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製材、色、多様性。3組のクリエイターが独自の視点で国産材活用を考え生み出したプロダクト

Outline

株式会社ロフトワークは2020年11月から2021年3月にかけて、国産材の需要創出・利用拡大を支援するプロジェクト「WOOD CHANGE CHALLENGE(ウッド チェンジ チャレンジ)」を実施しました。日本では、木材自給率が約38%(2019年実績)にとどまる中、人工林の半数以上は収穫できる状態である10齢級(50年)以上。豊富にある木材をはじめとした森林資源を活用しながら持続可能な森づくりを進めるためには、今より国産材に目を向ける必要があります。

このプロジェクトの中心を構成したのは、国産材を活用するアイデアアワード 「WOOD CHANGE AWARD(ウッド チェンジ アワード)」と、異分野のクリエイターたちがアイデアに磨きをかけプロトタイプ制作を行う「WOOD CHANGE CAMP(ウッド チェンジ キャンプ)」。ヒダクマからは3人の制作メンバーが「木のディレクター」となってCAMPに参画し、クリエイターをサポートしました。

3つのクリエイターチームは、それぞれの視点や問題意識で制作の手がかりを模索。CAMPへの参画をきっかけに関心が高まり、個人の活動として飛騨を訪れ、実際に森を見たり、木材流通について理解を深めたり、材料調達や実験を行ったチームもありました。完成した3つの作品には、どれも国産材利用を大胆にチェンジするアイデアが込められており、森への好奇心を刺激し、木への関心を高める大きな可能性を秘めています。

この記事では、3チームの作品と飛騨を訪れた2チームの滞在記録を紹介します。

【プロジェクト概要】

・支援内容
制作サポート、木材コーディネーション

・期間
2021年1月〜3月

・体制
プロジェクト主催:株式会社ロフトワーク
制作:MULTISTANDARD、Playfool、狩野佑真(studio yumakano)
メンター:元木大輔(建築家、DDAA/DDAA LAB代表)、小野 直紀(『広告』編集長/博報堂monom代表/YOY主宰)
制作サポート、木材コーディネーション:
浅岡秀亮、門井慈子、黒田晃佑(ヒダクマ)

・協力:ひだ森のめぐみ、三嶋和ろうそく店、飛騨職人生活、柳木材

Outputs

chopping(MULTISTANDARD)

「chopping」と名付けたスツールを手掛けたのは、4人のデザイナーで構成するMULTISTANDARD。着目したのは、原木を規格化する現在の製材プロセスでした。より人工的な製材によって生まれる直線と、薪割りといういわば原始的な製材で生まれる、有機物である木が生み出した繊維形状が背合わせに。「chopping」は、人工と自然の揺れに位置しています。

Forest Crayons(Playfool)

Playfoolが制作した「Forest Crayons」の顔料になったのは、様々な理由で家具や建材にはならなかった木、樹皮やキノコの菌が入った朽木など。クレヨンの色として木の特徴を抽出すると、木が持つ色も個性に満ちていることが分かります。同じ樹種や素材であっても、一貫して同じ色をつくれるわけではなく、そうした変化も楽しめる作品です。

Forest Bank(狩野佑真|studio yumakano)

デザイナーの狩野佑真さんが制作したマテリアル「Forest Bank」。価値の付けにくい小枝や樹皮、製材時に出る木屑、森の腐葉土までもが有機溶剤フリーの水性アクリル樹脂と混ぜ合わさって生まれた素材が加工されています。製材された木材だけでなく、森そのものが持つ多様な価値に着目したこのマテリアルは、通常の木材と同じように加工できるのが特徴です。

Process

木が持つ色を探訪し、木工房でクレヨン合宿

「Forest Crayons」の方向性が決まり、実験を始めたPlayfoolとヒダクマの木のディレクター黒田晃佑。Playfoolは木蝋や蜜蝋など異なる素材で試作したクレヨンの描き味を比べたり、サイズで香りが変わるかなども比較。飛騨では森にある「ベトベトした素材」を探し、クレヨンに使えないかといった調査を重ねたり、地元のロウソク店にもヒントをもらい、お互いの成果を共有しました。

2月、制作スケジュールを鑑みて急遽実施した「クレヨン合宿」。森が持つ多彩な色をプロダクトで表現するために、飛騨の森や製材所を訪れました。森では、枝や青いキノコ「ロクショウグサレキン」などを収穫。木材が集まる土場では、薪などから色を集めました。

飛騨のロウソク店にも試作品を紹介

その後はFabCafe Hidaの工房にこもり、集めた様々な素材を粉体に。得た顔料を元をクレヨンとして形成し、そしてそれぞれの色を比較しました。試作から比較という行為をときに黙々と、ときに興奮しながら繰り返し。合宿の終わりには、9色が森からクレヨンに引き出されました。

森にはどんなカタチが眠っている?地元職人と新素材を加工

なぜ国産材が使われない現状があるのか、そもそもたくさん使うことは森にとって良いのか。話はときに「日本の賃貸契約事情とクリエイティビティ」といったテーマにまで及びながら、丹念に根本的な問いと向き合い、コンセプトを固めていった狩野佑真さんとヒダクマの木のディレクター門井慈子。具体化するに当たって、飛騨の山や土場、製材所から木材や枝に樹皮、スギやヒノキの葉、そして土など、森にある様々なサンプルを提供しました。

木材を大量に消費するということではなく、森の価値を表現する作品を目指した狩野さん。飛騨滞在は森から始まり、土場や製材所、民俗文化をテーマに地域振興を進める「飛騨・世界生活文化センター」を訪問しました。森から生まれる素材の形や、家具作りの文化などを余すところなくインプット。

