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アートやデザインにこだわる次世代のためにデザインされた新しい卓球ブランドのプロダクト開発
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機能的なデザインと、プレイヤーの個性を表現するアートがラバーに施されたround21のラケット

数あるスポーツの中でも、卓球は革新性や美的観点からの進化が少ないスポーツのひとつと言ってよいかもしれません。卓球ラケットは規格統一が厳しいため、ほとんどが同じ様な形状をしています。
アメリカのワシントンD.C.を拠点とするスタートアップ round21は、見た目の美しさと性能を兼ね備えた新しい卓球ブランドをつくりました。ラケットのデザインは、東京を拠点とするAirline Designが担当し、Airlineの創設者でチーフデザイナーのPaul Pugh(以下、ポール)氏がデザインプロセスをディレクションしました。
はじめにAirlineのチームは、製品のターゲット市場である北米における、一般的なグリップスタイルや様々なプレースタイルなどをリサーチすることから始めました。
そのリサーチに基づき、3Dプリントやレーザーカッターを使用して多くのプロトタイピングを行い、プレイが可能なデザインを確立しました。
ラケットのプロトタイプ製作、厳格なユーザーテストやデザインの検証を行うにあたり、製作パートナーが必要であることを早くから認識し始めたポール氏は、ヒダクマに協力を依頼。ヒダクマは、デザインができるチームであり職人とのネットワークを持つことからAirlineの製作パートナーとして最適でした。最終的には2回のプロトタイプ製作と、販売やプロモーション用の限定ラケットの初期生産をヒダクマで担当しました。

round21

製品情報:https://round21.com/

round21では現在3つの限定コレクションを販売しています。

【プロジェクト概要】

  • 支援内容
    卓球ラケットのプロトタイプ開発
  • 期間
    2018年7月〜2019年11月
  • 体制
    ・クライアント:round21
    ・プロデュース・プロジェクトマネジメント・クリエイティブディレクション・パドルデザイン:Paul Pugh (Airline Design)
    ・ラケットのプロトタイプの開発:浅岡 秀亮 (ヒダクマ)
    ・プロモーションのための限定ラケットの製作:柿下木材工業所

Output

アート&デザインと高品質の素材・技術から生まれる新たな卓球体験

エルゴノミクスに基づいて設計されたグリップは、プレイヤーの手の形に合わせて立体的な曲線にカットされており、握りやすく快適。人差し指の置き場所に配慮し、まるで手の延長線上にあるかのようなデザインです。
ラケットには、粘度、強度、重さのバランスを考慮して最高級のブナを使用。飛騨の職人の手仕事と高度な木工技術の融合により製作しています。ラケット全体の重量感は、特に初心者や中級者向けのコントロール性の高いラケットでありながら、経験者向けの高速プレーとスピンプレーの両方を可能にするニュートラルなスタイルとなっています。
round21が独自に開発した技術により、ラバーに鮮やかなフルカラーのアートワークデザインをプリントすることが可能になりました。プレイヤーは、アーティストによる数多くのデザインの中からお好みのデザインを選べます。この五感を刺激する新しいスタイルのラケットによってプレイヤーの個性やプレイスタイルを表現することができるのです。

〈仕様〉
 樹種:グリップ|ブナ ブレード|ヒノキ積層合板
 仕上げ:ポリウレタン塗装
 レーザー加工:グリップ・ブレードにロゴなどを印字

Process

紙からはじまり、木で終わる。試作を繰り返したデザインプロセス

ラケットのプロトタイプ:Airlineのチームはラケットの形状を確立するために、紙で試作を始め、実際にプレイが可能なプロトタイプ製作へと移行しました。その後ヒダクマと協力して写真・右端にあるようなラケットのプロトタイプを作りました。


Airlineのポール氏からラケットのラバーを除いた「ブレード」と、「グリップ」の開発で依頼を受けたヒダクマ。まず取り組んだのはブレードとグリップのそれぞれに用いる木の選定、製造工程の検証でした。握る部分なので、木の触感には細心の注意を払いました。
ブレードとグリップをそれぞれ数種の樹種を使って試作し、重量や加工時の木目の方向、製作過程で気づいた点などを記録。ポールさんと話し合いを重ねました。同じ木でも節の有無、木目や色味も違うため、ひとつのラケットの特性が使い勝手に影響するかどうかも検証しました。その後、東京の卓球場で様々な木のプロトタイプを使ってテストが行われ、最終的な仕様にたどり着きました。

グリップに最適な木として選ばれたのは、粘りがあり、均一な肌色、滑らかで木目が美しいという特徴を持つブナです。当初グリップ部分の木は着色する予定でしたが、現物を見たポール氏が「着色をせず、木そのままの色の方が美しい」と、木本来の色を活かした仕上げとなりました。
ちなみにブナは飛騨に多く生息する樹種のひとつ。飛騨市では原生林の素晴らしさと自然の豊かさを象徴する力強い木として、ブナの木を「飛騨市の木」と定めています。

