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  • デザイン合宿
日本が誇る伝統技術を現場で体感。先端と伝統が融合する木工合宿 in 飛騨

2018年7月17日、ニューヨーク州立大学バッファロー校の建築学科のサマープログラムの一環として、建築デザイナーのニック・ブルシア准教授率いる12人の学生が岐阜県飛騨市での合宿にやって来ました!

学生は、市内にあるデジタル木工房・FabCafe Hidaに5日間滞在。地元の大工さんや家具制作の現場を訪問し、伝統的な木工技術を学びました。また、2日間の制作を通じ、自由な発想で組み木作りに挑戦。職人さんにフィードバックをもらい、加工技術としての検証を行いました。

このサマープログラムは、参加学生が9週間にわたり東京を拠点に滞在し、途中他大学との合同ワークショップや1週間のトラベルウィークで京都や広島などを旅したり、飛騨での木工合宿を通して、日本建築のリサーチ及び東京のアーバンリサーチを行うというもの。メンバーは学部生と院生の混合で、参加学生には単位が与えられます。このプログラムには、テクニカルサポートメンバーとして、建築系プログラマーでデザイナーの堀川淳一郎さんも参加しています。堀川さんとニック先生は、共同で3Dモデリング技術とセンサーを用いたジグ(治具)を制作し、新しい加工方法を模索しました。学生たちはこのジグと手仕事とを合わせて、組み木の制作を行いました。期間中は連日地域の人でも音を上げるほどの猛暑が続きました。そんな中、暑さに負けず、驚くべき集中力で取り組んだ学生たちの熱い5日間のレポートをお届けします!

スケジュール

DAY1 7/17(火)

飛騨古川に到着
ヒダクマ及びFabCafe Hidaオリエンテーション
飛騨の匠文化館見学

DAY2 7/18(水)

マイクロバスで種蔵へ。見学・スケッチ
解体・移築された板倉ー大工・渡辺さんの話
やわい屋さん見学
飛騨産業工場及びショールーム見学

DAY3 7/19(木)

大工さんに教わる「ノミの使い方」講座
飛騨古川の町歩き
組み木でできたトーテムポールの解体・復元に挑戦!
組み木の制作1日目

DAY4 7/20(金)

西野製材所見学
匠の技ー組み木作りのデモンストレーション
組み木の制作2日目
成果発表
バーベキュー

DAY5 7/21(土)

電車で高山に向けて出発
日下部亭、吉島邸見学
高山見学(自由行動)
バスで東京へ
新宿到着

Day1

「合宿スタート!ようこそ、飛騨古川へ」

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高速バスで飛騨古川に到着した一行は、はじめに宿泊先で制作の工房のあるFabCafe Hidaに向かいました。FabCafe Hidaのスタッフより、歓迎のご挨拶とオリエンテーション。

「組み木の技術ー飛騨の匠文化館見学」

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一休みした後は、FabCafe Hidaから徒歩数分の場所にある、飛騨の匠文化館を見学。

大和朝廷の時代、傑出した技法で寺院仏閣の造営に、「飛騨匠(たくみ)」が活躍しました。飛騨の匠文化館は、1989年に匠の技を後世に伝えるため、地元の大工さん30人によって建てられました。建設には、釘やボルト、クランプなどの金具を一切使わない組み木の技術が使われています。館内には、千鳥格子や木組みを体験できるコーナーや、大工道具や様々な木のサンプルが展示されています。

学生たちは複雑な木組みの構造を確認したり、スケッチしたりしました。

帰ってからはFabCafe Hidaでみんなで夕食。(この日のメインはカツ丼!)

