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森と人をつなぐ女の情熱|「森のレッスン」vol.2レポート

ヒダクマが「FabCafe Hida」にいろいろな人を招いて、森と共に暮らす方法をみんなで学ぶ勉強会「森のレッスン」の2回目、「森と人をつなぐ仕事~木材コーディネーターがつくる木の新しい流通と場』を2019年2月に開催しました。今回は、飛騨市林業振興課の「広葉樹のまちづくりセミナー*」の第5回目としても開催しました。(  * 詳しくはこちら:「飛騨市広葉樹のまちづくり」

ゲストとしてお招きしたのは、木材コーディネーターとして活躍する鈴木直子さん。鈴木さんは、信州のサワラの木で新発想のベビーバス(産湯桶)を作って広める「産湯桶でウッドファースト」プロジェクトや、国産ミズナラのワイン樽で本物の国産ワインをつくるプロジェクト等、これまでになかった木を遣うユニークな取り組みに数多く関わっていらっしゃいます。
鈴木さんの森と人をつなぐ活動と想いについて、お話をうかがいました。

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トークイベントには、地元の森林・木材の関係者はもちろん、県外からも多くの方がご参加くださいました。車で寝泊まりしながら日本全国の林業を学ぶ旅をしていて、わざわざこのイベントのために小学生と一緒に来てくれた若者も。

地球10周分移動して人と会いまくって生まれるプロジェクト

着物で登場された鈴木さんからまずは自己紹介。
鈴木さんの仕事は「木材コーディネーター」。木材コーディネーターの役割は、「都市と森林を直接つなぎ、木材の新しい流通を創ること」、鈴木さん個人の役割は、「人と人をつなぐこと」だそうです。
ご結婚と同時に建設会社に就職され、図面作成・現場管理に携わられてきた鈴木さんは、素材である「木」のことを知りたくなり、林業地を見学して回るようになります。
そして、木造にこだわった仕事をしたいと2000年に起業。その後も、車に乗って日本全国色々な所へ出向いて、そまざまな会に顔を出し、現場見学をしたり。その移動距離は1年に3万キロ、これまで車を二台乗り潰して、地球10周分以上は移動されているとのこと。
そして、人と会うときには、ただ挨拶や名刺交換をするだけではなく、自分のことを覚えてもらえるよう着物を着て印象に残るようにされたそうです。

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「木を遣う事が森林(もり)を守る」の理念の元、行く先々で「こんなふうに木を遣えないか」「こんなふうに都市と森が、人と森がつながったらいいのに」と語り続けます。

「最初は、こんなことができたらいいなということを市役所や林業の業界の方などにお話しに行くと、素人扱い、変わり者扱いをされて相手にされませんでした(笑)。でも、こうやっていろいろな場所でいろいろな人にお話しすることでいつの間にか仲間が増えていきました。」

 

「生活者」の目線で専門家をつないで森を動かす

「特に、ぜひこれはやりたい!と思ったものを、自分で”勝手に宿題プロジェクト”と名付けて取り組んでいます」と鈴木さん。

例えば、2009年に行った山梨県清里での「森の音楽祭」や、信州産のサワラでつくった「産湯桶」のプロジェクト、今取り組んでいる「森から生まれたワイン」「湘南おもちゃ美術館」の構想についてもお話しをいただきました。

鈴木さんは、木を遣うこと、人と森をつなげるためには、「業界に新しい風が入ること」が必要だと言います。鈴木さんの行動と情熱が、専門家を動かし、木を遣うことにつながり、森から木がでてくることにつながります。
例えば、「森から生まれたワイン」を目指すワイン樽のプロジェクト。山梨県ではワインが特産品で、材料の葡萄は地元のものを使っていますが、樽はフランスから輸入しています。一方、地元の森で支障木として切り倒されて使われていないミズナラの木がありました。国産のワインを国産の樽でつくれたらいいのに、という思いがきっかけでした。それから鈴木さんの宿題となった、国産ワイン樽で国産ワインをつくる「森から生まれたワイン」のプロジェクト。今では、林業、製材業、製樽事業者、ワイナリー、学術機関等、多くの専門家を巻き込んでプロジェクトが進んでいます。

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これだけ長く林業業界に関わって多くのネットワークも知識ももっている鈴木さん。しかし、ご自身は「専門家」というよりは、女性として、妻として、母親として、つまり「生活者」の立場と視点で、専門家同士をつなぎ、森と人をつなげていると言います。
それは、鈴木さんの原点として紹介していただいた秋岡芳夫さんの言葉、「消費者から愛用者へ」に通じるものがあります。(秋岡芳夫さんは、工業デザイナーでありながら生活者の目で、数千点の製品をデザインしながら全国の地場産業を訪ねてまわり、暮らしや木工に関する多数の著作を残しています。)

そして鈴木さんは、自分が会いに行ってつなぐのではなく、いずれは、「人と森、人と人をつなげるための、木育・職育・食育のできる、情報交換・交流の場」をつくりたいとおっしゃられました。
そういう多くの「生活者」が森とつながる場をつくることが、もっと森と人がつながることになるのではないかと考えていらっしゃいます。

「森が好き」な人たちが集まれば

鈴木さんのお話しの後には、鈴木さんと、聞き手であるヒダクマの松本と、会場の皆さんとのディスカッションが行われました。

参加者:「コーディネーター」という立場はお金になりにくいと思いますが、どのような形で仕事にされているのでしょうか?