世界生活文化センターでもたくさんの森の形を発見

その後は地元の家具職人、飛騨職人生活の堅田恒季さんの元を訪ね、木質素材と水性アクリル樹脂を混ぜ合わせた新素材のサンプルがバンドソーや木工旋盤といった機械でどの程度まで加工できるのか、その可能性を検証。カットされた断面には、未知の微生物のような奇怪な形を含め、実に多様なシルエットが見事に現れました。

今回のプロジェクトでそれぞれのクリエイターの制作に携わる中で、ヒダクマメンバーも今までに扱わなかった材料を調査・調達したり、実験を行うことでとても大きな刺激を受けました。「WOOD CHANGE CAMP」を通じて得た繋がりや収穫を、ヒダクマも今後の活動に生かしたいと思います。

Members

北島 識子|Satoko Kitajima
株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター / デザインエヴァンジェリスト

東京造形大学でグラフィックデザインを専攻し、卒業後、新卒でロフトワークに入社。持ち前のクリエイティビティを活かし、大手コミュニティサイトのコンテンツ制作から、美術館サイトをはじめとした中~大規模サイトのCMS導入、iPhoneアプリの企画制作まで幅広いジャンルのディレクションを手がける。

MULTISTANDARD

東京を拠点とする4人のデザイナーが集まるマルチスタンダードは、社会が求める最適解を提示するのではなく、新しい視点をツールとしてデザインに機能させ、アイデアに形を与えることを主眼として活動しています。未来の多様な暮らしに関するいくつかの可能性を、マテリアルやプロセス、コンテキストの読み直しを手掛かりに模索します。

Playfool

Daniel CoppenとSaki Coppenによるクリエイティブユニット。共にRoyal College of Artを修了し、2018年から活動開始。創造性を開放する自由な遊びを生み出すことをミッションに、分野横断的に創作活動に取り組む。国内外で受賞多数。

Website: https://studioplayfool.com/
YouTube: https://www.youtube.com/c/Playfool/about

狩野 佑真|Yuma Kano
Design Director / Designer

1988年栃木県生まれ。東京造形大学デザイン学科室内建築専攻卒業。アーティスト鈴木康広氏のアシスタントを経て2012年にデザイン事務所「studio yumakano」を設立。ネジ1本からプロダクト・インテリア・マテリアルリサーチまで、実験的なアプローチとプロトタイピングを重視したプロセスを組み合わせて、様々な物事をデザインの対象として活動している。主な受賞にグッドデザイン賞、IFFT ヤングデザイナーアワード、German Design Awardなど。
https://yumakano.com/

浅岡 秀亮 |Hideaki Asaoka
株式会社飛騨の森でクマは踊る
森のイノベーター

岐阜県飛騨市出身。名古屋芸術大学卒業後、家具メーカーやインテリアデザイン事務所で家具製作・デザインを経験。2016年にヒダクマに参加し、プロダクト開発や設計、制作、施工など幅広く担当。木に対する幅広い知識や、職人への深いリスペクトを持ち、木に新しい価値を付与すべく日々奮闘中。

黒田 晃佑|Kousuke Kuroda
株式会社飛騨の森でクマは踊る
木のクリエイティブディレクター 

大阪府出身。大学で建築と木工を学んでいるうちに、光の現象に興味を持ちフィンランドへ暮らしと共にある家具や照明のデザインを学ぶために留学。そののち、木という素材の扱いを家具に限定せず考え森と関わっていくヒダクマに興味を持ち2019年から参加。人と素材、デジタルとアナログなど事象と事象のバランスを調整したり、繋ぐことで新しいものや価値を創る事を目指す。日常や生活を大切にしていて、散歩や音楽を探したりが趣味。

門井 慈子|Chikako Kadoi
株式会社飛騨の森でクマは踊る
森のクリエイティブディレクター

神奈川県出身。人と森の関係性という、時間軸の長いコミュニケーションやそこに生じるコミュニティ創り・価値創造に心を惹かれ、2020年「クマが喜んで踊り出すくらい豊かな森」を目指すヒダクマに入社。クマと一緒に踊るのが夢。梅雨時期には庭のドクダミと戯れるのが日課。

Member's voice

Forest Crayonsは、その土地土地の森の植生が生み出す色々な魅力を見つけて、作って、遊べる体験が詰まったプロダクト。

粉体が主材料なので、実は木材だけでなく葉っぱや枝、花だって材料になります。

建材や家具用材のような既存の木材の流通経路から解き放たれ、究極のカスケード利用としての可能性に満ちたForest Crayonsの制作過程は、試行錯誤の中で都度新しい発見に溢れていて、ワクワクしっぱなしのプロジェクトでした。

森から届いたクレヨンが性別も年齢も横断して色んな人の手に届いた時、描かれたイメージの中から、また次の人と森との関わり方が現れてくるのかも知れません

黒田 晃佑|Kousuke Kuroda
株式会社飛騨の森でクマは踊る
木のクリエイティブディレクター

森の話に留まらず、川の話や海の話、そこに流れつくプラスチックゴミが綺麗だったりする話を通し、木と人の関係性や、木というマテリアル自体が既存のイメージからCHANGEできないかを狩野さんと模索しながらForest Bankは完成しました。

削るたびに新たな断面が出てくるのですが、普段その素材単品だと切らない角度で表情が見え、その断面からその奥や手前をついつい想像してしまいます。WoodだけでなくForestという木のある環境を丸ごと飲み込んだマテリアルがこれから様々な空間に登場していくことを楽しみにしています。

門井 慈子|Chikako Kadoi
株式会社飛騨の森でクマは踊る
森のクリエイティブディレクター

Photography: Shot by Kusk