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広葉樹の家具を使った新オフィス・Neos Sapporo Developers Parkからみる「対話」の変化と「木」の効果

Outline

コミュニケーションが生まれる 木のオフィス

スマートフォンアプリ・システム・クラウドの構築・運用、チャットボットやFintech事業の開発を行い、暮らしを便利で豊かなものにしているネオス株式会社。2019年7月、同社は、札幌に点在していた4つのオフィスを統合し、新たに「Neos Sapporo Developers Park (NSDP)」を開設しました。

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「エンジニアだからこそ提案できるプロダクトを作りたい。」

「そのためには日常的な社員間のコミュニケーション機会を増す必要がある。」

本プロジェクトを主導したネオス株式会社の蒲生さんのビジョンは明快でした。その指針に基づき、ヒダクマは設計者の古市さんとともに、彼らにとってコミュニケーションを促進するための仕掛けとは何か?という問いにひとつずつ応えるべく、空間・家具を設計。働く人の様々なシーンに合わせて場所を選べる、またメンバー間が自然と連携を取りやすいオープンな環境となっています。

随所に使用している広葉樹からは木の持つあたたかみを感じることができます。働く人の様々なシーンをイメージし、それぞれの空間や家具に合った樹種、木目や色味を選定。木本来の力を引き出すことに徹底的にこだわり製作したことで、有機的でメリハリのある空間が実現しました。

【プロジェクト概要】

 ●支援内容
 ・要件整理・企画提案 
 ・空間設計・家具什器設計
 ・ 製作ディレクション
 ・ 家具什器プロトタイプ製作
 ・ 製作図作成・3Dモデリング
 ・ 木材選定・調達
 ・ 工程管理
 ・ 加工・製造
 ・ 搬入・設置

 ●期間
 ・
2019年1月〜2019年6月

 ●体制
 ・クライアント:ネオス株式会社
 ・設計:古市淑乃(古市淑乃建築設計事務所)
 ・設計・製作ディレクション:岩岡孝太郎・浅岡秀亮・飯山晃代 (ヒダクマ)
 ・製作:田中建築、藤井家具製作所、ノナカ木工所、片桐銘木工業、トキワランバテック、イーシー・キッツ
  内装工事:アクラス
  会議室ガラス面デザイン&ペインティング:YUSEI SAGAWA

Outputs

空間は、三角平面の大きなブース家具(以降、三角ブース)を中心に、社内用途だけの執務エリアと社外用途にも開かれる共有エリアに分かれています。それぞれの機能に合わせて木の使い方にも配慮し、各エリアに豊かな個性を持たせています。

三角ブース

三角ブースのキッチン(写真・左奥)とソファコーナー(写真右奥)

吸音マットを貼ったミーティングブース(右手前)、一番奥はペインティングを施したガラス張りの会議室、左手は窓に面したカウンター席

TELブース

三角ブースにはキッチン(調理機能はない、コミュニケーションのための隠喩としてのキッチン)を中央に挟み、1名利用のTELブースから8名利用のプロジェクトブースまで、扉のない機能ブースが内包されています。

全てのブースは動線に面していて、空気的にオープン。つまり、社内を移動すると必然的に誰と誰が話をしているのか視界に入り、話の内容もうっすらと聞こえて来ます。

「XXさんと話してたね。珍しいね、何の話してたの?」
「さっき、XX技術の話をしていたけど、実は以前使ったことがあって。」
「お、ちょうどいい所に通りかかった。XXプロジェクトのキックオフしてるから君も参加してよ。」

というように、この環境を日常的に繰り返すことで、予定されたコミュニケーションから、徐々に予定不調和で偶発的なコミュニケーションに発展するよう設計しました。

ソファコーナーの奥には窓際に面したカウンターに座る人が見える窓が開けられている

吸音マットを貼ったミーティングブース

全面ホワイトボードのプロジェクトブース

プロジェクトブースは、通称「ウォー・ルーム」と呼ばれ、プロジェクト単位である一定期間集中的に開発を行う戦略室のような部屋。ネオス株式会社の皆さんは普段あまりホワイトボードやポストイットを使用しないとのことでしたが、あえて新しいプロジェクトの進め方にも挑戦しようと設けることになりました。