プレイヤーの意見や好みを取り入れたグリップの形状

プロトタイプ製作では、複雑な曲線をCNCによる3次元切削と手加工とを併用し、そのプロセスと所要時間を明らかにしていきました。CNCによる加工では、近所の看板屋さんの表札用のCNCを利用させてもらい、プロトタイプの製作にご協力をいただきました。ヒダクマは、3次元の形状のグリップを効率よく組み立てるために、3Dプリンターで型をつくった画期的な組み立て治具を製作。それら一連の治具と試作品を持って工場に相談しに行くと、工場側もそれをさらにアップデートさせた治具を製作してくれ、生産の追い風となりました。

プロモーション用の限定ラケット製作では、飛騨高山で木製照明器具などの製造する柿下木材工業所が予想を超えるスピートと技術で250個のラケットを完成させてくれました。このように、製作に携わってくれた職人の技術と経験、そしてテクノロジーを活かしたことがこの形の実現につながりました。

ディテールへのこだわり

ポール氏がFabCafe Hidaの木工房に訪れた時の様子。この時ポール氏はプロセスを理解し、プロトタイプについての意見を浅岡と交わした。

このプロジェクトを担当したヒダクマの浅岡は、ポール氏が飛騨に来て最初に完成したプロトタイプを手にした時、満面の笑みで「カッコイイ!」と言って素振りを始めたというエピソードを教えてくれました。
浅岡は「ポールが依頼してくれたこのプロジェクトは、まさに飛騨のものづくりに対する挑戦状だっと思います。」と語ります。小さいものだからこそかかるコストや手間。機械化できなかったり、コンマ単位の精度が求められたり、1個あたりのコストの増減も大きい。このような難題は、飛騨や日本において小さなものを作ることができる工場が減少していることにも関わっています。現実にこのプロジェクトにおいても最初は採算が合わず、生産は他に移ってしまったそう。その1年後「クオリティが出せないのでやっぱり飛騨でつくりたい」と戻ってきてくれたことが、ポール氏との思い出の中で一番印象に残っているそうです。

Member

ポール・ピュー|Paul Pugh

エアライン デザイン|Airline Design
創設者+チーフデザイナー|Founder + Chief Designer

Airline Designは、東京を拠点とする国際的なデザインスタジオで、北米とアジアに広がるチームメンバーとクライアントがいます。

デザイナーとして30年近い経験を持つポールは、チームを率いるクリエイティブ・リーダーとして活躍してきました。時には有名ブランドのデザインを担当したり、ポールがリーダーのデザインチームが開発してきたプロダクトの多くが、今では数多くの人々の日常に不可欠なものとなっています。Airlineを立ち上げる以前はfrog designのデザインVPを務め、AmazonのKindleの開発ではエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、Under Armourでは副社長として活躍しました。Airlineを含めこれまでに3つの組織のファウンダーとなったポールですが、そのルーツは建築にあります。また、ソフトウェアUXにも従事した経験を持ち、近年はプロダクト/ インダストリアルデザインを得意としています。この経験はソフトウェア開発プロセスと製造に対する理解を深め、あらゆる領域をまたがる素晴らしいデザインを生み出しています。

浅岡 秀亮  Hideaki Asaoka

株式会社飛騨の森でクマは踊る(ヒダクマ)所属。岐阜県飛騨市出身。名古屋芸術大学卒業後、家具メーカーやインテリアデザイン事務所で家具製作・デザインを経験。2016年にヒダクマに参加し、プロダクト開発や設計、制作、施工など幅広く担当。木に対する幅広い知識や、職人への深いリスペクトを持ち、木に新しい価値を付与すべく日々奮闘中。

ジャスミン・マイエッタ|Jasmine Maietta

ラウンド21 創設者|round21 Founder

ジャスミンは、アートとスポーツを融合させたライフスタイルブランド、round21の創設者です。round21を立ち上げる前は、Under ArmourReebokHasbro、フィットネスブランドのPelotonなど、世界的に有名なブランドのマーケティングを担当していました。 彼女は、アートやスポーツは文化やコミュニティを創造し、世界を形成する信念を伝えるものだと信じています。 彼女のビジョンは、ピンポンを皮切りに、round21を人間の創造性とつながりを強化することで知られるブランドにすること。 ジャスミンにとって、最高のデザイナーやメーカーとパートナーを組むことは重要なことであり、高品質で美しく機能的な製品の評判が高い日本に目を向けました。

 

