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  • デザイン合宿
人と木の関係を見つめ直す。LIXILのプロジェクトチームによる2日間の飛騨合宿

[Outline]

凝縮した時間と空間を共有しながら製作する2日間のデザインキャンプ

2019年9月、FabCafe Hidaを拠点に、木と異素材を組み合わせた建具のプロトタイプ製作を集中して行う2日間の合宿を実施しました。この合宿は、住宅設備大手の株式会社LIXIL Technology Research本部 人間情報科学研究所で進められている、ヒトとモノとのインタラクションの研究の一環として行われました。今回の目的は木を切り口に、“人と素材と木の関係を見つめ直すこと”です

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参加したのは、LIXILの研究者の湯田さん・小林さんを中心に、富山の高岡から金属作家の上田さん、建築士の沼さん、東京からロフトワーク/MTRLのプロデューサー小原(弁慶)さん、クリエイティブディレクターの松本さん、金子さん。ヒダクマからは、設計・製作を担当する黒田、飯山が参加しました。

合宿では、「木」をテーマ素材に据え、その組み合わせや、組み合わせから生まれる印象、価値の検証を行いました。
素材を手に取り、観察しながら、素材の選定やその組み合わせについて話し合い、プロトタイプとしての建具の製作を行いました。また、素材のひとつである広葉樹について知るため、製材所や製作パートナーである職人の工房へ訪問し、木が加工できる材になるまでの過程や、製品化に必要なディデールへの理解を深めました。この過程を通して、人と木との関係を見つめ直し、その関係性に潜む可能性を探っていきました。

ともに時間を共有しながら、2日間でアイデアをまとめ、形にする合宿とはどんなものだったのでしょうか。本記事では、当日行われたプログラムの様子と参加者の声をご紹介します。

(内容は一部非公開のため、プロジェクト詳細や出来上がったプロトタイプの掲載はございませんので、予めご了承ください。)

*本プロジェクトは、株式会社LIXILと株式会社ロフトワークで進行するプロジェクトの一環で実施されています。
 事例:「3日間でアイデアを形に。素材開発プロジェクト」(株式会社ロフトワーク)

【プロジェクト概要】

  • 支援内容
    プロトタイプ製作
    要件整理・企画提案
    家具製作ディレクション
    木材選定・調達
    工程管理
    飛騨滞在期間中の拠点としてFabCafe Hidaでの宿泊、Cafeスペースの提供
  • 期間
    2019年9月
  • 体制
    クライアント:株式会社LIXIL
    プロデュース・プロジェクトマネジメント・クリエイティブディレクション:小原和也・松本遼・金子由(ロフトワーク)
    家具設計:沼俊之(dot studio)
    鋳金製作:上田剛
    家具設計・家具製作ディレクション:飯山晃代・黒田晃佑 (ヒダクマ)
    家具製作:すぎした工房
    協力:西野製材所

[Program]

FabCafe Hidaが一気に加速するプロジェクトルームに

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今回の合宿では、木と異素材を使った建具のプロトタイプ4種を製作。ディスカッション、加工の調整も現場で行い、同時に共有・承認され、一気呵成に進んでいきます。その日のFabCafe Hidaの一室は、スピード感溢れるプロジェクトルームとなりました。

合宿のスタート前の準備として、4種類のうちのひとつの製作を進めていた富山チームとヒダクマチーム。合宿初日、それぞれが事前に準備・加工したパーツを接合。ひとつ目のプロトタイプを完成させ、その評価を行いました。
その後、残るプロトタイプのラフ案を作成。樹種の候補を検討しました。

サンプルを見ながら樹種の選定

加工した後でも木の香りは残っている

Day2では残りのプロトタイプの方針を決めるディスカッションと、図面作成・使用する樹種の選定を行いました。

広葉樹のサンプル。これらの中にある黒い木は、塗装したわけではなく、実験的に鉄媒染し色付けされた木

木はいかにして使える木となるのか

Day2の午前中には、飛騨の木の知見を広めるためのヒダクマツアーを実施。ヒダクマスタッフの引率で西野製材所へ訪問しました。ここは県内でも有数の広葉樹に特化した製材所です。迎えてくれたのはオーナーの西野さん。原木を挽き、乾燥し、加工できる材に仕上がるまでに通常1年以上はかかるという製材の工程について説明してくださいました。

製材所のオーナー西野さん

天然乾燥中の木

上田さんは金工作家の視点から木を見つめる

今回のプロトタイプにも活用した樹種のひとつであるホウノキが、ちょうどこの日、製材されていました。板材でなく、原木から見ることができ、ホウノキ特有の芯材・辺材の色の違いを見れる貴重な機会となりました。

ホウノキを製材する様子

芯材の色は、淡いグリーン

西野さんから特別にめずらしいスポルテッドウッドを見せてもらいました。スポルテッドウッドは、キツツキや虫などによって木を傷つけられた箇所に、菌などが入り込み、筋状に黒く変色した模様のある木のこと。市場には出回らない木で、初めて見るスポルテッドウッドにみなさん興味津々でした。

