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家具で感じる森の生態系ー姉妹森協定を結ぶ飛騨市×北海道中川町のアニマルをモチーフにしたアウトドア家具開発ー

Outline

中川町と飛騨市のアニマルシリーズ

よく晴れた日の午前、飛騨の雪原に設置された木製品が人々の注目を集めていました。飛騨市と姉妹都市ならぬ”姉妹森”協定を結んでいる中川町にヒダクマが提案した、アウトドア家具たちです。それぞれの家具に与えられた名前は、「ヒグマ」や「ヒダギュウ」といった、中川町と飛騨市の「アニマル」にちなんだもの。どこか愛くるしい見た目でありつつ、素材へのこだわりも詰まった家具は、姉妹森というこれまでにない関係性があってこそ生まれたものです。本記事では、アウトドア家具としてのアニマルズが誕生するまでのプロセスや、個々の特徴について紹介します。

プロジェクト概要

・支援内容
木材コーディネーション・デザイン・製作ディレクション
・プロジェクト期間:2020年10月~2021年3月
・体制
クライアント:北海道中川町役場
デザイン:浅岡秀亮(ヒダクマ)
製作ディレクション:浅岡秀亮、門井慈子、黒田晃祐(ヒダクマ)
製作・協力:飛騨職人生活、とらまめ、中央産業株式会社

Background

中川町の森林資源×飛騨の木工技術

プロジェクトに際し、中川町の森を訪問(2020.10.19)

北海道北部の内陸に位置する中川町は人口1600人ほどの長閑な町です。林業はまちの主要産業のひとつで、町有林だけでも2,000haの豊かな森があり、生物多様性に配慮した森づくりに取り組んでいます。

中川町と飛騨市が姉妹森協定を締結したのは2018年10月のこと。中川町と、同じく豊富な森を有する飛騨市で連携することで、森を起点としたまちづくりを一層推進させることが目的です。この協定の実効性を高めるために、姉妹森という関係性ならではのものをつくりたいーー。そうした思いから、今回のプロジェクトが始まりました。ヒダクマは中川町が有する森林資源と飛騨が持つ高い木工技術を掛け合わせ、フォレストツーリズムといった観光や、週末のアウトドアで利用できる家具の製作を進めてきました。

Output

身近な家具に動物のユニークさを込める

天板を載せるだけで簡易的な作業台になる「ウマ」という道具があります。名は体を表すと言いますが、確かに、華奢な4本脚のウマ2頭が天板を支えているようです。

ウマの活用シーンが工房や現場仕事からアウトドアシーン、はたまた仕事用デスクと幅広いのは、持ち運び性や耐荷重性に優れているためでしょう。思わず動物の名を冠したくなるその構造が機能に直結しており、結果としてより身近な存在にもなっている例といえます。

そこで「他の動物をモチーフにすれば、それぞれユニークな機能を持つものができるのではないか」という問いが生まれます。森は太陽の光エネルギーや無機化合物の化学エネルギーを取り込み有機物を生産し、生育によって多様な生命が息づく環境を形成する、生き物にとって根源的な存在です。それぞれの森、そして地域にゆかりがある動物にちなんだ今回のシリーズ「ヒダ×ナカガワ アニマル」は、ユニークな機能とともに、それぞれの地域の生態系を使用者の前に再現する家具なのです。

コンセプトとは裏腹に丸くてキュートなアニマルズ

ヒグマとツキノワグマ

ツキノワグマ(左)とヒグマ。写真は試作品

アウトドアにおける座面は、ゴツゴツとした自然物や不整地、布地にテンションを掛けて強度を持たせたチェアなど、比較的硬い質感の場合が大半です。「ツキノワグマ」と「ヒグマ」は、うずくまるクマをイメージしたクッションにより、適度に柔らかく気持ちの良い座り心地を実現しました。楕円と四角の中間をとった形状のクッションは、解剖学的な考え方で縫製。「ツキノワグマ」の中には、アロマオイルの蒸留に使われた爽やかに香るトドマツの葉の残渣を詰め、「ヒグマ」には中川や飛騨でもよく生産されているそばの製粉過程で得られるそば殻を詰めています。ツキノワグマの座り心地は一般的なビーズクッションより硬く、まさに動物の背筋に腰掛けているような感覚。一方ヒグマは、ツキノワグマよりもクッション性が高く、程よく体が沈み込みます。

持ち手のついたクッションは、アウトドアはもちろん、屋内でも使用できる

<仕様(ツキノワグマ)>
材料:体 /  (ファブリック+トドマツの葉)
脚  / ミズナラ無垢材
サイズ:W400×D450×H425
仕上げ:オイル

<仕様(ヒグマ)>
材料:クッション /  (帆布+そば殻)
脚  / ミズナラ無垢材
サイズ:W550×D550×H550
仕上げ:オイル

 