滞在時の朝食・夕食を作ってくれたのは、近くにあるゲストハウス「MOTHERS HOUSE」の女将、通称マザー。

Day2

「種蔵の風景」

UB011 朝に出発し、マイクロバスでおよそ30分。棚田と板倉の里「種蔵」に到着。 UB012 種蔵在住の荒谷さんが案内してださいました。

この集落には板倉が20棟あります。今でも住居の12戸より多くの板倉が残っているのは、「住む家を壊すようなことがあっても倉だけは守れ。倉は食物や種を保存し、家族を守る宝物だから」という言い伝えがあるからだそう。

この集落で一番古い約260年前の板倉は、頑丈な二重扉になっていて、中に入ると穀物や農機具、家財を収納するスペースがあり、2階では養蚕をしていたそうです。

ニック先生や学生のみなさんは、板倉の木の種類や、木目の方向、構造などに注目し、荒谷さんと会話を楽しみながら散策しました。周辺の棚田や石積み、ミョウガ畑や、水路、神社や炭焼き小屋などを見ながら、自然とここに住む人の暮らしや歴史を感じる種蔵訪問となりました。

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ランチにお弁当を食べた後、次の目的地に向かう前に、牧成舎に立ち寄りました。

とびきり美味しいアイスクリームで一休み。

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「解体・移築された板倉ー大工・渡辺覚さんの話」

午後からは、大工の渡辺さんに会いに行きました。昨年渡辺さんは、隣町にある築120年の板倉が取り壊されそうになっていたのを聞きつけます。そこで、現オーナーの方や何人かと協力して、自ら解体、再度組み立て移築し、今は別荘として利用されています。

「ボルトなどを使っていないので、ばらしやすい。でも、ばらすと木が曲がったり、反ったりするので、組み立て直すのは大変だった」と渡辺さん。解体した後のパーツが組み立て時にわかるよう番号をふったり、組み木を固定するためのピンとして埋まった木は取れなくてドリルで取った話など体験談を話してくれました。内装は、古いものを生かしながらも現代風になっていて、学生達はお気に入りの様子でした。

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その後、近くのやわい屋さんを訪問しました。ここは築150年の古民家を移築し、民藝の器を中心に新旧の生活道具を扱うお店。この移築にも渡辺さんは関わりました。

やわい屋を運営する朝倉さんご夫妻に冷たいお茶をご馳走になり、渡辺さんと会話を楽しんだり、2階から見える田園風景に心癒されるひとときを過ごしました。

「家具メーカー・飛騨産業株式会社の工場とショールームを見学」

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1920年創業、椅子やテーブルなどの家具メーカー飛騨産業株式会社の工場を訪れました。

5つの工場と全国主要都市にショールームのある飛騨産業。訪れたのは、200人ものスタッフが働く一番大きな工場です。飛騨産業は、家具の発注を受けてから製作に入る完全受注生産で、1日およそ160脚の椅子、60台のテーブルを作っています。学生たちは、人が手を加える工程と、マシン加工のラインが共存する現場を工程順に見学しました。

工場では、木を蒸気で柔らかくし、プレスすることで作る曲げ木や、磨きや塗装、梱包までを間近に見ることができました。また、受注生産やカスタムメイドの家具生産での職人さんの役割分担や、作業工程にロスが出ないよう部品のストックするなどの管理システムについても知ることができました。

工場を訪れた後には、飛騨産業のショールームに行き、完成した家具の数々を拝見しました。

DAY3

「木工職人・堅田さんによる「ノミの使い方」講座」

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3日目は、FabCafe Hidaの工房で、地元の木工職人・堅田さんによる「ノミの使い方」講座からスタート。

講座では、堅田さんに道具の使い方や木の切り方を教えてもらいながら、屋根の梁などを継ぐ「合欠(あいがき)」を教わりました。合欠は、2つの材を継ぐ部分を半分ずつ同じ形に欠き取り、合わせること。現在は通常機械でやっている仕事ですが、今回は昔ながらの手仕事に挑戦しました。ノコギリで切る時、ノミで彫る時に木が割れないように、また二つの木がピタッと合わさるようにするコツを堅田さんが丁寧に教えてくれました。