筋状に黒い模様の入ったスポルテッドウッド

現場で製作者と一緒にデザインを考える

家具職人の杉下さん

次に、プロトタイプの製作で協力してもらっている杉下さんの工房を訪れました。
それぞれの木が持つ、歪みやねじれ、反りなどの性質から、今後設計で調整する必要があると思われるディテールについて、アドバイスをもらいました。

ブレイクタイムでリフレッシュ

短期間で集中して行われたワーク。合間のランチやディナータイムでほっと一息。
Day1のディナーは、明治3年創業、池波正太郎ゆかりの老舗料亭旅館・蕪水亭の薬草料理をケータリング。ワーク後、ミネラルたっぷりのからだに優しい料理をみんなでいただきました。

蕪水亭さんのお料理

Day2はちょうどカフェの定休日。いつもヒダクマでお世話になっている飛騨の家具職人・堅田さんからの提案で、「カフェでそうめん流しをしよう!」と、プロジェクトメンバー、ヒダクマスタッフみんなでランチタイムを楽しみました。

この日のために竹を取ってきてくれた堅田さん

製作の達成感と楽しさを感じる2日間の効果

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「何よりもどのメンバーも楽しんでいるように感じ、途中仕事だという事を忘れてしまうぐらい私自身楽しんでいたのを覚えています。」とLIXILの小林さん。合宿後、メンバーは1ヶ月の間に残りのプロトタイプを完成させます。それらの製作がスムーズに進み手戻りがなかったのも、集中した飛騨合宿でメンバー間の意思疎通が上手くいった成果です。

[Member]

小林 秀平|Shuhei Kobayashi
株式会社LIXIL
Technology Research本部
人間情報科学研究所
1987年京都生まれ。立命館大学大学院修了。2011年株式会社LIXILに入社。ヒトとモノのインタラクションを切り口に住宅設備・建材の顧客価値向上をめざし、研究に取り組んでいる。

小原 和也|Kazuya Ohara
株式会社ロフトワーク
FabCafe MTRL プロデューサー
2015年ロフトワークに入社。素材/材料の新たな価値更新を目指したプラットフォーム「MTRL」の立上げメンバーとして運営に関わる。現在はプロデューサーとして、素材/材料基軸の企業向け企画、プロジェクト、新規事業の創出に携わる。モットーは 「人生はミスマッチ」。編著に『ファッションは更新できるのか?会議 人と服と社会のプロセス・イノベーションを夢想する』(フィルムアート社、2015)がある。あだ名は弁慶。

松本 遼|Ryo Matsumoto
株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター
京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科卒。在学中からデザイナーとして活動し、2007年にはUNIQLO CREATIVE AWARD 佐藤可士和賞を受賞。卒業後デザイン事務所勤務を経てフリーランスとなり、京都福寿園の広告制作や、10万筆の署名を集めたLet’s Dance署名推進委員会の広報戦略に参画する。
2017年ロフトワーク入社。意匠としてのデザインだけでなく、プロジェクトの上流からより深くクリエイティブプロジェクトに関わることを目指す。

金子 由|Yui Kaneko
株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター
日本大学芸術学部写真学科卒業後、都内スタジオでのスタジオマン勤務を経てフリーのフォトグラファーに。自分の作品が広告や雑誌となり世に出た時、写真とデザイン相互関係の重要性を痛感したため、並行してグラフィックデザインを学ぶ。自身の経験を生かし、ロフトワークに入社後はクライアントとクリエイター両者を理解し、適材適所に采配を振れるようなディレクターを目指している。現在もフォトグラファー、映画のスチール、デザイナーとして活動中。趣味は人が寝ているときにみる「夢」の話を聞くこととバレエ鑑賞。

上田 剛|Tsuyoshi Ueda
金属作家
1986年奈良県生まれ。2010年金沢美術工芸大学工芸科卒業。2012年東京藝術大学美術工芸科修了。2019- 金沢美術工芸大学工芸科 非常勤講師。

沼 俊之|Toshiyuki Numa
dot studio代表
一級建築士
1982年富山生まれ。2007年法政大学大学院修了。2007-2012年設計組織ADH勤務。2012年からdot studio代表。主な受賞に、2005年法政大学卒業設計賞、JIA東京都卒業設計コンクール審査員特別賞。2012年設計組織ADH担当物件の「真壁伝承館」において日本建築家協会賞、日本建築学会作品賞、グッドデザイン賞など受賞。2017年富山県建築賞。

黒田 晃佑|Kousuke Kuroda
ヒダクマ 木のクリエイティブディレクター
大阪府出身。大学で建築と木工を学んでいるうちに、光の現象に興味を持ちフィンランドへ暮らしと共にある家具や照明のデザインを学ぶために留学。そののち、木という素材の扱いを家具に限定せず考え森と関わっていくヒダクマに興味を持ち2019年から参加。人と素材、デジタルとアナログなど事象と事象のバランスを調整したり、繋ぐことで新しいものや価値を創る事を目指す。日常や生活を大切にしていて、散歩や音楽を探したりが趣味。

