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クルミのぬくもりに包まれた住空間

Outline

木のあたたかさをクルミの壁材で表現

岡山市内にあるマンション住戸のリノベーション。
各部屋の壁、キッチンカウンター、建具をクルミ(国産ウォールナット)の薄板で仕上げました。
設計を担当したのはFabCafe TokyoやKanamaisonを手がけた古市淑乃さん。改修前の空間は大理石の壁や床、大きすぎるキッチンカウンターが目立っており、今後新しい住人としてご年配の方がゆっくりと日常を暮らすには寒々しい印象を古市さんは持ちました。そこで、「木をつかってあたたかさのある空間に変えたい」と考え、ヒダクマに依頼しました。

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ヒダクマは古市さんのイメージを具現化すべく、赤みのある深い暖色系の色味を持ち、木の部分によって色味の差が大きく、壁に貼った際に天然の木ならではの風合いを感じられるクルミの木を提案しました。通常メーカーでは色味のばらつきは敬遠され、木材調達は困難ですが、ヒダクマでは木のあたたかさを表現するため木材を選定し、調達・加工。また板材の混ぜ方にも気を配りディレクションし、最終的には製造管理まで行い、納品しました。
クルミをパッチワークのようにレイアウトすることで、その豊かな表情から木のぬくもりに包まれたような住空間が出来上がりました。

【プロジェクト概要】
    支援内容
 木材選定・調達
 材料規格策定
 工程管理
 加工・製造

【プロジェクト体制】
 設計:古市淑乃建築設計事務所
 製作・製作ディレクション:岩岡孝太郎・飯山晃代(ヒダクマ)
 製作:株式会社カネモク田中清雄(田中建築)
 施工:白崎工業松岡製作所

Outputs

安心感を与えるような木に包まれた空間

空間に合う樹種や規格などを検討し、その時飛騨で入手可能な木から130平米の豊かな表情をもつ美しいクルミの壁材を生産しました。
クルミの特徴である、木の中心部に近く色の濃い赤身(心材)から樹皮に近い白太(辺材)まで切る部分によって変わるグラデーションを活かし、有機的であたたかみのある空間を作り出しています。

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<仕様>
材料:オニグルミ
数量:1,500枚
サイズ:W900×D100×T4(mm) 
仕上げ:カンナ仕上げ

Process

住空間をより豊かに、そして森の環境に配慮した壁材

薄板の必要量、空間に合う適切な樹種、そして飛騨にある在庫などを照らし合わせ、森のバランスを崩すことのない材料支給を建築家の古市さんに提案。木材調達後、壁材に最適な乾燥処理をカネモクさんで施しました。
節などの特徴も出やすい木のため、今回は通常フローリングなどに用いられるような長い規格(長さ1,800mm)ではなく、長さが900mmという独自の規格で加工・製造を行いました。このことにより、曲がりのある材や小径木から効率良く壁材を生産することができました。

曲がりくねったクルミ材。独自の小さな規格にすることでこのような材からも歩留まりのいい製作を実現しました。

乾燥後、木取りしたクルミ材。その後薄材に加工します

製材したクルミ材のテクスチャー

クルミは、茶色と白色が混じり合った表情豊かな色味と、さらさらとした触り心地の質感が特徴。加工しやすく、家具や床材に使用されています。海外のブラックウォールナットと比べると、国産のクルミはやわらかい色味を持っています。

 

Member

古市 淑乃|Yoshino Furuichi
1985年三重県生まれ。名古屋市立大学大学院修了。吉村靖孝建築設計事務所、成瀬・猪熊建築設計事務所を経て、2015年古市淑乃建築設計事務所設立。企業における共創スペースの設計など、運営を含めた幅広い視点から空間を作ることを実践している。2018年より京都造形芸術大学非常勤講師。www.ysnfric.com

Member's Voice

“岡山市内にあるマンションのリノベーションです。マンションは新しく、内装的・設備的な不便はなかったものの、その内装は以前の住人の趣味が色濃く現れており、つやつやした大理石の壁や床、大きすぎるキッチンカウンターなど、バブルの残り香のようなものが漂っていました。新しい住人は年配の方で、ゆっくりと老後の日常を送る住居としてはなんだか寒々しさを感じました。そこで、飛騨の木を使用してあたたかさや手触り感のある空間に変えたいと思い、ヒダクマに依頼しました。
平面的には、なるべく既存のプランを維持しながらいかに大きく内部の印象を変えるか、ということにチャレンジしています。
基本的には既存の壁は解体せず、壁面と一体化するように収納をしつらえ、その外側を飛騨のクルミ材でくるみました。そうしてできた木の箱のようなヴォリュームによって、緩やかにつながる回遊的な空間となり、今後生まれるかもしれない身体的な変化にも対応していくことができます。
飛騨のクルミ材は、きっとこの先、住人の生活を暖かく見守ってくれるのではないかと思います。”

古市淑乃建築設計事務所 古市 淑乃

“飛騨という地域は、市や林業関係者はもちろん、製材業から木工作家、大工まで多くの人が「国産の木材」から良いプロダクトを作ることに、真剣に取り組んでいる地域だと実感しています。今回の案件では、素材の規格の策定段階から製作まで、多くの方々に協力していただきました。 一般的に流通している「海外の規格」や「針葉樹の規格」は、「国産の広葉樹に適した規格」ではありません。通常生産されることのない規格を製作してくれる生産者、伐採量や樹形といった木の特性を理解してくれる建築家の古市さんのおかげで、日本の広葉樹が持つ木目の美しさなど、多様な表情のテクスチャーが活きる空間を実現できたのではないかと思います。 今回はクルミ材1樹種でしたが、飛騨にはまだまだ多様な樹種が成長中です。木の魅力を引き出すかたちで多様性のある商品開発を、ヒダクマでは建築家やデザイナー、そして地域のみなさんとともに進めていきたいと考え取り組んでいます。”

ヒダクマ 飯山晃代

写真:田中 陽介 (OutlineとOutputsの写真)
文:井上 彩(ヒダクマ)

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Extra

端材の有効活用「FabCafe Hidaのカトラリーキット」

ヒダクマ/FabCafe Hidaでは、家具や建材などの製作時に出た端材を捨てることなく新しいかたちにし、活用してもらえるよう取り組んでいます。FabCafe Hidaでは、飛騨の広葉樹のMy箸づくりやスプーンなどのカトラリーキットで、お子さまから大人まで、気軽に木工体験を楽しむことができます。

クルミの壁材の製作時、割れなどの不良が出た場合、それらも捨てることなく加工しました。

それら一部は、FabCafe Hidaのワークショップで使う広葉樹カトラリーキットとして有効活用しています。

天然のクルミの木を使ってパンツールを作るFabCafe Hidaのワークショップの様子。(世田谷パン祭り2018にて)