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ハンズオンで組木を学ぶ!シンガポール・ニーアンポリテクニック校の合宿プログラム

Outline

飛騨の伝統建築や木工技術、暮らしを体験しながら学ぶ4泊5日の教育プログラム

2019年9月、シンガポールのニー・アン・ポリテクニック校のデザイン・環境学科で建築とプロダクトデザインを学ぶ学生が飛騨にやって来ました。4日間滞在した学生と先生は総勢31人。ヒダクマは、学生がFabCafe Hidaを拠点にして飛騨の木工技術や暮らし・文化に触れる合宿プログラムを企画・運営しました。

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学校のスタディトリップの期間は1週間。行程は、日本に到着した後、飛騨に直行し4日間の飛騨合宿。その後東京に移動して3日間滞在し、都内の美術館や名所などを訪れるというもの。このスタディトリップは、日本の伝統的な建築やデザイン、言語、食事、そのほか社会規範などを体験しながら学ぶ教育プログラムです。

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ヒダクマは飛騨でのプログラムを全面的にサポート。ほとんどの学生が初来日の中、普段暮らす場所とは違う飛騨という環境で、どんな人と出会い、どのような時間を過ごしたのか。地域のコミュニテイがあるからこそ実現した合宿の魅力をご紹介します。

【プロジェクト概要】

  • 支援内容
    4日間の飛騨での合宿プログラムの設計・企画・運営
    飛騨滞在期間中の拠点としてFabCafe Hidaでの宿泊・食事、Cafeスペースの提供
  • 期間
    2019年9月15-19日:建築学科 学生14名、教員2名
    2019年9月22-26日:プロダクトデザイン学科 学生13名、教員2名
  • 体制
    クライアント:ニー・アン・ポリテクニック校 デザイン・環境学科
    プログラム設計・運営:飛騨の森でクマは踊る
    協力(順不同・敬称略):佐々木礼子(216WORKS)、Mother’s House、田中清雄(田中建築)、直井隆次、堅田恒季(calm)、鈴木岳人(KOIVU)、Eva Gardet、伊藤あかね、西野製材所、飛騨の匠文化館、飛騨産業株式会社、白川郷ガイドサービス、合掌造り民家園、飛騨市ほか

Background

建築学科のラジャ先生

プロダクトデザイン学科のテレンス先生(写真右)

このスタディトリップを担当したのは、ニー・アン・ポリテクニック校でプロダクトデザインを教えるテレンス先生と、建築を教えるラジャ先生。「学生たちがハンズオンで木造建築について学べる場所はないか」と、インターネットで探していたラジャ先生が、ヒダクマのWebサイトでワークショップの記事を見つけ、2018年9月に問い合わせてくれたことがきっかけです。その後、建築のグループだけでなく同校のプロダクトデザインのグループも同じプログラムで合宿をしたいというご要望をいただきました。2019年4月上旬には、テレンス先生が事前視察に訪れ、FabCafe Hidaや古川周辺の施設を見学してくれました。

Program

家具職人さん直伝!組木をつくるワークショップ

ノミの使い方を説明する家具職人の鈴木さん

のこぎりやノミなどのハンドツールを使って、「三本組木」をつくるワークショップを実施しました。三本組木は、3本の材を組み合わせて、木材をそれぞれ直角に交わるように組んだ組木です。ワークショップでは、3人1組のグループとなりひとり1本のジョイントを製作。素材はクルミやクリなど広葉樹の角材です。

墨付けの仕方を説明する堅田さん

組木づくりをサポートするエヴァ

ワークショップ用の道具

3人1組のグループに分かれ、ひとり1本のジョイントをつくる

最後に、3本を組み合わせるので、チームワークも大切

出来上がった組木をみんなで見て評価し合う様子

三本組木完成!

「教科書を読むだけでなく、実際にやってみることに重きを置いている学校だからこそ職人さんに教わりながら、組木づくりができてよかった」とテレンス先生。学生が1本の組木をつくることに要した時間は平均3時間。最後までこだわってつくろうと試行錯誤していた学生もいました。「どうやったらうまく削れるだろう?」「なぜ組む時にひっかかってうまく組めないのかな?」など、木や道具に触れる体験を通して、問いや発見を見つけることができたのではないかと思います。

飛騨の広葉樹カトラリーの製作

滞在中のあいた時間で、広葉樹を使ったFabCafe Hidaのオリジナルキットで、カトラリーを製作。粗い紙やすりで自分の好きなかたちに削って、次に目の細かい紙やすりで磨き、天然のオイルで仕上げます。学生のみなさんにとって、のこぎりやノミを使うのは初めてで少し難しかったかもしれませんが、こちらはより簡単にできるので、リラックスしながらものづくりを楽しんでくれました。

紙やすりでカトラリーの形をつくっていく

バターナイフをつくる学生。この後天然のオイルを木に染み込ませて仕上げをする

テレンス先生のつくったお好み焼き用ヘラ

大工の技術を間近で体感!田中師匠による組木デモンストレーション

組木をつくる大工の田中さん

日本の木造建築に使われる組木のひとつ「金輪継」を大工・田中さんがつくってみせる組木のデモンストレーション。金輪継は、柱や梁などをつなぐために用いられる強度のある伝統的な組木です。

糸で墨付けを行う様子

ノミで削っていく

田中さんは、墨付けを行い、のこぎりやノミ、カンナを使ってつくっていきます。学生は、この前に三本組木に挑戦していたので、自由自在に道具を使い、あっという間に組木をつくる田中さんの凄さをより体感することができました。田中さんから、のこぎりの使い方やノミの手入れ、またデジタル加工と手仕事の違いについて話を聞かせてもらったり、カンナで木を削る体験もさせてもらいました。