三角ブースの壁面は「広葉樹突板張り」。通常突板を使用する際は木目や色にそこまで神経を使わず、その風合いは単調なものが多いのですが、今回はただ突板を並べるのではなく、そこにいる人がどのような印象を持たれるかをイメージしながら木目、色、配置を細かく調整しました。これにより、自然の木が持つ豊かな表情を引き出し、有機的な印象を作り出しています。

<仕様>
 材料:本体|広葉樹化粧合板(ケヤキ・カバ、カエデ)
    テーブル・キッチン天板|カエデ、ウダイカンバ、ミズメ
 台数:大1台 小1台
 サイズ:大 W7200 x D4450 x H2300 小 W3350 x D5860 x H2300
 仕上げ:本体|天然オイル仕上げ
     天板|ガラス浸透性塗料仕上げ

HUBカウンター

執務エリアの中央通路を占めるHUBカウンターは無垢の天板と、厚さ5mmの薄板で仕上げられています。カバ科2樹種の赤い部分と白い部分を分け、それぞれのボックスに色とサイズの変化を持たせています。背の高いカウンターは書類やディバイスの収納ですが、スタンディングでのショートミーティングテーブルとしても使うことが可能。3つの高さのカウンター+植木鉢ボックスの構成で、執務エリア内に共有エリアへと繋がるランドスケープを生み出しています。

<仕様>
 ●収納カウンターボックス
  材料:ミズメ、ウダイカンバ、ポリランバー
  台数:6台
  サイズ:最大 W2600 x D800 x H720  最小 W1600 x D700 x H1020
  
仕上げ:ガラス浸透性塗料仕上げ

 ●植栽ボックス
  材料:ホオノキ、ランバー
  台数:2台
  サイズ:最大 W600 x D700 x H600
  仕上げ:ガラス浸透性塗料仕上げ

カフェテーブル

よりカジュアルにコミュニケーションが取れるようにカフェスタイルの1本脚のテーブルとしました。ラウンジにどの大きさで何台のテーブルを設けるかは利用人数が読めないので悩ましい問題です。ここでは、1〜2名用のサイズ感の変形した四角天板を基本形として、複数台組み合わせることで、より大人数用のテーブルをフレキシブルに組む方法を採用しました。4つの樹種を好きに組み合わせることができるのも楽しめるポイントになっています。

<仕様>
 材料:クリ、ウダイカンバ、ブナ、サクラ
 台数:大 4台 小 4台
 サイズ:大 W1100 x D850 x H900 小 W850 x D600 x H900
 仕上げ:ガラス浸透性塗料仕上げ

執務デスク

色合いは白く優しい印象のシラカバの合板を使用しています。デスクの足元や天板は広々としたサイズで開放感があるのは、将来社員数が増えた際に増席できることを想定しているからです。

<仕様>
 材料:シラカバ合板
 台数:7台
 サイズ: W4900 x D1400 x H700
 仕上げ:ウレタン塗装仕上げ

窓際カウンター

窓際カウンター (左)

執務デスクと同じくシラカバ合板の窓際カウンター。背面にはミーティングブースがありますが、そこまで気にならず、ひとりで集中したい時やほっと一息つくにはぴったりな席。

<仕様>
 材料:シラカバ合板
 台数:2台
 サイズ: W3000 x D500 x H900 
 仕上げ:ウレタン塗装仕上げ

クローク・シューズボックス

中の人が見えるように丸い小窓かついたシューズボックスとそのとなりのクローク(写真:ヒダクマ撮影)

クローク・シューズボックスは、HUBカウンターと執務デスクの奥にある白い構造物。いずれも社員用エントランスから入るとすぐの場所にあります。空間に溶け込むように設置されており、お客様が来られた時もすっきりと整ったオフィスの印象を与えます。

