

 

また、無事ブナの側板の商品を販売した後、数量限定で、サクラとブラックウォールナットの無垢の木の側板も作りました。

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サクラは飛騨地域を代表する広葉樹の一つ。色は上品なピンク色で、経年変化で色味は徐々に濃くなります。

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ブラックウォールナットは、北米から届いた原木を飛騨の製材所で加工しています。落ち着いた木肌の表情は、インテリアとの相性が良く、空間の雰囲気を引き締めてくれる高級感のある人気の樹種です。

さらに、より多くの方に手に取っていただくための側板の厚みと形状を変えた新しいベーシック・モデル「foop Lite」用の側板の開発と製造もおこないました。
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木づかいのお誘い

こんなふうな、木を使った商品開発をしていきたいという方は、ぜひご相談ください。
飛騨には、多様な広葉樹があり、日本随一の家具の産地ならではの高度な加工技術があります。木を使うことをあきらめないヒダクマがそれをコーディネートします。

せっかくだから、お任せいただくのではなく、飛騨におこしいただいて、皆で森や木を見て、関係者や専門家とディスカッションし、FabCafe Hidaの工房で試作をすれば、もしかすると3か月かかる開発も3日でできるかもしれません。
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メール:info@hidakuma.com
電話:0577-57-7686

あ、foopをお求めの方はこちらからどうぞ。もちろんFabCafe Hidaにも置いてあります。
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ルッコラ