[Member’s Voice]

2日間という限られた時間でのキャンプでしたが、ヒダクマ/デザイナー方々とディスカッションしながらその場でプロトタイプの仕様を決めて行く作業はライブ感があり、とても新鮮でした。何よりもどのメンバーも楽しんでいるように感じ、途中仕事だという事を忘れてしまうぐらい私自身楽しんでいたのを覚えています。初日の夜には宴会もあり、みんなで地元のお酒で盛り上がった翌日も、全員定刻には作業に取り組んでいたのはさすがでした。
キャンプを通じて身近にあるけど知らなかった木の一面、例えば製材直後にしか見られない色がある樹種が存在することなど、新たな発見も多かったです。まだまだ木には我々の知らない魅力が多いのだと知りました。今後も木という素材の特性を活かした新たな顧客価値の創出向けて、地道に研究を進めて行こうと思います。より一層木のことが好きになった2日間でした。

株式会社LIXIL
Technology Research本部
人間情報科学研究所
小林 秀平

「新しい素材/建材をつくる」を合言葉に、着実に本プロジェクトは進捗をみせています。プロジェクトで一番意識していることは、頭や文字で描くだけではなく「つくりながら考える」ということです。描いたアイデアもスケッチも具体的に「モノ」にしてみて検証する、その検証を経てまたつくる、、このような過程の中でこそ、研究開発は推進されます。
「まずはつくってみる」ための集中的な時間として、フィールドに飛び出し、素材と対話し、メンバーで寝食を共にした時間は、プロジェクトが更に加速するための時間として、非常に有意義なものでした。

株式会社ロフトワーク
FabCafe MTRL プロデューサー
小原 和也

あらかじめ金属のリサーチとして進んでいた素材研究を如何に木と繋げるか。実際にモノに触れ議論を重ねてプランに落とす。その過程の中で、出来上がったプロダクトはもとより、改めてテーマの魅力、木・金属それぞれの素材としての魅力を感じることができました。
恐らく全員がその魅力を感じる中、同じものを作るために同じ時間を過ごすことで、違う場所から集まった違う専門性を持つ集まりでも、通常ではあり得ないようなスピードで「チーム」に成れた様に思います。

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター
松本 遼

このプロジェクトを通じて、例えば、それまで「木の椅子」と思っていたものでも、なんの木なのか?なぜこの木を使ったのか?などを考えるようになり、前よりも愛着がわくようになりました。木と金属の相性についても有識者の方々に混じって意見し、じっくりと向き合ったことでより理解が深められたと思います。
インターネットで調べているだけではわからない素材の「匂い」「重さ」「質感」をその場で確認できる環境で合宿をできたことが、プロジェクトの質をよりよくしたと思います。

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター
金子 由

今回のプロジェクトにおいて、金属という素材の新たな側面を探るべく、素材を加工する作り手としてとして参加させて頂きました。キャンプを通して、プロジェクトチームの皆さんと凝縮された時間と空間を共有し、より私個人的な素材への感情も含めた、金属の表現の提案が出来たかと思います。
錆びることが避けられない金属という素材の宿命をどのように受け入れるのか。それは、単なる既存のイメージでしかないかもしれないという始点から、ではそれを書き換えていくにはどのようなアプローチが可能か。素材と常に接している作り手だからこそ見える素材の魅力を、制作物として使い手に伝える為に、試行しました。

金属作家
上田 剛

ヒダクマチームの木に対する知識と、金工作家の上田剛氏の金属に対する知識とを同時に吸収しながら形に落とし込んでいく作業は、普段の木目の強弱、色味、板目柾目から樹種を選定するテクスチャーとして木と向き合うこととは違い、自然の長い時間軸の中で木の成長の一部を切り抜いて使わせてもらう感覚であり、自分のものづくりに対する枠を広げてくれました。そのプロセスと飛騨の夜を味わいに定期的に通いたいと思わせてくれました。

dot studio代表
沼 俊之

木工では木のとり扱いの事を「木づかい」と言います。
僕はこの言葉が人に対して使う言葉である「気遣い」に通じるところがあると思っていて大切にしているのですが、今回はまさにとことん「木づかい」に向き合ったプロジェクトでした。
木は時間とともに表情を変える面白い素材だと思っています。例えばそれは光の環境に作用されたり、使う人との関係であったり。
その変化は劣化、というより馴染む。という表現の方が近いと感じられると考えています。一つ一つ異なる表情をもつ材料をこの「時間」という軸に乗せた時にどうコントロールしていくか、どう使うかをこのキャンプを通じて意見を交えることができたように思います。

ヒダクマ 木のクリエイティブディレクター
黒田 晃佑

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