デジタルマシンで加工した材を見せながら、それぞれの得意なこと不得意なことを話す田中さん

コツを教えてもらいながらカンナで削る練習も体験

木製品の製材から製造までのプロセスを学び、デザインとは何かを考える

森から切った木がどのように製品になるのか、その一連の流れを理解するため、それぞれの現場を見学したり、理解を深めるレクチャーを行いました。

広葉樹の製材をしている西野製材所のオーナー西野さんから話を聞く

丸太の皮を剥いでいく様子

はじめに訪れたのは、家具用の木を製材する西野製材所。丸太の原木から家具として使える木となる過程をオーナーの西野さんから教えてもらいます。

飛騨産業の工場見学

飛騨の家具メーカー・飛騨産業の工場では、製材された木から家具が製造される過程を見学。飛騨産業で働く方から各工程の作業内容や、デザイン、生産性、効率性、安全性など様々な視点からものづくりについての話を聞きます。また、曲げ木の作り方を間近で見ることができました。その後飛騨産業のショールーム「飛騨の家具館 高山」にも訪れ、完成した家具製品を見学しました。

プロダクトの製作に関わる現場訪問のほか、飛騨の森が持つ歴史、日本の林業の現状や課題、飛騨の広葉樹の魅力を知ってもらうヒダクマレクチャーを実施しました。様々な事情から活用が難しいとされている日本の広葉樹ですが、広葉樹を価値のあるものとして生まれ変わらせようと、ヒダクマが国内外の建築家やデザイナーとともに製作した飛騨の木を使った家具や空間事例も紹介。

プロダクトをどんなプロセスでデザインするのか。デザインが、森を守り、育てること、森とともに人の暮らしに影響を与えることについて考える時間となりました。

 

飛騨高山のユネスコ世界遺産・白川郷で合掌造りの建築と出会う

茅葺きの屋根

屋根の素材である筒状になった茅を見る学生

1995年にユネスコの世界遺産に登録された美しい合掌造り集落の白川郷。伝統的な建築とそこに住まう人々の知恵を学ぶ白川郷ツアーを行いました。
合掌造りの中でも非常に完成度の高い作りと言われる、その昔酒造業を興していたという神田家を見学。地元のガイド・上手さんから建築の構造や茅葺き屋根についてや、昔と今の暮らしにまつわる話をうかがいました。

白川郷の美しい町を散策

駒尻という耐震のための木組み

囲炉裏の近くの床下では火薬の原料をつくる煙硝づくりが行われていた

日常を過ごすことで学ぶ、日本の慣習や飛騨の暮らし

複雑な組木を見せる元大工で建築士の直井さん

鯉が泳ぐ瀬戸川沿いには白壁が続く

伝統的な日本の木造建築の町並みを見ることのできる飛騨古川の町。組木の技術が用いられているお寺の門、昔の灯り・和ろうそくを作っている老舗店、お祭りの神輿を入れるための蔵などから、伝統文化の息吹を感じることができます。飛騨の匠たちの高い大工技術をはじめ歴史・文化を学生に感じてもらおうと行った町歩きツアー。訪れた飛騨の匠文化館では、千鳥格子などをはじめとする組木パズルを楽しんだり、複雑で多様な組木に触れました。町を歩きながら、元大工で建築士の直井さんから、お寺を参拝する際の作法、その時代の歴史を背景に町家の構造が何を意図して建ったのかなど話を聞くことができました。

FabCafe Hidaでみんなでランチ

FabCafe Hidaは築100年以上の古民家を改修したカフェ・ゲストハウス・木工房のある施設。都会と違い、とても静かな場所にあります。学生はここで寝食を共にしました。「学生が静かなところで集中できたことが良かった。日本の家で過ごしたことも大きな経験」とプロダクトデザイン担当のボーイ先生。シンガポールでは、アパートメントやマンションに住む人がほとんどだそう。靴を脱ぐこと、畳の部屋でドアが紙でできた襖や障子であること、ベッドではなくお布団で寝ることなども学生にとって日本の暮らしを学ぶ貴重な体験。最終日には、靴を脱いだ時にきれいに靴をそろえている学生もいて、この数日で日本の作法のひとつを実践する学生に先生もヒダクマスタッフも感心してしまいました。

夕食のケータリングは、Mother’s Houseが提供

あたたかくて美味しい家庭料理

今回の合宿では、多国籍の学生のためにハラールの料理を提供。メニューは、飛騨の食材、特に野菜をたっぷり使った日本の家庭料理です。ラジャ先生からは「野菜やフルーツはこんなにたくさん見たことがなく、ヘルシーで健康的で毎食美味しかった。日本人の食生活を知ることができてとても良かった」とご好評をいただきました。

 

Special thanks!!

4日間の滞在期間、学生のみなさんが楽しそうに過ごしていた姿が何よりうれしかったです。シンガポールから飛騨まで来てくれて本当にありがとうございました!

白川郷にて、建築グループのみなさん

FabCafe Hidaにて、プロダクトデザイングループのみなさん

合宿プログラムのご案内

ヒダクマでは、飛騨の豊かな広葉樹の森や、地域の人々との出会いを通して、歴史・文化、産業を学んだり、開発・研究、滞在製作、研修などを行う合宿プログラムを提供しています。
学校・大学の教育プログラムとしての合宿のほか、建築家・デザイナーのためのレジデンスプログラム、プロダクト/素材開発・研究のためのデザイン合宿、チームビルディングのための企業研修など、みなさまのご要望に寄り添ったプログラムの設計・運営をいたします。
合宿 in 飛騨 のご案内
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お帰りの際、学生のみなさんからもらった素敵なメッセージ