「ノコギリで切っている音で、切るのがうまいかわかる」と堅田さん。学生たちは木や道具に触れながら、集中して合欠を完成させました。

「飛騨古川の町歩き」

お昼は、石造りの瀬戸川沿いの白壁土蔵やお寺など、景観の美しい飛騨古川の町歩き。大工の直井さんに詳しく案内してもらいました。直井さんからは、「相場を崩しを嫌う」という言葉がこの地域にはあることを話してもらいました。大きく変わったことをしないで、町並みの調和を大事にするという意味なのだそう。

直井さんツアー

直井さんから、町の歴史、古い建物の構造や工法、家々の格子戸や軒にある雲(その家を建てた大工さんのサインのようなもの)のデザインについて教わりました。

「継手のトーテムポールの解体・復元に挑戦!」

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FabCafe Hidaの中庭に出現したのは様々な継手の技術でできたトーテムポール。これは、原さんが地元の小学生のために飛騨の伝統的な木工技術を知ってもらおうと以前製作したものです。今回バッファロー校の学生たちに説明するため、FabCafe Hidaに持ってきてくださいました。

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はじめに、原さんは学生たちに「自分が一度全てを解体し、組み立てるので、よく見ていてほしい。この後みんなにやってもらうから」と言って、トーテムポールを木づちを使って手際よくバラした後、元どおりに復元。複雑なパーツがたくさんあったので、学生たちは見入っていました。過去に小学生のチームが解体と復元に挑戦した時、最速タイムは2分20秒だったそう。そして、バッフォロー校の学生のみなさんも挑戦!タイムはなんと、49.70秒!!あっと言う間に組み立てることができました。原さんも驚きの息のあったすごいチームワークでした!

原さんからは最後に「プレカットは木の素材を見ながら作るのではない。カットしたものを使う方が安いけれど、木がどちらの方に曲がっているのか、1つひとつの木を見ながら作ることは大工にしかできない。この技術を後世に伝えていきたい」と学生に話しました。

 

「組み木の制作1日目」

学生12名が3チームに別れて、自由な角度の継手・仕口を考える制作がスタート。明日の発表までに図面や模型を作ります。

DAY4

「西野製材所見学」

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この日は朝からFabCafe Hidaから歩いて約15分の場所にある西野製材所を訪れました。案内してくださったのは、西野社長。この製材所では、広葉樹に特化した製材を行い、製材された木は主に家具の材料として使われています。

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木の皮を剥ぐ作業を見学。この作業により、木についた石などがあることで、カットする際に刃を痛めるのを防ぎ、また虫がつくのを防ぎます。

皮を剥いだ後、よく空港で見かける道具で木を点検しているスタッフの姿が。これは、木の中にクギや有刺鉄線などがないかを金属探知機で調べる作業です。西野さんによると、クギは家畜のための柵などを設置する際、そのまま木に埋め込まれてしまったものだろうとのことでした。

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次に、木の水分を抜く乾燥の技術について西野社長から説明を受けました。木は皮を剥いでカットされた後、天然乾燥と人工乾燥で木に含まれる水分を10%にします。そうして、家具職人が求めるすぐに使える材となり、出荷されます。 最後に西野社長のとっておきの木を見せてもらいました。なんと樹齢約250年のサクラの木です。木は芯の部分は使えないので、その部分を外してこの大きなサイズ。「こんな大きな木との出会いはないんじゃないかな」と西野さん。木との出会いは一期一会であることを西野さんから教わりました。

「匠の技ー組み木作りのデモンストレーション」

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午後からFabCafe Hidaの中庭にて、ベテラン大工・田中さんが継手をつくるところを間近で見学しました。田中さんは、墨壺と竹のペンを使って木を加工するためのしるしをつけ、ノコギリやカンナ、ノミ、金槌を使い、手際よく作業を進めていきます。

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20年前から現場には出ていないという田中さんですが、体がまるで覚えているかのように体勢をその時々で変えていきます。木に手で触れて表面を確認したり、手を金槌代わりに使って微妙な加減を加え、2つの部材がぴったり合うように調節していきました。完成後は学生たちから拍手が湧き起こりました。

