• case
ハチミツの木を使った、堀養蜂園のカフェ「蜜や」のための飾り天井と家具
  • Home
  • Case
  • ハチミツの木を使った、堀養蜂園のカフェ「蜜や」のための飾り天井と家具

Outline

岐阜県瑞浪市で養蜂を手掛ける堀養蜂園は、「単花蜜」と呼ばれる主に単一の花から採蜜されるハチミツを生産・販売しています。単花蜜の特徴は何といっても、花ごとに異なるハチミツの味や香りが際立つこと。そんな堀養蜂園が運営するカフェ「蜜や」が今年8月にオープンしました。

ハチミツと広葉樹は、実は互いに欠かせない存在です。プロジェクトが始まる前、堀養蜂園の代表・堀孝之さんに養蜂について話を伺いました。そのとき分かったことは、蜜源植物(ミツバチがハチミツを作るために花から蜜を集める植物)となる樹種が、飛騨で家具づくりに利用される樹種と重なるという、堀さんの養蜂と飛騨の森の共通点でした。そんな運命的な出会いから、空間設計がスタートしました。

「蜜や」の空間・家具の設計を依頼したのは、建築家の矢萩智さん。ヒダクマは矢萩さんとともに、ハチミツカフェのための木の使い方を考え、材料コーディネーションや家具のディテール設計を担当しました。

天井に浮かぶいくつもの一枚板は、ヤマザクラやウワミズザクラ、ニセアカシアといったミツバチたちが訪花する、堀養蜂園でも単花蜜としてラインナップのある樹種を中心に構成。仕上げに「蜜や」のオリジナル蜜蝋ワックスを用いるなど「蜜や」にための木質空間を考え抜いた設計・仕様になっています。

【プロジェクト概要】

・支援内容
製作ディレクション、木材コーディネーション

・期間
2021年3月〜8月

・体制
設計:矢萩智(SYA+Kamikami)
製作ディレクション、木材コーディネーション、家具ディテール設計:
岩岡孝太郎、浅岡秀亮(ヒダクマ)
施工:板垣建設
製作:goーproducts
協力:堀養蜂園(蜜蝋提供)

Outputs

ミツバチが好む広葉樹の板が軽やかに浮かぶ、奥行きのある空間

飾り天井

「蜜や」に入ってまず目に入る、天井に浮かぶ広葉樹の板の群れ。100枚近い板を、店舗入り口に対して縦方向に並べています。ミツバチが訪れる樹種のほか、飛騨の森に多く自生するブナ、そして木繊維ボードのMDFをアクセントに加えトーンを調整しました。それぞれの板は、幅や曲がり具合も異なっており、設計段階で検討した最適な順序で並べられています。

店舗奥のガラス窓から見学できるのは、堀養蜂園の採蜜作業の様子。ガラス戸に映り込む飾り天井が、採蜜室内部へと連続してより奥行きを感じさせます。

<飾り天井 仕様>
素材:ヤマザクラ、ウワミズザクラ、ニセアカシア、ブナ、MDF
仕上げ:「蜜や」のオリジナル蜜蝋ワックス(MDFを除く)

メインテーブル・カフェカウンター

ハチミツを買う人、カフェを利用する人、採蜜を見る人。「蜜や」での人の振る舞いは様々です。養蜂やハチミツの魅力を色々な角度から発信できる空間のために、それぞれの動線が重ならない設計がなされています。店舗中央のメインテーブルは、中央で分割して2つのテーブルとして配置し直すことも可能。また、メインテーブルとセットのチェアとして、原木の形をそのまま残した丸太スツールと直線的なMDFスツールを製作しました。

メインテーブルは契りでつなぎ合わせ、所々に一輪挿しをあしらった

丸太とMDFのスツール

<メインテーブル 仕様>
材料:ヤマザクラ
サイズ:W1,135mm×L4,500mm×H730mm
仕上げ:「蜜や」のオリジナル蜜蝋ワックス、天然オイル

<カフェカウンター 仕様>
材料:ヤマザクラ
サイズ:D500mm×W2,920mm×H50mm
仕上げ:「蜜や」のオリジナル蜜蝋ワックス、天然オイル

<丸太スツール 仕様>
材料:ヤマザクラ
サイズ:φ350mm×H400mm
仕上げ:防カビ塗装

<MDFスツール 仕様>
材料:MDF
サイズ:W450mm×D450mm×H450mm

店内トイレ

店内トイレの内装にも蜜源植物の木を採用。洗面台天板にはニセアカシアを使い、壁面には一枚板とはまた違った木目が現れるシュリザクラのロータリー杢を使用しています。

夕方に差し掛かると街に対して広葉樹の板が浮かび上がる

Process

100枚近い板を選定。それぞれの個性に向き合う

森を舞うミツバチをイメージした、空間のコンセプトスケッチ(提供:矢萩智)

飛騨の広葉樹は曲がっていたり、細かったりと、同じ樹種でも板ごとに個性の振れ幅が大きいです。それぞれの個性をどう見せるか。それが「蜜や」で目を引く飾り天井を製作する上で、大きなポイントの一つでした。

空間デザインは「広葉樹の板がミツバチの群れのように空間を舞う様子」をイメージ。3Dモデリングをしながらその方向性を定めていきました。

様々なアイデアで、ミツバチの群れをどう表現できるかを検討(資料提供:矢萩智)