鈴木:どのプロジェクトもその時それ自体はお金にならないことがほとんどです。でも、そのご縁がきっかけでお仕事のお声がけをいただいたりして、今は森林に関する研究機関の監査役をさせていただいています。最初からお金は求めらなくてもいつの間にかついてくるものだと思っています。


松本:お話しからも、それがお金になる仕事かどうかを考えずに森のためにつながずにはいられない、というコーディネーターの性(さが)のようなものを感じました。

そんなに情熱的に人に会いあきらめずに話をして色々なことを形にしていっているのはなんでなんでしょう? 前回のゲストの井原さんは、活動の源を「地元の森を活かす活動をされている方々の取り組みを残さなければいけない」という「謎の使命感」だとおっしゃっていました。

鈴木:私の場合は、ただただ、「森が好き」という気持ちなんじゃないでしょうか。

松本:「森が好き」・・・。そう言われると、それ以上深堀りもできないですね(笑)

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松本:鈴木さんの活動のように、森と人をつなげる必要がある状況というのは、森と人が離れていることでの問題があるということでもあります。それを批評や評論するのではなく、解決していこうとする行動のモチベーションは、「好き」という気持ちからしか生まれないかもしれないですね。

鈴木:私だけでなく、今日来てくれたみなさんのように、「森が好き」、「森を何とかしたい」という人たちが集まれる場や関われる機会をつくっていけるといいなと思います。それが私の大きな宿題のひとつです。

参加者:自分は今度、山口県の地域おこし協力隊として林業に取り組む予定です。着任前にいろいろな森のことを勉強したいと思って、ワゴン車に寝泊まりしながら全国をまわっています。今日ここでこんなイベントがあるっていうのをたまたま知って参加させてもらいました。

松本:せっかくなのでぜひこの後の飲み会にも参加していってください(笑)。こんなふうに思いもよらなかった方が来てくれて、ご縁ができるのはおもしろいし、なんだか希望がもてますね。

鈴木:はい、今日もまたいいご縁をいただきました。そのおかげで、いろいろな宿題がどんんどん形になっていって楽しいです。次回はまたみなさんに良いご報告ができればと思います。

松本:今日はありがとうございました。

次回の「森のレッスン」のお知らせ

「森のレッスン」vol.3は、3月23日(土)、杓子作家の奥井京介さんによる「アンプラグドな木工~生のホオノキから生まれる杓子と妖怪」です。
その日と翌日24日(日)には、同時開催ワークショップ
「ホオノキでつくる「飛騨の妖怪・雪入道」絵付けワークショップ」(要予約)も開催します。

その次の「森のレッスン」vol.4は、3月26日(火)、飛騨市林業振興課の中村幹広さんによる「林業振興課長の最後の放談~飛騨市林業振興課初代課長が旅立つ前に伝えておきたい林業についての大切ないくつかこと」です。

どうぞお気軽にご参加ください。

プロフィール

話し手:鈴木直子さん / 木材コーディネーター
2000年、「住工房なお株式会社」を起業し、建築設計・デザインをメインに活動をスタート。建築における国産材利用の観点から林業の世界に入り込み、2012年木材コーディネーターの資格を取得。2015年「一般社団法人森のマルシェ」を立ち上げる。「木を遣うことが森林(もり)を守ります」を理念に、森林と都市を直接つなぎ、木材の新しい流通を創っている。国産材住宅展示場×衣食住の情報発信・交流の場づくりをめざして活動中。国立研究開発法人森林研究・整備機構監事、NPO法人えがおつなげて理事も務めている。

聞き手:松本剛 株式会社トビムシ/株式会社飛騨の森でクマは踊る取締役COO兼CFO
環境コンサルティング会社を経て、2009年、株式会社トビムシに参画。2015年、岐阜県飛騨市に飛騨市と株式会社トビムシと株式会社ロフトワークで、森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る」を設立、取締役就任。カレー好き。

【ヒダクマより採用情報のお知らせ】

ヒダクマでは、「森と人をつなぐ仕事」を一緒にしてくださる方を積極募集中です。
詳しくはこちら:https://hidakuma.com/recruit/