「組み木の制作2日目」

「成果発表」

この2日間、各自で制作した自由な角度の組み木の模型や図面などを学生たちが発表しました。ノミの使い方を教わった木工職人の堅田さんをお招きし、ヒダクマの設計や制作を担当するスタッフも参加して発表を聞きました。

 

3つの角材の頂点のディテールを色々な形で制作したり、コアになる材を作って六方を継ぐ方法を模索したり、三方を組み合わせて小口(横断面)を平らな面にすることを考えてみるなど、様々なアイデアが発表されました。ニック先生と堀川さんの共同で開発されたセンサーを使ったジグは制作でも使用され、複雑な切口にセンサーでアタリをつけ、電動ノコギリで切ったり、ヒダクマスタッフにサポートしてもらいながら手仕事と合わせて使用しました。

全員集合制作

この短い制作期間で、道具の使い方もぐんぐん上手になった学生たち。高い集中力で、頂点、面、角などの形を考え、それぞれが組み木のアイデアを形にしました。 堅田さんからは「どのアイデアもとてもユニークで面白い。装飾的な観点から、表に見える部分だけでなく、裏側に隠れている部分の形を見せるのはどうかな」というコメントをもらいました。最後にニック先生が学生全員を讃え、テーブルに置かれた様々な模型を見ながら全員で意見を交わしました。

「バーベキュー」

バーベキュー

飛騨の最後の夜は、中庭で打ち上げを兼ねたバーベキュー。プレゼンも終わり、リラックスした楽しい時間でした。食後のデザートの前には、スイカ割り。ニック先生も学生たちも堅田さんもヒダクマスタッフもみんなの笑顔が絶えない夜でした。

DAY5

「高山の古い町並み見学。吉島家住宅・日下部家住宅を訪れる」

朝、5日間滞在したFabCafe Hidaに別れを告げ、いざ出発。飛騨古川駅から電車で約15分の高山駅へ。

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向かったのは、明治40年(1907年)に建てられた、吉島家住宅日下部家住宅。名工・西田伊三郎により建てられ、造り酒屋の面影が残る華麗な商家です。7代目当主の吉島忠男さんに案内していただきました。吉島さんは60歳まで建築家で、20代の頃、丹下健三事務所の築地の再開発計画、その後建築家の郭茂林さんが建設チームのリーダーを務めた日本初の100メートルを越す高層ビルの「霞ヶ関ビル」の仕事に携わったそう。学生たちに空間や構造について専門的な解説とともに教えてくださいました。

吉島家住宅は、大黒柱を中心に梁と束で構成された立体格子が、土間の吹き抜け部分に広がっています。隣接した日下部家も一見似たような作りに見えますが、大黒柱があるのは吉島家住宅で、一本の赤松で貫き通された大きな梁を下に、自由に組んでいるのが日下部家住宅です。

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学生たちは2つの住宅をじっくり見学した後、自由行動。高山の街を散策しました。そして夕方、東京に向かうバスに乗り、飛騨を後にしました。

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「合宿終了・東京へ」

ニューヨーク州立大学バッファロー校建築学生の飛騨での合宿は無事終了。木を通じた沢山の出会いや、伝統とテクノロジーを合わせたクリエイティブな時間が詰まった怒涛の5日間でした!学生のみなさん、ニック先生ありがとうございます。またぜひ飛騨に来てくださいね。

合宿プログラムのご案内

ヒダクマでは、豊かな自然、職人気質の流れる伝統家屋の並ぶ街並み、美味しい食材や地酒を味わい、地域のひとと触れ合いながら、ものづくりや製作に集中できるプログラムをご提供しております。森歩きから木工初心者向けのお箸や家具作り体験、デザイナーや建築家向けの地域貢献レジデンスプログラム、企業や団体向けの合宿プログラムがあります。 施設の詳細や、料金は以下のページを御覧ください。

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