無垢材、耳付き板を合わせて100枚近い板を一つひとつピックアップ。飛騨にやって来た矢萩さんとともに、それぞれの板が映える並べ方を検討し、一枚一枚に番号を割り当てました。3Dの設計で想定していたよりも実際の木の曲がり方は激しく、そうした通常の家具づくりでは取れる部材の量が少ない、個性的なものを積極的に見せる配置を模索。木の個性を尊重したことで、結果として板ごとの個性が引き立てられているだけでなく、高い歩留まりも実現しました。

スツール用の丸太は、木材が集まる土場(どば)で選定

テーブル天板を加工するgoーproductsの本郷さん

天井の板材加工を含め、家具製作を手掛けたのは家具製造工房「goーproducts」。ヤマザクラをはぎ合わせ、両端に耳付き板を使ったメインテーブルは、職人の手によって大きな一枚板のテーブルのように仕上がっています。仕上げ塗装には、「蜜や」のオリジナル蜜蝋を採用しました。通常の蜜蝋とは違い、ベタ付きにくくサラッとした上品な仕上がりに、職人さんも関心していました。

「蜜や」の空間からは、堀養蜂園が生産するハチミツの魅力だけでなく、その背景にあるハチミツと木の関係性を感じることができるはずです。さまざまな生命が紐づく木という自然素材を無駄なく丁寧に扱った「蜜や」。ぜひ現場で体感してみてください。

写真提供:堀養蜂園

写真提供:堀養蜂園

SHOP DATA

店名:蜜や
住所:〒509-6107 岐阜県瑞浪市穂並1丁目 58番地
電話:0572-56-2228
営業時間:10:00‐18:00(水曜定休)
Web: https://horiyouhouen.jp/access/

Members

矢萩智|Satoru Yahagi
SYA主宰

1989 年北海道生まれ。2013 年東京理科大学卒業。2015 年東京理科大学大学院修了(伊藤 香織研究室)。隈研吾建築都市設計事務所を経て、2020 年より SYA 主宰。「自然との共存」 をテーマに設計活動を行う。

シプキン・パべル|Pavel Sipkin

1988 年ロシア/モスクワ生まれ。2014 年モスクワ建築研究所(Moscow Institute of Architecture)にて博士号を取得。ニューヨークのラルフアぺルバウムアソシエイツ(Ralph Appelbaum Associates)、藤本壮介建築設計事務所を経て、隈研吾建築都市設計事務所。

マルティノーリオ・マルタ|Marta Martinoglio

1990 年イタリア/ミラノ生まれ。2015 年ミラノ工科大学(Polytechnic of Milan)修了。モ スクワのべルナスコーニ(BERNASKONI)、藤本壮介建築設計事務所を経て、隈研吾建築 都市設計事務所。
https://www.kamikamiarchitects.com/

岩岡 孝太郎|Kotaro Iwaoka
ヒダクマ代表取締役社長 / CEO

1984年東京生まれ。千葉大学卒業後、建築設計事務所で勤務。その後、慶應義塾大学大学院(SFC)修士課程修了。2011年、“FabCafe”構想を持って株式会社ロフトワークに入社。2012年、FabCafeをオープン、ディレクターとして企画・運営する。2015年、株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)の立ち上げに参画し、2016FabCafe Hidaをオープン、2019年より現職。

浅岡 秀亮|Hideaki Asaoka
木のイノベーター
岐阜県飛騨市出身。名古屋芸術大学卒業後、家具メーカーやインテリアデザイン事務所で家具製作・デザインを経験。2016年にヒダクマに参加し、プロダクト開発や設計、制作、施工など幅広く担当。

Member’s Voice

採蜜に使用する樹種の板を天井と壁面に浮かべることで、蜂が飛ぶ森の中にいるような、風景を感じる空間をイメージした。天井の木の板が反射する窓を通して、蜂蜜を精製する採蜜室が見学できる空間構成とした。1m2mの長さの木の板を並べた4列を基本ユニットとし、天井と壁面に連続させた。壁面の板の裏に照明を設けて、商品がハイライトされるよう計画した。老若男女が訪れ、森の恵みである蜂蜜と木を享受できるあたたかな空間になるよう願っている。

矢萩智|Satoru Yahagi

広葉樹はたくさんの樹種があるので、見た目や硬さ、加工性などの特徴が樹種によって大きく違いますが、はちみつもまた、樹種によって味や香りがまったく異なるということが印象的でした。

私は普段ものづくりとしての広葉樹の世界を見ていますが、堀さんは養蜂家として広葉樹の世界を見ています。ということは、ミツバチは広葉樹をどういう目線で見ているんだろう…。

見ているのは同じものなのに、それをどう見て何を感じているかは全く異なるということがこのプロジェクトの面白いところで、色んな目線から見た広葉樹の世界が味わえるような、ユニークな空間となりました。これで広葉樹の新たな世界にまた一歩踏み入れたような気がしています。

浅岡 秀亮|Hideaki Asaoka

文:志田岳弥
写真(竣工写真のみ):長谷川健太

飛騨で広葉樹を自ら選び、内装空間・家具をつくりませんか?

ヒダクマでは、森の循環と建築家をはじめとしたクリエイターをつなぐシーズン限定ツアー企画「未来の建築プロジェクト向け特注広葉樹2021」を開催中です。ものづくりに使う木材を丸太の状態から、飛騨でお選びいただきます(オーダーメイドの製材も可能)。トレーサビリティーが確保された飛騨の広葉樹をものづくりに活かしてみませんか?

詳細はこちら

その他、製作などに関するお問い合わせはこちら