<仕様>
 材料:白メラミン貼りポリランバー
 台数:下駄箱 1台 クローク 2台
 サイズ:下駄箱 W2300 x D2700 x H1800 クローク W2400 x D2700 x H1800

Process

手間をおしまず、木に向き合う。ディテールから生み出される場所性

エンジニア的生産性を考えれば、窮屈ながらも一人ずつに均等に自席があり、デスクトップPCやモニターがちょうど良い目隠しになって作業に集中できる前オフィスは、ある意味効率は良かったのかもしれません。当然、デスクワークだけでなくミーティングがあり、会議中は社員間あるいはパートナーとの交流機会はありました。当時の状況がベストだとは思わないが、大きな変更が急に生じるのは働くみなさんは困る。よって、私たちが示した最初のプランは「自席は広げずとも狭めずそのまま残しながら、余白の空間にオープンな場をつくりましょう。」というものでした。

初期の図面。青色の部分が今回ヒダクマが納品した家具。中央のHUBカウンターが共有エリアの三角ブースやラウンジ、執務エリアとの境界線を優しくつないでいる(図面提供:古市淑乃建築設計事務所)

初期の頃の三角ブース壁面モックアップのひとつ。数種類の広葉樹を高さ方向に積層したボリュームを目指した時のもの。

ヒダクマとしては、広葉樹の使い方にも注目してほしいポイントがあります。

ひとつ目は、三角ブース壁面。二つ目は、執務エリア内のHUBカウンターです。当初はこれらにも広葉樹の厚材を用いることを想定しましたが、予算オーバーしてしまいました。全体を広葉樹仕上げとしつつもコストダウンする方法として、三角ブースは「突板張り」、HUBカウンターは「薄板張り」を選択しました。無意識に使うと突板も薄板もどこか「本物っぽくない」印象を抱いてしまう仕上げなのですが、何が要因なのかをとことん議論し、「自然」かつ「面白い」見え方になるよう試作を行いました。

結果として、岐阜県産と北海道産の丸太の板目/柾目/ロータリー杢の3種類の突板を混ぜ、木目パターンが反復しないように幅と配置をデザインした「突板張り」と、工場で一枚一枚木目と色味を選別して、芯材と芯材、辺材と辺材が隣り合って地層のようなストライプが生じる「突板張り」を実現しました。

 

無垢材のHUBカウンターディテール。芯材と芯材、辺材と辺材を合わせて地層のようなストライプが生まれた

大工・田中さんがカエデ・カバ・ケヤキの突板化粧板をそれぞれ墨付けし、カットした

4tトラックと2tトラックいっぱいで運ばれた木

施工の様子

田中兄弟による息の合った連携プレー

HUBカウンターを作った家具職人の藤井さん

様々な木の使い方を取り入れた分、加工は複雑になりました。しかし、木の知識に長けた飛騨の職人の高い技術により、難易度の高い空間・家具を作りあげることができました。

Member

古市 淑乃(ふるいち・よしの)
古市淑乃建築設計事務所 一級建築士
1985年三重県生まれ。名古屋市立大学大学院修了。吉村靖孝建築設計事務所、成瀬・猪熊建築設計事務所を経て、2015年古市淑乃建築設計事務所設立。企業における共創スペースの設計など、運営を含めた幅広い視点から空間を作ることを実践している。2018年より京都造形芸術大学非常勤講師。www.ysnfric.com

蒲生 忠志(がもう・ただし)
ネオス株式会社
バリュークリエーション部 統括部長
札幌開発センター 統括部長
1977年札幌生まれ。新たな発想でサービスを生み出しているアメリカで、本場のITビジネスを見ながらコンピュータサイエンスを学ぶため留学を決める。大学卒業後、携帯電話のソフトウェア開発を経験。2012年 ネオス株式会社へ入社しスマホアプリを始めとした自社サービスを中心に開発を経験。エンジニア目線でのアウトプットを意識し、技術者だからこそ提供できるサービス開発を理念とする。