ウシ(ヒダギュウとニュウギュウ)

ヒダギュウ(左)と中川のニュウギュウ

ウシは昔から重い物資を運んだり、田畑を耕したりと人の生活との関わりが深い生き物です。今回製作した「ヒダギュウ」と「ニュウギュウ」も、そばにあることで愛着がわき、かつ役に立つ道具になるようデザインしました。

ドーム状のウシの中には、焚き火に使う薪、火を囲みながら楽しむお酒や本、必要な時にさっと羽織りたい上着やブランケットといった、ちょっとしたものを収納しておくことができます。マットブラックに塗装したヒダギュウは、収納を重視したやや大きめのサイズ。中川のニュウギュウは、収納性を備えつつも腰をかけるのにちょうど良いサイズで製作しました。

<仕様(ヒダギュウ)>
材料:体 / ブナ積層合板
脚 / ブナ無垢材
サイズ:W425×D470×H550
仕上げ:ラッカー着色、オイル

<仕様(中川のニュウギュウ)>

材料:フレーム / ブナ積層合板
脚 / ブナ無垢材
サイズ:W425×D470×H460
仕上げ:オイル

Process

中川町を訪問、姉妹森を知る

プロジェクトに際し向かった中川町では、姉妹森を視察しただけでなく、シェア工房や酪農家の放牧地も訪問しました。飛騨とは気候を含めた地理的条件が異なる中川の森。森を構成する木の種類や森林生業も、その違いを反映したものでした。

山々を見ていく過程でたまたま立ち寄った丸藤牧場の放牧地では、オーナーの丸藤さんが乳牛たちと言葉が通じているかのように触れ合っていました。その放牧地は、もともとクマザサで覆われた土地で、ウシがササを食べ、大地を踏み固めて現在の姿になったそう。

中川町の森や営みを知り、自然と人との関係を体感しながら、いくつかのアイデアを提案する中で製作が決まったのが、アニマルシリーズで展開するアウトドア家具でした。

中川町の酪農家・丸藤さんと乳牛

中川町とも打ち合わせを重ね、アウトドアや家での普段使いに適した家具として機能しつつも、モチーフとなった動物を想起させるクッションカラー、町を象徴する素材を採用することを追求。一方、デザインはあまり直接的な動物らしさを印象付けないよう心がけ、どことなく動物らしさを感じさせるプロポーションを目指し、詳細な設計に落とし込みました。脚は直線や正円など「人工的な形状」でプロダクト感を出しつつ、ボディは数値で表せない自由曲線の「有機な形状」を要所要所に取り入れている点が特徴です。

地域の作り手、アウトドア好きとの共同製作

ウシを製作する飛騨職人生活の堅田恒季さん

製作には、飛騨の木工職人が持つ技術が生かされています。ドーム状のウシには、飛騨高山で形成合板を生産する「中央産業株式会社」が持つ曲木の技術を活用。その合板を使ったウシと、クマの台座を製作してくれたのは、ヒダクマの様々なプロジェクトで協働してきた「飛騨職人生活」の堅田恒季さんです。一つひとつ木工旋盤で削り出された短い脚は、丸みを帯びて家具に動物らしさを与えています。クマっぽさを放つクッションを求めて製作を依頼したのは、以前から動物をモチーフにした家具などの製作を手掛けてきた、「とらまめ」の北奥美帆さん。堅田さんと北奥さんには、そば殻を求めてそば屋を一緒に尋ねたりと、足を使った材料調達にも協力してもらいました。

唐箕(とうみ)という古い農具でそば殻を選別する北奥さん(右)

事務所でクッションの質感をチェック

試作したクッションは、実際に座ったり、もたれたりしながら質感を確認。出来上がった試作品は、主に飛騨地域のアウトドア愛好家を招いたイベントでお披露目し、参加者からたくさんのレビューをもらいました。アウトドア愛好家とあって、家具のデザインや機能性だけでなく、「より持ち運びやすくできないか」「クッション素材の耐火性が気になる」といったアドバイスなども寄せられ、試作品のプラッシュアップにつながるイベントとなりました。

関連記事:アニマルなアウトドア家具とプランクグリルを体験。森好きが集った焚き火会をレポート(https://hidakuma.com/blog/0221_bonfire_report/

中川町と飛騨市の姉妹森協定に端を発した今回のプロジェクトは、地元紙岐阜新聞、Yahoo!ニュースに掲載されたほか、FM AICHIにプロジェクト主任の浅岡がインタビュー出演するなど、想定以上の反響を呼び驚いています。姉妹森で協力し、見て触るほどに愛着が増すアニマルズの商品化を目指しますので、今後の進展にご期待ください。

文:志田岳弥

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