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丸太の自然美が際立つ飛騨市役所のエントランス什器
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Outline

森の魅力を市民に語りかける、自然の造形を生かした記帳台

広葉樹の新たな活用方法を見出し、その利益を森へと還元し、持続可能な仕組みづくりを目指す「飛騨市広葉樹のまちづくり」。このプロジェクトの一環として、ヒダクマは飛騨の職人とともに、市役所のエントランスに設置する什器製作に挑みました。

ヒダクマは飛騨市内で採れた木のうち、通常の家具では使いにくい、二又の有機的形状が目を引く丸太を採用します。地元の木工作家による素朴なデザインの天板を組み合わせ、ユニークなデザインに仕上げました。アート作品のような什器は、来訪者が利用する記帳台でもあり、待ち時間を過ごすベンチとしての機能を果たします。

材料としてただ広葉樹を用いるのではなく、空間全体のなかで存在感を放つものであれば、きっと長く市民に愛され利用してもらえるーーこう考えたヒダクマは、自然の造形を生かし、エントランスの環境との調和を図るデザインを考案。形そのものに目がいくよう、白く塗装され美しく生まれ変わった丸太がアクセントの什器は、飛騨市のゆったりとした時間の流れを感じさせてくれます。

この地に住む人たちが、地元の広葉樹の特性と森の魅力を感じるきっかけとなるような、新しいエントランス空間へと変貌を遂げました。

【プロジェクト概要】

  • 支援内容
    ・家具設計・製作ディレクション
  • 期間:2021年10月〜2022年3月
  • 体制:
    ・クライアント:飛騨市
    ・家具設計・製作ディレクション:黒田 晃佑(ヒダクマ)
    製作・協力:西野製材所、kino workshop、飛騨職人生活、柳木材、飛騨市森林組合、小倉鉄工

Outputs

柔らかいアールの天板と、丸太の有機的フォルムが組み合わさる

片岡さんが製作した天板。

天板の柔らかいデザインを生かすべく、小倉鉄工が製作した鉄製の脚を取り付けた。

マットに塗装された二又の丸太に、フラットな木天板の脚が接合された独創的なデザイン。申請書類を記入するための記帳台は、車椅子の方をはじめあらゆる来訪者に対応できるよう、高さを3段設けました。もっとも低い天板は長椅子として機能し、傍にある丸太を眺めたり、撫でたりしながら待ち時間を過ごすことができます。
木天版は、飛騨市内に工房を持つ木工作家の片岡さん(kino workshop)が製作。その滑らかな曲線デザインにより、利用者が適度なディスタンスを確保でき、かつ個性の強い丸太を受け止めてくれるようなシンプルなデザインです。
また、天板樹種には飛騨の森に多いクリを選定。黄色い色味を持ち、適度に光を反射するクリが白く塗装された丸太とコントラストをつくり、空間内で存在感を発揮することを期待しました。

<仕様>
材料:天板/クリ、丸太/トチ、ホオノキ
サイズ:着席用/1,800mm×450mm、記帳用/1,800mm×380mm
仕上げ:オイル塗装

Process

木と対話する

川上から川下までの事業者が集まり、それぞれの立場からの意見交換や情報共有を行い、今後の連携を促進するために毎年実施されている広葉樹活用現地検討会。手前に見えるのが今回使用した木。

什器として実際に使用したホオノキが森のなかに立っていた時の様子。宮川町池ケ原地区内の市有林を伐採した。

飛騨市広葉樹活用推進コンソーシアムのメンバーを中心に、川上から川下までの事業者が集まる広葉樹活用現地検討会が、二又の丸太との出会いの場でした。扱いやすい木材が取引されていくなか、個性的な木を有効活用するのが使命と感じたヒダクマ。ここから什器へと変化させるための、検証と製作がスタートします。

トチ、ホオノキそれぞれの丸太の二又部分の「たまり」が人を受け入れ、それらの間にある空間が、人の流れを緩やかに促すことを期待した配置。

スタディ

スキャンをしたイメージと実物を眺め、木と対話を重ねたヒダクマ。ここから設計に落とし込み、原点を再設置し、改めてスキャンして設計、この作業を繰り返し、検証が進みます。

職人たちの手により磨き上げられる丸太

柳木材の柳さんによるチェーンソー加工。

その後、柳木材に丸太の初期段階の基本加工を依頼。ヒダクマはデータ上で切り込みを入れる箇所を決め、レーザー測量機を当てながらラインを細かく指示します。大きなチェーンソーを用い、高い技術でしっかりと応えてくれた柳さん。こうして丸太の原型ができあがっていきます。
自然物であるからこそ、そのものが放つ力強さ、個性がときに設計者を圧倒します。カットされた丸太を前に再度モノとの対話をしたヒダクマは、当初想定していた設計を変更し、別の丸太を設計し直し、そちらの加工を改めてお願いすることに。このようなプロセスは、規格外のものを扱う面白さでもあり、難しさでもあります。

作家性を生かしたシンプルなデザインの天板

天板製作のため木取りをする片岡さん。

飛騨で流通する木材は長さ2,100mmが多いですが、端が割れていて使用できない部分がある場合がよくあります。今回は1,800mmの材をベースにそれぞれが持つ木目などを生かした曲率で、無駄の少ないデザインを起こしました。迫力ある丸太とは対照的に、天板は片岡さんならではのシンプルで優しいデザインに。