森嵜 志乃(もりさき・しの)
ネオス株式会社
札幌開発センター
2015年ネオス入社

Member's Voice

新オフィスで気に入っている点は、木のぬくもりを感じられるところ、会議できる場所が増えたことです。会議できる場所が多いため、ショートミーティングが増えました。
 フリースペースが多いことにより、気分転換に席を離れて作業することが増えました。

 色合いが前のオフィスと比べて明るくなったので、気に入っています。気分転換の場所ができたことで「たまにはあそこに行こう」という気持ちが出てきました。

 スポンジの間(吸音マットを貼ったミーティングブース)が落ち着きがあって快適。他にも小部屋が合って会議室の確保に困りません。
 会議室までの距離がそこそこあるので割と運動になります。
 部署間のコミュニケーションが増えたような気がします。

 拠点がひとつになったことで、他の事業部の方とも接点が持ちやすくなりました。特に勉強会などの参加者が多くなり、嬉しく感じています。

 気軽に認識合わせの場を作れるようになりました。
突然のミーティング依頼が来ても、フリースペースがあるため場所に困らなくなりました。
 オフィス内に緑があること、木を利用したことなどで、無機質だったオフィスから全体的に明るいオフィスになりました。
 業務的な会話以外でもコミュニケーションが自然と増えました

 仕事の効率のみ考えている無機質なオフィスとは違って、木の優しさを感じられるようなオフィスに仕上がっていることが気に入っています。

 ふと目が疲れた時に遠くを見れる見通しの良さが気に入っています。
 相手がいる打ち合わせ以外でも、もっと積極的にフリースペースを使用しないと勿体ないと思い、使っています。

ネオス株式会社のみなさん

今まで話すことのなかった人たちが話すようになりましたね。まだ数は少ないですが、これまで見られなかった光景が結構見られますね。昼ごはんもキッチンに集まってみんなで食べるようになりました。これまで別々の拠点にいた人たちが、キッチンで自然と隣り合わせになっています。みんな楽しんでくれているようです。とはいえ、まだ自席で食べる人は多いので、もっと積極的に活用してほしいなと思っています。

ネオス株式会社
札幌開発センター
森嵜 志乃

僕はものづくりがしたくてこの会社に入ったので、自分たちでできる、開発者だからこそ提案できるプロダクトを作りたい。そのためにはコミュニケーションが必要ですし、今回のプロジェクトでは、どういうものを作るか常日頃から話せる環境を整えたいということを重視しました。
そこで、岩岡さんから頂いたのは「動線を作ったほうがいい」という提案です。「場所を作って無理やり集めるのではなく、自然と人が流れて出会うほうが対話は生まれる」ということでしたが、実際そのとおりになっています。環境を変えることでこんなに変わるんだなと実感しました。

ネオス株式会社
バリュークリエーション部 統括部長
札幌開発センター 統括部長
蒲生 忠志

今回のプロジェクトでここまで木の使い方に私たちがこだわれた理由、それは、蒲生さんやネオス株式会社の皆さんが一貫して「本物の木の良さ、木の効果」を信じていてくれたからです。オフィス・ウェルネスの文脈で木の効能を科学的/経験的に語ることはできますが、それ以上の可能性(木に人は集い、自然とコミュニケーションが始まるはず)に気づいていたのではないでしょうか。このプロセスをプロジェクトメンバーで共有して出来上がったNSDPは、広葉樹の家具たちと一緒に、内外の人に愛され、大きなビジョンに向かって育てられていくイメージを描くことができました。

ヒダクマ
岩岡 孝太郎

会社概要

ネオス株式会社
ソリューション・コンテンツ・デバイスの3事業を併せ持つユニークなICT企業として、一つひとつの事業拡大を追求するとともに、これらを総合したシナジーで新たな事業を創出し、来る5G時代に向けて、Iot、AIを核にさらなる進化を目指している。https://www.neoscorp.jp/

写真:長谷川 健太 
(Outline,Outputsの(一部を除く)写真)

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