Member’s Voice

Our client found table tennis to be a sport category that was fairly static and ripe for innovation. There are many good products, particularly made in Japan, but they are visually conservative and haven’t gone through the same usability rigor as other sport and fitness equipment categories. Our client, round21, had a clear vision to create a highly crafted product that brought art and design together. While the red and black paddle faces qualify for tournament play, Jasmine took the risk to take over that space with vibrant art. Players can now pick designs that best represent their personality or play style. Airline was primarily involved in developing the paddle. We started working in cardboard and 3D prints, testing the designs in the Table Tennis halls of Shibuya. When we got to designs that felt good in the hand we reached-out to the talented team at Hidakuma to help us create samples that we could test with real players. Those samples help establish the final design and Hidakuma was also engaged to make a run of production paddles.

Paul Pugh
Airline Founder + Chief Designer

 

私たちのクライアントは、卓球というスポーツカテゴリーは、かなり静的でイノベーションの可能性を秘めていると考えていました。日本製を中心に良い製品はたくさんありますが、デザインは保守的で、他のスポーツやフィットネス機器のカテゴリーのような使い勝手を追求した製品は多くありません。私たちのクライアントであるround21は、アートとデザインを融合させた高度な製品を作るという明確なビジョンを持っていました。赤と黒のラバーは公式大会の規定に基づいた仕様でプレーには適していますが、round21のジャスミンはそのラバーを鮮やかなアートで表現するというリスクを取りました。これによりプレーヤーは、自分の個性やプレイスタイルを最もよく表したデザインを選ぶことができるようになりました。ラケットの開発は主にエアラインが関わっています。最初はダンボールや3Dプリントで、渋谷の卓球場でデザインを試しました。手になじむデザインにたどり着いた段階で、ヒダクマの優秀なチームに協力してもらい、プレイヤーに試してもらうためのサンプルを製作しました。そのサンプルが最終的なデザインの決定につながり、ヒダクマはラケットの製造にも携わりました。

ポール・ピュー
エアライン ファウンダー・チーフデザイナー

小さいものほど大きく見える。いつも大きな家具を作ってきた分、その難しさや課題を実感したプロジェクトです。
小さいものは安く作れそうだけど、実際は小さいものほどコストがかかります。小さいものは機械に入らないので、手作業が多くなり効率が悪い。
大きいものは多少のズレは目立たないので許される。でも小さいものはコンマ単位の精度が求められる。繊細な作業が求められるのでロスも多い。
1個あたりたった100円のコスト増減も大きく響くので、ひとつの工程でいかに効率よく作るかも考えなければならない。
そしてなにより、小さなものを作れる工場が、どんどん日本から減っています。
ポールが持ってきたこのプロジェクトは、まさに飛騨のものづくりに対する挑戦状だっと思います。色々な人のアイデアや技術。そしてテクノロジーの力も借りて、一つひとつの課題と向き合うきっかけになりました。知恵と技術の結晶が詰まった素晴らしい卓球ラケットです。
僕は昔からバスケットボール一筋ですが、ここしばらくは卓球一筋でいこうと思います。

浅岡 秀亮
ヒダクマ

In a lot of ways, the story of round21 can be summarized by “play in style.” Because ping pong has been played by some of the greatest icons, creatives, and makers of our time (presidents and heads of state, musicians, professional athletes, entertainers and the rest of us), I believed it was time for a brand to give these creators a way to express themselves, have fun, and look good doing it. To live up to the hype that round21 will create, we needed products that expressly presented art in a sophisticated and crafted way. We looked to Japan (home of A Bathing Ape, UNIQLO, COMME des GARÇONS and Harajuku) to inspire a new way to play. We have good taste, so it wasn’t easy, but after multiple rounds of concepts, consumer testing, and testimonials, we knew we had the original round21 paddle.

Jasmine Maietta
round21 Founder

 

いろんな意味で、Round21のストーリーは “Play in style(粋に遊ぶ)に集約されると思います。現代の偉大なアイコン、クリエーター、時代の寵児たち(大統領や元首、ミュージシャン、プロスポーツ選手、エンターテイナーなど)が卓球をしてきました。私は、このようなクリエイターの方々に、自分を表現し、楽しみ、そして見栄えのする方法を提供するブランドが必要だと考えていました。round21が打ち出す大きなイメージに沿うよう、私たちは洗練された技巧で明確にアートを表現する製品が必要でした。 そこで、私たちは日本(A Bathing ApeUNIQLOCOMME des GARÇONS、原宿などの本拠地)に目を向け、新しい遊び方を模索していました。私たちのセンスをかたちにすることは簡単ではありませんでしたが、何度も構想を練り、消費者テストを経て、その結果、オリジナルのround21のラケットをつくることができました。

ジャスミン・マイエッタ
ラウンド21 創設者

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