フォルムを強調するための塗装や脚の製作

柳さんがカットした面を平らにする堅田さん。

金属の脚を製作してくれた小倉さん。

丸太のカット面の仕上げや脚のための丸太の穴開けやキャスター取り付けといった難易度の高い加工は、家具職人の堅田さんに依頼しました。
塗装では、形状を際立たせるために、マットな白色を追求し、塗料に市販のベビーパウダーやスプレー等いくつかの色を混ぜて検証。塗装もひきつづき堅田さんとヒダクマの黒田で行いました。パウダー粒子が木目に上手く付着し、満足のいく仕上がりに。
小倉鉄工が製作した脚を取り付け完成しました。

今回の製作は、市有林の伐採から、製材、加工までのすべてのプロセスを広葉樹活用コンソーシアムメンバーの協力のもと形にすることができました。こうして完成した什器を実際に市役所エントランスに設置すると、その美しい自然物の佇まいが、飛騨の森の空気を運んでくれるかのようです。訪れる飛騨市民の皆さんの起点となり、一息つける場所となり、長く愛されることを願います。

Members

片岡 清英|Kiyohide Kataoka
kino workshop
1969年岐阜県生まれ。1997年高山高等技能専門校で木工を学ぶ。家具メーカー勤務を経て、夫婦ふたりでkino workshopとして活動を始める。2007年に住居兼工房が完成。2016年にいつでも作品を見ていただけるようにと、工房に併設したギャラリー「キノテンジシツ」オープン。つくって暮らす毎日を楽しんでいる。
https://www.kinoworkshop.com/

堅田 恒季|Hisatoshi Katada
飛騨職人生活
飛騨の家具メーカーで企画設計を担当し9年勤務。その後独立し、2002年に「calm’s」を設立。オリジナルの作品をネットショップの「飛騨職人生活」にて販売。また、個人や建築家、デザイナーからのオーダー家具などを多数製作。
http://hida-cafe.com/

小倉 直也|Naoya Kokura
有限会社 小倉鉄工 代表取締役
飛騨市出身。地元工業高校卒業後金属加工の本場は関にて武者修行。ステンレス・アルミ溶接加工などを学ぶ。飛騨に帰ってからは家業である鉄工所を継いで30年余り、ヒダクマからのご依頼で机の鉄脚やフレームの製作、金物の加工等も手がける。趣味は多彩。春夏秋とバイク乗り回しっ冬はスキーにスノボ。音楽も大好き。地元アマチュアバンド『Jug-G』のVo,Harp担当。写真は趣味のひとつバイクカスタムの手曲げマフラー製作の様子。

黒田 晃佑|Kousuke Kuroda
ヒダクマ 木のクリエイティブディレクター
大阪府出身。大学で建築と木工を学んでいるうちに、光の現象に興味を持ちフィンランドへ暮らしと共にある家具や照明のデザインを学ぶために留学。そののち、木という素材の扱いを家具に限定せず考え森と関わっていくヒダクマに興味を持ち2019年から参加。人と素材、デジタルとアナログなど事象と事象のバランスを調整したり、繋ぐことで新しいものや価値を創ることを目指す。日常や生活を大切にしていて、散歩や音楽を探したりが趣味。

Member’s Voice

普段の仕事は自前の材料を使い、カタチを考えてものづくりをしています。
今回黒田さんから市役所エントランスの家具のお話しをいただいた時に、いつもとは違う向かい方で新鮮に感じました。
とにかく時間の無い中でカタチが最終的に決定する前から見切り発車で木取りを始めました。
支給された黒内で伐採された栗材を、初めにもとの丸太の状態に板をそろえていきます。
板を眺めていると、出来上がりがはっきりとイメージできるようになっていきました。
曲がりの大きな木でしたが板幅が広く2枚の板を接ぎ合わせて天板にすることができました。
黒田さんの天板完成図がカーブを描いていて、板の曲がりをうまく活かすことができたと思います。
木目が細かく素直で美しい栗材でした。
公共の場所ということでどこにも角張ったところの無い柔らかいカタチです。
オイル仕上げは木の質感を一番味わえると思うので、市役所を訪れる方にベタベタと撫で回してほしいです。
時間の経過とともに、味が出てくると思います。

片岡 清英
kino workshop

市役所のエントランスに伺った際に、もう既にそこには日々の運用を効率的に行うための沢山のモノがありました。
そんな場所の中でさらに人のカタチを立ち上げるよりも、石ころを地面に転がした後に地面を少し凹ましたり、そこに石があることで作る雰囲気。のような何でもない出来事を空間に取り入れられないかなと想像しました。
この町の山からやってきた丸太のカタチが間をつなげていく装置として、ゴロンとただそこに転がっていて、人を迎えてほしいなと思ったのです。

黒田 晃佑
ヒダクマ

文:石塚 理奈

飛騨市の「広葉樹のまちづくり」

飛騨市ある豊富な広葉樹の活用を軸とした持続可能な地域づくり。飛騨市は、100年後も美しく色づいた広葉樹林を次世代へつむいでいけるよう取り組んでいます。
Web:https://hidatsumu.com/
Facebook:https://www.facebook.com/we.will.create.the.future.with.hardwoods

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